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SF作家のアキバ事件簿243 ミユリのブログ ご主人様、奪還

作者: ヘンリィ

ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!

異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!


秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。

ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。


ヲトナのジュブナイル第243話「ミユリのブログ ご主人様、奪還」。さて、前回で主人公は秋葉原でスーパーヒロインを狩る謎組織に拉致されました。


ヒロインではない主人公はナゼ拉致されたのか、謎が深まる中、残されたヒロイン達は謎組織の秘密基地に乗り込み、奪還作戦を展開しますが…


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 白い部屋


「おはよう、テリィたん」

「ココは何処だ?」

「地獄の底。誰にも見つからない場所ょ」


僕は手術着(スクラブ)を着ている。目を開けると、白い照明の白い部屋。ヨロヨロと立ち上がる。


「なぜ僕を拉致った?」

「答えはわかってるハズよ。ふふふふ」

「おいおい。僕はヒロインでもなければ、スーパーでもナイ、ただのヲタクだ。今なら人違いでしたゴメンナサイで許すけど…」


怒声が飛ぶ。


「お黙り!私は、貴方の正体を知ってるの。正直に全部話して」

「僕はテリィ。第3新東京電力の宇宙発電所副所長。社員番号§□±¶◯⁂。なお、副業で御屋敷トルーパーズビクスを経営してる」


フンと鼻で笑う声。


「痛い目に遭いたくなければ正直に話して。貴方の生まれた時空は?」

「時空?2.5次元に興味は薄いが…」

「そう。痛い目に遭いたいのね。なら仕方ないわ」


突然スクラブを着たメイドの一団が現れて、僕を羽交い締めにして、ストレッチャーに推しつける。


「プレイか?追加料金なら払わないぞ」


注射される。


第2章 3人の決死隊


御屋敷(トラベラーズビクス)のディッシュアップカウンター。メイド達が作戦会議中だ。


「ひょっとしてテリィたん、もう殺されてるカモ」

「ヤメて。テリィ様はベラボーだから、むざむざ殺されるハズがナイわ」

「ミユリ姉様。ソンなコト、なぜわかるの?」


突っかかるティル。たった今、シフト入りしたばかりのスピアが話に加わる。


「とにかく、姉様だけでも無事で良かったわ」

「でも、テリィ様が捕まってしまったの」

「誰に?」


声を潜めるミユリさん。


「きっとSATOのスーパーヒロイン狩り部隊よ。最近アキバの地下に出没中の…」

「彼女達の目的は、あくまで私達スーパーヒロインを狩るコトでしょ?タダのヲタクのテリィたんナンて直ぐ釈放されるに決まってる…そんなコトよりナセラは何処?どうして誰も知らないの?」

「ナセラとほとんど母子関係の貴女こそ何か知らないの?」


金髪と巨乳を横に揺らし途方に暮れるティル。


「わからない。私に黙っていなくなるなんて…初めてだわ」

「とにかく!私達はテリィ様を救出スルことが最優先ょ」

「ミユリ姉様。貴女、自分達だけで、SATOの特殊部隊(チーム6)を出し抜けると思うの?」


ヤタラ上から目線のティル。


「まさか…だから、ラギィ警部に味方になってもらうわ」

「え。万世橋アキバポリスにタレ込むつもり?反逆行為だわ」

「テリィ様も彼女を信じて、全てを打ち明けようとしていたし」


なぜか過敏に反応するティル。


「ソレは単なる元カノへの未練でしょ?そもそも、所轄の警察が頼りになるとも思えないし」

「あら。警察は武装してるし」

「時代遅れな拳銃で?あのね。SATOは、既に対ヒロイン用兵器の"音波銃"を開発してる。私達も持てる超能力をフルに使わないと勝ち目はナイわ。ところで、私は超能力の使い方を知っているけど、貴女達も戦えるのよね?」


ただ1人"覚醒"してないスピアが割り込む。


「質問。戦うって何のコト?」

「私達スーパーヒロインは、貴女みたいな並みの腐女子にはない超能力を持ってる。貴女達、超能力は使えるわょね?」

「え。…まあ、たしなむ程度には」


顔を見合わせるエアリとマリレ。


「たしなむ?それじゃとても武器として使えないわ。エアリ、正直なトコロどーなの?」

「物体の分子構造を変える位ね。ソレもタマにしかやらなかったし…そーゆーティルの超能力は武器として使えるの?」

「いくつかはね。ナセラに特訓してもらったから」


マリレが割って入る。


「エアリは、ヲタクの妄想に割り込めるのよ」

「え?ヲタクの妄想に割り込む?」

「眠っているヲタクの妄想に入れるの。つまり、就寝中に見てる夢の中に潜り込めるってワケ」


ティルは目を丸くする。


「ソレ、マジでスゴい。貴女達3人ともソレが出来るの?もうリスペクトだけど」

「いいえ。エアリだけよ」

「で、その妄想してるヲタクとは意思の疎通とかも出来ちゃうワケ?」


ティルは身を乗り出す。


「え?うーん潜在意識に訴えかける…的な?」

「そうだわ。エアリ、テリィ様の潜在意識に訴えてみて。今すぐ!」

「えっ、姉様まで?でも、眠ってる相手にしかやったコト無いし」


今度は、ミユリさんが身を乗り出す。


「大丈夫。テリィ様は、いつも妄想してるから」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


僕は、妄想してる。白い部屋で手術台みたいなモノに寝かされたママで…誰かがドヤドヤ入って来たと思ったらベッドが動いて僕の上半身が起き上がる。


「ナース?」


上半身を起こした僕を、ナースぽい白衣の一団が取り囲んでる。萌え萌えなシーンだが、全員がタイガーマスクの覆面をしておりメッチャ不気味ですw


「次は見逃さないと言ったでしょ?自己紹介は要らないわね」


女タイガーがお1人サマ進み出てグラサンを取る。あ。僕に違反キップを切ろうとした万世橋(アキバポリス)の新顔w


「あの時のヲまわりさん?夜はナースをやってるのか(orプロレスラー?)。タイヘンだな」

「うるさい。確かに正体を偽っていたわ。あ、ソレは貴方も同じじゃない」

「いや、僕の副業は会社には連絡済みだ。ソレに僕はコスプレやプロレスはしてないし」


すると、新顔がハラリと白衣を脱ぎ捨て…期待したが、下はロングのメイド服だったのでガッカリだ。


「テリィたん。貴方はタダのヲタク。ソレは、この実験結果を見れば一目瞭然。見て。骨格も内臓も循環系も肺機能も全てタダのヲタクょ。でもね、私は貴方の正体を知っているの。だから、観念して私の質問に答えなさい」

「嫌だょ」

「2002年、名古屋の大須で初代の特殊部隊長ルイザ・ルイサが殺された。驚いたコトに、彼女の胸の谷間は82度もの高熱を帯び、銀色の手形が残っていた。コレは一体どういうコトなの?」


大須は名古屋の秋葉原だ。


「そして、2009年。2代目の隊長だったデルビ・アンコが大阪の日本橋(にっぽんばし)で死体で見つかった。彼女を覚えてるでしょ?」

「マジで知らない」

「そう。じゃ彼女は? 2024年12月14日。ダニエ・ルサズ。私がこの特殊部隊に入った時の隊長だった。殺したのは貴方?それとも手下のヒロイン?」


手下のヒロイン?誰だソレ?美味しいの?


「1967年に"時空トンネル"が開いた時のコトも全て調べがついている。人類は"時空トルーパー"2名を生きて捕虜にした。私は、その時の証拠種類を何度も研究してきたの。トルーパーの1人は監禁され、徹底的に調査され、綿密に研究された。この部屋でね。3年間は生きてたわ。解剖されるまでは。どう?ご感想は?」

「捕虜にしたもう1人のトルーパーは?」

「脱走したわ。ソレがナセラょ。そう呼んでルンでしょ?じゃコチラからも質問ょ。コレはどう?」


渦巻きヒエログリフが描かれた物体を見せる。


「何とも不思議な物体ょね。ねぇもう1つは何処にアルの?2つで初めて作動すルンでしょ?」

「へぇそーなのか。初めて知ったょ」

「つまらない男。わかったわ」


何か命令が下ったのだろう、ナース連中が実験道具を運び込んで、僕には電極がつけられて、そして…


「ヤメてくれ!」


大嫌いな注射だ。目の前のフィツが静かにしろと唇に人差し指を当てる。僕は…眠りに…堕ちて逝く…


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「エアリ。前にも貴女、死にかけたょね?もし、あの時のようにヲタクの妄想の中から帰って来られなくなったらどうするつもり?」

「でもね、マリレ。やるしかないの。大丈夫。テリィたんは、妄想してるか寝てるかどっちかだから、多分いつでも自由に出入り出来るわ」

「エアリ。いつもそばにいるから。貴女が帰り道を見失わないように、ずっと手を握ってる」


エアリの手を握るミユリさん。


「ありがとう、姉様。さ、テリィたんの最凶画像を見せて…ぷ。何コレ?お願い、テリィたん。私を受け入れて。あの夜のように…」


エアリは、メイド長個室の狭いベランダで、ミユリさん推奨の僕のスマホ画像を胸に目を閉じる。その背中には遥か妄想を目指すためのハネがあるコト…


フラッシュバック!


僕の妄想に、いきなりエアリの意識が飛び込んで来る。ソコは、謎ナースに取り囲まれた白い部屋だ。


「テリィたん、何なの?この部屋は。意識を集中して。景色がグルグル回ってルンだけど」

「エアリか?ダメだ。僕は注射を打たれた」

「しっかりして。私を見て」


僕の朦朧とした意識の中で、エアリは白い部屋の床に四つ這いになり苦労しながらにじり寄って来る。


「テリィたん。お願い、私に意識を集中して。ココはどこなの?」

「わからない。まるでワカラナイ」

「しっかりして、テリィたん。どうやってココに来たの?思い出して」


再びフラッシュバック。


僕は、救急車に偽装した特殊車両に推し込まれて、ストレッチャーごと運ばれてる。シンクロして明滅するバリライト。電子音の狂騒…ココはゲーセン?


「テリィたん。誰がこんなコトを」

万世橋(アキバポリス)の新顔メイド刑事」

「…こんにちわ。フィツです。よろしく」


爽やかに挨拶するメイド刑事の残像…


「あの新入りメイド刑事が?」

「裏の顔がアル」

「…レイカ・レイラ。認識番号773028…」


凛々しい制服姿で敬礼するSATO司令官の残像…


「どーゆーコト?あのメイド刑事は、メイドじゃなくて、アキバの地下でスーパーヒロインを狩る謎組織の司令官だったの?」

「エアリ。もうみんなのトコロに戻れ。戻るンだ」

「嫌ょ。私を抱いたヲタクを残して帰れない。ココに一緒にいるね…あぁどうしてテリィたんがこんな目に?」


なぜかタイガーマスクの仮面を被ったナースがドカドカと詰め寄って、怪力で僕とエアリを引き離す。


「ヤメて!私とテリィたんは(セフレだけど)愛し合っているのょ。離して、テリィたーん!」


大声で僕の名を叫びながら妄想から醒めるエアリ。ヨロヨロと立ち上がりベランダの手摺りに掴まる。


「どうしよう。テリィたんが…テリィたんが!」

「どうしたの?誰と誰がセフレなの?」←

「テリィたんは、敵に捕まって注射を打たれた。今ごろ拷問されてるわ!」


泣き叫ぶエアリ。


「落ち着いて!エアリ、落ち着くのょ。何を見たのかちゃんと話して」

「はい、姉様。昨夜、私達に違反キップを切ろうとしたメイド刑事がSATO司令官のレイカだったの」

「マジ?」


その場の全員が総立ちだ。


「彼女がテリィたんを捕虜にした。間違いないわ」

「で、今テリィ様は何処にいるの?」

「ソレがワカラナイのょ」


希望は一瞬で失望へ変わる。


「思い出して。何か手がかりがあったハズ」

「…そうだわ。背後で聞こえたエンドクレジットの音楽に聞き覚えがアル。ミレニアムの頃に流行った名ゲーム機"ミサイルコマンダー"ょ。今どき"コマンダー"で遊べるのは…」

「パーツ通りにある地下ゲーセン"末広町ホール"だわ。レトロ機ばかり集めてる(みせ)。絶対ソコょ」


断言するミユリさんは昭和ゲームヲタか?


「もう他に手はないわ。私、ラギィ警部に全てを話して相談してみる」

「ソレ、どーなの?ラギィはSATOの司令官を部下に雇ってた女ょ?しかも、テリィたんの元カノだし。ミユリ姉様、構わないの?」

「モチロン構う。でも、彼女ナシでは謎組織SATOと戦えないし、地下ゲーセン"末広町ホール"に踏み込むコトも出来ないわ」


ココで唯一"未覚醒"のスピアが割り込む。


「マリレ。貴女が超能力を使う気なら、私は反対ょ。だって、貴女は自分で超能力をコントロール出来ないでしょ?下手すりゃ自分が死ぬわよ」

「私も逝くわ」

「ミユリ姉様まで?ダメょ。TO(トップヲタク)に愛想をつかされ超能力を喪失した姉様は、ハッキリ言って足手まとい。エアリとマリレ、そしてティル()の3人で行くわ。ソレがテリィたんを救出出来る可能性が1番高い。ワカルでしょ?」


ミユリさんは肩を落とす。エアリの方を向く。


「…気をつけてね。テリィ様をお願い」

「はい、姉様。必ず連れて戻ります」

「無事に帰って来てね」


マリレ&スピアもキス❌ハグ。必ずココへ帰って来ると手を振る腐女子に笑顔で応え…真夜中のベランダに残されるミユリさんとスピア(2人のメイド)


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


エアリ、マリレ、ティル。3人のメイドが地下ゲーセン"末広町ホール"にある女子トイレを監視している。因みに、トイレには常に"使用中"の札だ。


「静かに。黒メイドが来たわ」


電子音の洪水が渦巻くゲーセンで静かにしろもナイが、とにかく!メイド達は息を殺して様子を伺う。

現れた黒メイドは、女子トイレの中に姿を消す。


「あのトイレには何かアル。調べなきゃ」


10分待って誰も出て来ないので、メイドは扉を開いて踏み込むと中は無人だ。恐る恐るティルが便座のフタを開けると、裏側はスキャナー付きの電子システムがビッシリ。


「スゴい。このスキャナーで、指紋・網膜・骨格・体脂肪率まで認証するシステムだわ」

「体脂肪率まで?迂闊にダイエット出来ないわね…しかし、ウマいコトを考えたモノね。便座のフタのスキャナーに手のひらをつけるナンて、みんなドン引きょ」

「静かに。また誰か来たわ。隠れて。黒メイドがもう1人来るわ」


足音が近づき黒メイドが目の前を通り過ぎる。


「ティル。貴女って動体探知能力がアルの?」

「ソレもナセラから教わったワケ?」

「まぁね」


うなずくティル。


「私達は、あの黒メイド達にズッと追われて生きて来た。彼女達の手の内なら知り尽くしてるわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


僕は、ゲーセン"末広町ホール"の地下深く秘密裡に作られたSATO司令部の改造手術室に監禁されてる。


「さぁ答えてもらうわ。あの渦巻きがペイントされた物体は時空間をつなぐトランシーバーなんでしょ?」

「むにゃむにゃむにゃ」

「寝てるの?コラ、起きろー!誰か、このヲタクを起こして!」


2人の白衣のメイドが僕に薬を嗅がせる。彼女達は全員黒メイド服にタイガーマスクという出立ちだ。


「死にたくなければ答えて。もう1台の通信機はどこなの?私は、決してあきらめない。なんとしても聞き出すから」

「ナニャドヤラナニャドヤラ」

「今度はヘブライ語?話にならないわ。投与した薬を全て抜いて。ちゃんと話が出来るように覚醒させて!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


御屋敷(トラベラーズビクス)のボックスシート。落ち込んでいるメイド長のミユリさんを励ますスピア。


「大丈夫ょ姉様。今頃きっとテリィたんは救出されてるわ」

「そうなら良いけど…え。ラギィ?」

「ミユリ姉様。昨夜、一晩中"時空遊園地"での出来事を考えていたの」


シートに割り込んで座るのは…何と警部のラギィw


「この目で見たの。アレは鏡の屈折ナンかじゃナイわ。間違いなくテリィたんが2人いて、その内の1人をウチの新入り刑事が捕縛した…彼女は、特殊部隊ナンでしょ?捕まったのがモノホンのテリィたんでなければ良いけど…ねぇミユリ姉様。そろそろホントのコトを歌ってくれない?」


たちまち涙目になるミユリさん。視線をそらす。


「私は、テリィたんの力になりたいだけ」

「…ラギィ。私達にも何もわからないのよ」

「SATOが何かを疑い、その結論が出たとすれば、テリィたんは私の助けを必要としてるハズ。貴女は、超能力が消えたからと言って黙って見てて良いの?貴女、ソレでもテリィたんの"推し"?」


答えを待たズ立ち上がるラギィ。歩き去る。


「…確かにラギィの言う通りだわ。彼女に助けを求めるべきカモ。こうして手をこまねいている間に、テリィ様に何かあったら、私は何もしなかった自分を一生許せない」

「わかったわ。姉様、こうしましょう。4時まで待って、もし誰も帰って来なかったら、その時にもう1度考えてみるってゆーのはどう?」

「わかった。4時までね?」


根拠レスだが力強く断言するスピア。


「姉様、きっと大丈夫よ」


うなずくミユリさん。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


改造手術台の上の僕に新たな注射が打たれる。さらに左右から掴まれ氷風呂。続いて熱湯風呂。古今東西の酔いを醒ます方法、あるいは昭和のバラエティ番組の再放送(死語)的な風景が繰り広げられる。


「助けてくれー」


熱湯から出され頭に電極を付けられ、脳波を測定。さらに推さえつけられ、ヲシログラフをとられるw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ダメょ入れないわ。妙な光しか見えないの。SATOの連中、テリィたんに何してるのかしら」

「あの女子トイレのゲートシステムをショートさせて入り口から正面突破スルって言うのは?」

「士官学校の答案なら零点ね。そんなコトしたら1発で、奴らに見つかり皆殺しだわ」


抑えに回るティル。


「でも、このママじゃテリィたんは殺されちゃう」

「…私が行くわ。2人は待ってて」

「しっ!また黒メイドよ」


黒メイドが推すストレッチャーが女子トイレに運び込まれる。ソレを見ただけで泣き顔になるエアリ。


「きっと今のはテリィたんだわ」

「いいえ。テリィたんに何かあったら私が何かを感じるはずよ」

「ティル。貴女、テリィたんとは以心伝心だと言いたいの?とにかく!確かめに行かなくちゃ」


立ち上がるマリレ。見つめ合うエアリとスピア。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


同時刻。ミユリさんも御屋敷(トラベラーズビクス)で立ち上がる。


「もう、これ以上待てないわ。私、ラギィ警部に会ってくる」

「待って姉様。私達だけの判断で勝手に行動しちゃってマジ大丈夫?」

「だって、テリィ様の命に関わるコトなのょ?悩むだけ無駄だわ」


言い切るミユリさん。


「テリィ様も警部を信用しようとしていた。だから、私も信じるコトにした」

「ラギィには何処まで話すつもり?」

「必要なコトは全て話すわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


パーツ通りの地下ゲーセン"末広町ホール"。


黒メイド2人が現れ、慌てて隠れる3人のメイド。やり過ごして"霊安室"と描かれた扉から中に入ると、真ん中にストレッチャーだ。目を瞑って恐る恐る白い布を取ると…殺された黒メイドだ。


安堵の空気が流れる。


「ちょっと見て!エアリ、コレを見て」


マリレが指差す。遺体の胸の谷間に焼けた手形。


「何なの?」

「ナセラね?コレは彼女の殺し方だわ」

「ウソよ。私は何も知らナイし」


突然、霊安室の扉が開く。振り向く3人。


「動くな!なぜココに来た?」


黒メイドだ!マリレが手を前に出す。全ての扉がバタンバタン開き様々なモノが宙を舞って飛び交う。


「フフフ」


一方、黒メイドは落ち着き払い、同様に手を挙げ応じる。一瞬で吹き飛ばされ壁に叩きつけられるマリレ。


「貴女、ナセラね?」


キッパリ断言するエアリ。光が渦を巻き溢れ出す。次の瞬間、ロングのメイド服姿で登場するナセラ。


「ナセラ!どうして私達を置き去りにして黙っていなくなったりしたの?」

「あのね、ティル。私だって1度に4人の御守りは無理なのょ」

「ズッと貴女を探してたのょ」


詰め寄るマリレ。ますますウンザリ顔のナセラ。


「ソレは私のセリフょ。アンタら、どうしてこんな無茶な真似をしたの?」

「テリィ様が連れ去られたのよ」

「敵の怖さが、まるでわかってない。貴女もまだまだ甘いわねティル。SATOは貴女達が戦って勝てる相手じゃないわ。私について来て」


霊安室の窓という窓から光が溢れる。光が消えて扉が開くと…変身した若作り黒メイドが立っている。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)。ラギィ警部のオフィスに入るミユリさん。高層ビルの向こうに"リアルの裂け目"が開いてる絵画を見ているラギィ。振り向く。


「あら。ミユリさん、どうしたの」

「ラギィ、お願いょ。力を貸して。メイド刑事のフィツは新入りでもなければ、フィツという名前でもなかった。本名はレイカ。彼女は、謎組織SATOの沈着冷静な最高司令官で、日夜、謎の時空トルーパーを敢然と拉致しているの」

「なぜソレがわかったの?」


首を横に振るミユリさん。


「それは言えません。でも、今、テリィ様が危険な状態にあるコトは確かなの。だから、私を信じて力を貸して。彼等の居場所を教えます」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


同時刻。メイド達は作戦会議中だ。


「やっぱりナセラは信用出来ナイわ。3人だけでやりましょう」

「でも4人の方が強いに決まってるし」

「SATOの手先カモしれないわ。味方だと言う証拠はnothingょ」


ソコへ…空気が揺らいで、突然ジャンプ(テレポーテーション)して来るナセラ。持参したタブレットの画像をみんなに示す。


「OK?タイミングが肝心よ。時計を合わせるわ。今5時47分。コレが脱出ルート。スキャンして」

「スキャン?」

「脳内スキャンよ…まさか貴女達、出来ないの?」


天を仰ぐナセラ。


「直接スキャン出来ないのなら暗記して(最初からそう逝え)。コレが唯一の安全ルートょ。前にも脱出スル時に使ったコトがアル。とにかく!テリィたんを救出スルには私だけでは無理なの。問題は、女子トイレに模したセキュリティシステムよ」

「ロックなら解除すれば?」


ナセラが珍しく天を仰ぐ。


「無理。あの扉は劣化ウラン製よ。私達が分子構造を操作できない数少ない物質なの」

「貴女達の力がおよばない物質ナンてアルの?」

「どんなパワーにだって限界はアルのよ」


妙に人間臭いセリフだ。親近感が湧く。


「SATOは貴女の力の限界を知っているの?」

「知らなきゃ劣化ウラン製のゲートなんてコシラエないわ。何しろ私達を50年間も追いかけ回したり、時には解剖までして知見を集積してるから色々と詳しいの。しかも、あのトイレに乗るにはX線スキャナーを通る必要があるけどコレが厄介」

「じゃ、どうするの?」


身を乗り出すエアリ。


「私は黒メイドに変身できる。姿から指紋そのものまでそっくりそのまま。問題はX線。私の骨格はこの時空の腐女子とは違う。外見は変えられるけど骨格までは無理なの。でも、貴女達の骨格は100%完璧に秋葉原の腐女子にソックリなの」

「そりゃ、元が秋葉原の腐女子ソノモノだから当然だわ…で、なんで貴女だけが違うの?」

「生物学の講義は後よ(私だけが時空トルーパーでみんなは腐女子に波動生命体が乗り移っただけなんて説明してるヒマないし)。あの女子トイレを抜けるには、もう1人必要なの。でも、SATOで唯一使えそうな駒だった女性メンバーは死んでしまった。だから、貴女達の中から志願者を募ります」


悲しそうな顔をするミユリさん。


「私には無理ね。超能力が消えてしまったし」

「いいえ、出来るわ。はい、志願ご苦労サマ。貴女は、やり方を知らないだけなの。ソレは教えてあげられる。自分のTO(トップヲタク)のために覚えてマスターして。そっちのメイド2人には、他にやってもらうコトがあるし」

「ROG」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


改造手術台の上で手のひらをピクピクさせる僕。寝ていると見せかけてレイカに飛び掛かる。スパイ映画を気取ってみたが、レイカはウンザリした顔だ。


「何?世界一ヤル気のない痴漢?そもそも男の貴方がヒロインに"覚醒"するには無理があるけど、念のために言っとくわ。超能力を使おうとしても無駄よ。大脳皮質の神経伝達物質の働きを抑える血清を注射してある。過去に行った解剖実験で、そこがスーパーヒロインの超能力の源だとわかってる。おとなしく改造手術台に寝てなさい」

「え。コレって"改造手術台"だったのか?気分はもうショッカーだな。アンタらナチの残党か?」

「ソレはヲタクのマリレでしょ(彼女は国防軍w)…私達は、勘違いをしていた。スーパーヒロインは、決して"覚醒"したエイリアンではなく、脳が未開発な人間に過ぎない。"来るべき種族"とは、宇宙から来る使者ではなくて、人類そのものだったのよ」


話がピーマンになったトコロでリモコンスイッチが推され、改造手術台から金属製の手錠が飛び出し僕を固定スル。頭にはコードがハミ出たヘッドギアw


「テリィたんには愛がある。家族への愛、友人への愛、推しへの愛…」


ヒドいナレーション(多分レイカだw)と共に、に家族、友人などの画像が流れる。最後はもちろんメイド服でカウンターに頬杖をつくミユリさんだ。萌え。その背後から、鈍く光るナイフ手にした人影…


「やめろ!パーキングメーターに気をつけろ!」

「落ち着いて。今のはAIに描かせたCGよ。いや、VRって奴?貴方が被っているヘッドギアは大型3Dメガネってワケ。ミユリは安全。今も御屋敷でお給仕中ょ。安心して」

「マジか?」


耳元で囁くレイカ。


「でも、このVRはリアルにもなり得る。それはテリィたん次第」

「悪党め」

「悪党?私は命がけでこの秋葉原を守ってる。別の時空の侵略からね…ねぇテリィたん。もう1つのトランシーバーは何処にあるの?」


僕の鼻先に渦巻きが描かれた物体を突き付ける。


「コレは、万世橋地下の遺跡で発見された。人類は50年にわたり、もう1つを探してる。ソレを今は貴方が持っているそうね。死ぬ前にトポラが歌ってくれたわ…で、どこに隠したの?」

「橋だ。愛の戦士レインボー万世橋なんちゃって」

「笑えない。正直に話して…わかったわ。二者択一よ。もう1つのありかを正直に言うか、友人の誰を最初に殺して欲しいかを言って。10秒だけ待ってあげる」


ご丁寧に目の前の3D画像でカウントダウンが始まる。テーブルゲームのリプレイ画面みたいだょw


「最初はやっぱりミユリね。今なら超能力を喪失したタダの腐女子だから、片手で殺せるわ」

「おいおいおい。やめてくれ。やめろ」

「だったら、教えて。もう1台の"時空トランシーバー"は何処にアルの?」


詰め寄るレイカ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


霊安室。嘆くナセラ。目の前に死体。


「人類はか弱く、無駄だらけの種族だ。素晴らしい頭脳を持ちながら、その大部分を使いこなせていない。でも、スーパーヒロインと呼ばれる一部の腐女子は、人間の脳が本来備えている能力をフルに使えるように設計されている」

「誰に?ソレに、というコトは一般人にも超能力は備わっているが"覚醒"していないだけなのか?」

「YES。"超能力"は人類誰にも備わっている力。ただ、一般人(パンピー)達は"超能力"を脳内に眠らせてるだけなの。でも、今、その脳を妄想力豊かなヲタクが目覚めさせようとしている。人類を"覚醒"しつつアルのは、貴方達ヲタクなのよ」


死体の腕をつかみながら語るナセラは雄弁だ。


「つまり、スーパーヒロインは進化した未来の人類の姿なのか?覚醒と妄想の関係は?」

「腐女子が覚醒するには妄想指数の高いヲタクの影響が必要なの。だから、腐女子は最低でも妄想指数600以上のヲタクを無意識に求めてる。コレは母性本能の新しい形なの…あと、いわゆる性的に合致したパートナーの存在が"覚醒"効果を大きく左右するコトがわかってる」

「性的に合致?セックスが必要なの?チヤホヤされるけど実はバージンのヲタサー姫ではダメなの?」


悲しげに首をふるナセラ。


「ヲタサー姫が覚醒した事例は皆無。やはり、推しとTO(トップヲタク)の関係まで昇華しないと…既に腐女子の一部は、数千年後の人類に匹敵する超能力が覚醒するように予めプログラムされている…とにかく!ミユリ姉様、貴女はせっかくの超能力をほとんど利用出来てないの。見てて」


死んだ黒メイドの右の人差し指を摘まむナセラ。瞬間、まばゆい光が現れて…消える。いつの間にか黒メイドの指紋がナセラの人差し指に転写されてる。


「貴女にも出来るハズょ。超能力を抑えているのは貴女自身。常識人(パンピー)の持つ常識やらシガラミやらが、貴女が本来持つ超能力の発現を損なっているだけ…もう1回やってみて」


再び死体の指をつかむミユリさん。深呼吸。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ボイラー室みたいな複雑なパイプの下。息を殺して待機しているエアリの肩にソッと手を置くティル。


「きっと上手く行くわ。ナセラに任せておけば大丈夫だから」

「ありがとう」

「今までだって色々あったけど、生き延びて来れたんだモノ」


ムダに胸の谷間チラ見せのエアリ。ティルを見上げる。


「違うのよ。貴女がテリィたんのためにココまで力を貸してくれるコトがウレしいの」

「だって、彼は私の…とにかく!テリィたんの救出作戦は未だ始まったばかりよ」

「そうね。じゃ、私はテリィたんの潜在意識に入るわね。その間ティルは何をスルの?」


微笑を浮かべて目を瞑るティル…突然、物陰から黒メイドが現れて、ティルとエアリに襲い掛かる!


「きゃー!イヤよ!助けて!」


恐るべき怪力でティルを持ち上げるや、アルゼンチンバックブリーカーをキメる。ティルの肢体が弓なりに曲がり苦悶の喘ぎが漏れる…が、次の瞬間全ては消え去る。


「大丈夫よ、エアリ。心配しないで」

「…今のは一体何なの?」

「妄想よ。私は、妄想を幻覚として他人に見せるコトが出来る」


納得するエアリ。


「ということは、テリィたんが見ていた貴女とのセックス妄想は、テリィたんの妄想ではなくて、貴女の妄想だったのね?」

「YES。テリィたんの妄想セックスのお相手(ヲカズ)は、いつも貴女。ミユリ姉様は、よっぽどセックスがヘタなのか1度もお座敷がかからないわ。惨めね…でも、私も妄想を長くは見せていられないの。だから、私がレイカに幻覚を見せて気をそらす内にナセラ達がテリィたんを救出するって作戦なの。OK?」


OK牧場。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ミユリさんは集中する。と、後方で照明が爆発w


「ダメょ出来ないわ。ヤハリ私の超能力は消えてしまったのだわ」

「いいえ。出来るハズ。超能力を抑え込んでいるのは姉様自身なの」

「いいえ。私の超能力は消えてしまったの」


ナセラは、真正面から見据える。


「テリィたんが殺されても良いの?」

「私だって頑張っているの!」

「いいえ。貴女が本気を出せば、こんなコトはワケなく出来るハズ」


突き放すナセラ。


「ならヒントを頂戴。何かコツがあるの?」

「ヒントはミユリ姉様、貴女自身の中にあるわ」

「今まで、私達がどんなに困っても、貴女は知らん顔だった。なのに、今さら何?時間がナイの。力を貸して」


ナセラがアドバイス。


「感情を封印して集中して。腐女子の本能のママに生きて。余計なコトは考えないで。自分が大事だと思うコトだけをトコトン突き詰めるの。廃人になるまで」


その時、物音がして足音。振り向く2人。


「敵が現れる前に何とかして。私は、今やってくる黒メイドのボディを利用するから」


慌てて死体の指をつまむミユリさん。誰かの足音が近づきドアの向こうで止まる。物陰に身を潜めるナセラ。


「急いで。もう時間がないわ」


ドアが開く。浅黒い肌の黒メイドだ。その瞬間、ミユリさんと黒メイドの指が光り指紋か転写される。


「やった!出来たわ」

「誰?何者?」

「あら。お元気?」


先ず指紋が転写出来て喜ぶミユリさん、次に喜ぶミユリさんを見て不審者と思い音波銃を抜く黒メイド、最後に黒メイドに声をかけ、振り向いた瞬間に彼女の胸の谷間に手のひらを当てるナセラ…


「ぎゃあああっ!」


黒メイドの胸の谷間から白い光が溢れ、彼女は断末魔の叫びを上げ崩れ落ちる。駆け寄るミユリさん。


「ヤメて!指紋の転写は出来たと逝ったでしょ?!」

「だから、出来ると言ったでしょ?おめでとう」

「じゃ何でメイドを殺したの?」


キョトンとした顔をするナセラ。


「だって、SATOの地下司令部で、本人と出くわしたらマズいでしょ?そう思わない?」

「だからといって、どーしてそんな簡単にメイドを殺せるの?貴女、何も感じないの?」

「ミユリ。貴女こそ、こんなトコロで死にたいの?テリィを無事に救出したいのなら、私達は戦うしかないの」


ミユリさんは溜め息をつく。


「貴女には失望したわ」

「私もよ。But show must go on。着替えて」

「え?」


ナセラが手をかざすとミユリさんの着ていたメイド服は、セクシーなヘソ出し黒メイド服にチェンジ。


「胸がブカブカか。ま、良いわ…It's SHOWTIME」


ゲーセンの物陰から2人の黒メイドが颯爽と現れる。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


改造手術室。時空ビーコンを2つ手にして御満悦なレイカ。


「テリィたん、ついにマジ歌ったのね。さあ、これで時空トランシーバーが2つ揃ったわ。作動もつれさせて」

「そーゆーコトはスーパーヒロインに頼めよ。何度も逝うけど僕はタダのヲタクだから」

「ヤルのよ」


空手チョップのポーズで迫るレイカ。昭和のプロレスかょ。


「今すぐ作動させて頂戴」

「どうすれば良いか知らないんだ」

「始めて」


タイガーマスクの覆面をしたメイド達がゾロゾロ入って来て、それぞれ手にした手術道具をズラズラ並べる。おいおいおい。このママ、ショッカーの改造人間にされちゃうのかな。マジかょ。


「最後まで痛みを自覚出来るように、全ての神経はそのママにしといてあげる」

「あのさ。どんなに脅されようと知らないものは知らないんだょ」

「…オペを始めて」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"末広町ホール"の女子トイレ。


ミユリさんとナセラが入ると正面に"清濁を併せ呑み過ぎ二日酔い"との愉快な落書きがアル。

ナセラが便座のフタを開けると、フタの裏側はデバイスでスキャナーなどが組み込まれている。


「ちょっとタメらっちゃうわね」


便座のフタの裏側スキャナーに手のひらを当てるティル。瞬時に指紋が走査され、X線で骨格がスキャンされる。鈍い音がして女子トイレが動き出す…


地下へ。


声紋チェックでSATOの地下司令部へ降りる秘密のエレベーターだったのだ。身構える2人のメイド。


「ゲートが開くと黒メイドがいるわ。私に任せて」


扉が開く。動体感知した通り黒メイドが1人。


「アルファ!」

「ケンタウルス!」

「…貴女、新入りのフィナね?」


合言葉を交わし、ミユリさんに話しかける黒メイド。肌が白い。


「よろしく」

「期待しているからシッカリね」

「…久しぶりのオペね。ルール無用のヲタクに正義のメスをぶちかませ!」


手術着姿のメイドの一群が赤い気炎を吐きながら通り過ぎて逝く。思わず後をつけそうになるミユリさん。


「ちょっと。ミユリ、どこへ行くの?」

「きっと、この先にテリィ様がいらっしゃるのよ」

「ダメ。今、貴女が行っても殺されるだけ。作戦通りにやりましょう」


時計を見るティル。


「2分後よ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


地下にゲーセン"末広町ホール"が入っている第2.5末広ビルの電気室で息を殺すティルとエアリ。


「もう始めちゃお?」

「ダメ。あと2分よ」

「でも、さっきみたいにスンナリと潜在意識に入れるとは限らないし」


エアリは心配顔だ。


「ナセラの作戦どおりにやりましょう」

「わかったわ」

「それでいつも生き残ってきたから」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


同時刻。僕は改造手術台の上。レイカが語る。


「コッチのメイドがテリィたんを切り刻み、アッチのメイドがテリィたんをラクにしてくれる」


女タイガーマスクみたいなメイド2人が、それぞれメスと注射器を見せる。どちらもありがたくない。


「ショッカーはナチスの残党だという噂はマジだったんだな」

「OK。始めて頂戴」

「どうせならイケメン怪人に改造してくれ。ただし、韓流だけはno thank you」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


第2.5末広ビルの電気室。ティルは、ムダに胸の深い谷間をチラ見せしながらエアリの方を振り向く。


「時間よ」

「ROG」

「お願い。うまく行って」


エアリは、ミユリさん推奨の僕の画像を胸に抱き、目を瞑る…脳内に激しくフラッシュバック!


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


突然、僕の鼻先で白い光が爆発、エアリが現れてメスを構える執刀メイドを突き飛ばすと、エラい早口で何ゴトかを喋り出す。


「テリィたん。時間がないの、よく聞いて。もうすぐ、ミユリ姉様とナセラが助けに来るわ。ねぇ私の声が聞こえている?お願い。しっかりして。レイカは例の物体をトランシーバーだと思っているわ。だから、今から通話するとか言って、レイカ以外の人を改造手術室から追い出して」


じょじょに意識が戻って来る。誰かが叫んでいる。レイカか?


「さぁテリィたん。時空トランシーバーを作動せるのよ」

「では、オペを開始します」

「ヤメろー」


執刀メイドが僕の胸に深々とメスを入れる。絶叫する僕…だが、血は出ない。コレは夢か現実か。とにかく、赤い血が出ない内に出来るコトをやろう。


「わかった!トランシーバーを作動させるから、他の人は外に出してくれ」

「わかった。全員、出なさい」

「シッシッ」


残念そうにメスを置く執刀メイド。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


電気室。


「妄想をリンク出来たわ。改造手術室でトランシーバーを作動させるコトになった」

「でも、どうやって作動させるの?そもそもアレはトランシーバーじゃないし」

「え。とにかく、何でも良いから適当に幻覚を見せてよ」


ブツブツ言いながら目を瞑るティル。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


改造手術台の上。金属手錠を解かれた僕は、上半身を起こして自分の胸に刻まれた一筋の傷跡を見る。その鼻先にビーコンを突き出して来るレイカ。


「さぁ作動させるのよ」

「わかった、任せろ…うーん」

「…何にも変わらないワ」


ヤバい。思念波を発してマス的な顔とかしてみる。


「はぁはぁ…少し時間がかかるな」

「いつまで待たせる気?執刀メイドを呼ぶ?」

「待てょもう少しだ…はぁはぁ」


大きく肩で深呼吸。我ながら迫真の演技だ。


「チーン。残念だけど時間切れよ…あら?あらら?どーしたの?ブラボー!」


素っ頓狂な声をあげるレイカ。彼女の目にはトランシーバーが光り出して、送話口?からは蒸気を噴いて、受話口からはコールサインが聞こえて来る…


「チェックメイドクイーン2.5、コチラはブラックルーク、チェックメイドクイーン2.5、コチラはブラックルーク…」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


吹き抜けの観察室から改造手術台を見下ろしていたミユリさん達は、見えない何かに向かって満足げに微笑んでるレイカを見て小躍りする。王様は裸だw


「やったわ。レイカは幻覚を見てる」

「でしょ?タイミングが全てょ」

「テリィ様の救出を最優先。レイカ殺害は後回し」


観察室のガラスの天井を粉々に割って改造手術室に飛び降りる。何も気づかズにニマニマ中のレイカ。僕は改造手術台から颯爽と飛び降りフロアに立つ。


「テリィ様、大丈夫?わっ、胸にパックリ…」

「ええっ?リアルだったのか?」

「ベニスの商人も顔負けね」


僕の胸にはポッカリ傷口が開き血がドクドク流れてる…途端にガックリ来る僕。ミユリさんの肩を借りる。

 

「テリィ様、しっかり!いつもの逃げ足の速さ、見せてください!」

「え。そうだな、僕の逃げ足は…」

「貴女達2人で先に逃げて」


突然ヘンなコトを逝い出すナセラ。


「待って。貴女はどーするの?」

「未だやるコトがアルわ」

「何逝ってるの?一緒に逃げましょう」


no thank you。首を振るナセラ。


「時間がナイわ。急いで」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「…ふふふ。"時空トランシーバー"が作動した。コレで敵の時空を攻撃出来るわ」

「レイカ司令官、しっかりしてください!様子を見に来たんですが…」

「…え。や、奴は何処?くそ、ベラボーに逃げ足の速い奴!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


地下司令部内で黒メイドの死体が2体発見される。警報が鳴り響き、敵を求め四方に散る黒メイド達w


「フィル、何してる?」


ソコヘ僕を担いで逃走中のミユリさん(と僕)。ミユリさんを呼び止めたのは、さっきの黒メイドだ。


「レイカ司令官の命令で捕虜を護送中です!改造手術室の中で大変なコトが起きてます!」

「わかったわ」

「急いで!」


全力ダッシュで走り去る黒メイド。改造手術室に飛び込むと…ちょうどナセラがレイカを殺すトコロw


「司令官!その黒メイドは偽物です」


銃口がラッパ型に開いた音波銃を抜く黒メイド達。一斉に発射され殺人音波に射抜かれたナセラは、傍らのストレッチャーにもんどり打って倒れかかる!


「早く出口を閉鎖して!」


レイカが大声で叫び、自ら女子トイレ型エレベーターへ猛ダッシュ!一足早く飛び込んだ僕達が声紋チェック(生体認証)をして閉扉…ところが!


「待て!逃がさない!」


音波銃を斜めに構えたレイカが全力でダッシュしながらラッパ型の銃口を僕達へと向ける…その時!


「止まれ!止まれ!止まれ!」


ラギィ警部?南部14年式を正確に構え、明らかに2度目の警告の途中で連射!弾かれたように撃ち倒されるレイカ。音波銃を取り落とす。その間に装甲ドアが閉まる…


「くそっ!開けて!」


ゲートの生体認証に手のひらを当てるレイカ。だが、スキャナーには血糊がベッタリとついて認証拒否されるw


「ちくしょう!」


荒い息。完全に閉まった装甲ドアを叩くレイカ。


To be continued

今回は、海外ドラマによく登場する"捕虜奪還"をモチーフに、捕虜となった主人公へのヒロイン達の想いや秘密基地への潜入、派手な脱走と追跡劇など、王道?のアクション作品を描いてみました。根がヲタクなので苦手な人ジャンルと思っていましたか、ヒロイン達とのハーレム関係を軸に楽しく描き進み、金曜朝のUPという早めの完成となりました。


今日は2025年末、仕事納めの日。朝マックで後書きを描いています。


海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、すっかり中国人の消えた秋葉原に当てはめて展開してみました。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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