須賀の宮殿とスサノオから大国主までの系譜
故、是以、其速須佐之男命、宮、可、造作之地、求、出雲国。
爾、到、坐、須賀[此二字、以、音。下、效、此。]、地、而、詔、之、「吾、来、此地、我御心、須賀須賀斯、而、其地、作、宮、坐。
故、其地、者、於、今、云、「須賀」、也。
茲大神、初、作、須賀、宮之時、自、其地、雲、立、騰。
爾、作、御歌。
其歌、曰。
「夜久毛多都、伊豆毛、夜幣賀岐、都麻碁微爾。
夜幣賀岐都久流、曽能夜幣賀岐袁」
於、是、喚、其足名椎神、告、言。
「汝、者、任、我宮之首」
且、負、名号、稲田、宮主、須賀之八耳神。
故、其櫛名田比売、以、久美度邇、起、而、所、生、神、名、謂、八嶋士奴美神[自、「士」、下、三字、以、音。下、效、此。]。
又、娶、大山津見神之女、名、神大市比売、生、子、大年神。
次、宇迦之御魂神。
[二柱。「宇迦」、二字、以、音。]
兄、八嶋士奴美神、娶、大山津見神之女、名、木花知流[此二字、以、音。]比売、生、子、布波能母遅久奴須奴神。
此神、娶、淤迦美神之女、名、日河比売、生、子、深淵之水夜礼花神[「夜礼」、二字、以、音。]。
此神、娶、天之都度閇知泥[上]神[自、「都」、下、五字、以、音。]、生、子、淤美豆奴神[此神、名、以、音。]。
此神、娶、布怒豆怒神[此神、名、以、音。]之女、名、布帝耳[上]神[「布帝」、二字、以、音。]、生、子、天之冬衣神。
此神、娶、刺国大[上]神之女、名、刺国若比売、生、子、大国主神。
亦、名、謂、大穴牟遅神[「牟遅」、二字、以、音。]。
亦、名、謂、葦原色許男神[「色許」、二字、以、音。]。
亦、名、謂、八千矛神。
亦、名、謂、宇都志国玉神[「宇都志」、三字、以、音。]。
并、有、五、名。
これにより、そのスサノオは、宮殿を造るべき地を出雲という国で探し求めた。
そして、須賀という地に到ると、「私(、スサノオ)が、この地(、須賀)に来たら、私(、スサノオ)の心は清々しく成った」と話して、その地(、須賀)に宮殿を造った。
このため、その地は、今においても、(すがすがしい地であるから)「須賀」と言うのである。
この大いなる神(である、スサノオ)が須賀の宮殿を造り始めると、その地から雲が立ち上った。
そのため、(スサノオは、)歌を作った。
その歌とは、次のような歌詞である。
「八雲、立つ、出雲、八重垣、妻、籠めに(。何重にも重なった雲が立ち上る、出雲という国の須賀という地に、何重もの垣根の宮殿を造る、妻と住むために)。
八重垣、作る、その八重垣を(。何重もの垣根を造っているのだ、その宮殿の何重もの垣根を)」
ここ(、須賀の宮殿)に、(スサノオは、)その(義父である)足名椎神を呼び寄せて、告げて話した。
「あなた(、足名椎)に、私(、スサノオ)の宮殿の管理を任せます」
また、(スサノオは、義父である)足名椎に、「稲田の宮殿の管理者である須賀の八耳神」という名号を与えた。
こうして、(スサノオが、)その櫛名田比売と性交して、生まれた神の名前は、八嶋士奴美神と言う。
また、(スサノオが、)神大市比売という名前の、大山津見神の娘を娶って生んだ子は、まず、大年神である。
次に、宇迦之御魂神である。
(大年神や宇迦之御魂神の)異母兄である八嶋士奴美神が、木花知流比売という名前の、大山津見神の娘を娶って生んだ子は、布波能母遅久奴須奴神である。
この布波能母遅久奴須奴神が、日河比売という名前の、淤迦美神の娘を娶って生んだ子は、深淵之水夜礼花神である。
この深淵之水夜礼花神が、天之都度閇知泥神を娶って生んだ子は、淤美豆奴神である。
この淤美豆奴神が、布帝耳神という名前の、布怒豆怒神の娘を娶って生んだ子は、天之冬衣神である。
この天之冬衣神が、刺国若比売という名前の、刺国大神の娘を娶って生んだ子は、大国主神である。
(大国主神は、)またの名は、大穴牟遅神と言う。
またの名は、葦原色許男神と言う。
またの名は、八千矛神と言う。
またの名は、宇都志国玉神と言う。
(大国主神には、)合わせて五つの名前が有る。
(日本書紀では、大国主は、大己貴とも呼ばれているし、大物主とも呼ばれている。)