古事記の抄訳

大ゲツヒメ

　又(また)、食物、乞、大気津比売(おおげつひめ)神。

　爾(しかして)、大気都比売(おおげつひめ)、自(より)、鼻、口、及(および)、尻、種種味物(美味い食べ物)、取出、而、種種、作、具(そなえて)、而、進(勧めた)時、

速須佐之男命、立、伺、其(その)態、以為(思う)、穢汚、而、奉、進(勧めた)、乃(すなわち)、殺、其(その)大宜津比売(おおげつひめ)神。

　故、所、殺、神、於(に)、身、生、物、者(は)。

　於(に)、頭、生、蚕。

　於(に)、二目、生、稲、種(たね)。

　於(に)、二耳、生、粟。

　於(に)、鼻、生、小豆。

　於(に)、陰(陰部)、生、麦。

　於(に)、尻、生、大豆。

　故是(このため)、神産巣日御祖命、令(させる)、取、茲(この)、成、種(たね)。

　また、(スサノオは、)食物を大ゲツヒメに乞(こ)い求めた。

　そのため、大ゲツヒメが、鼻、口、および、尻から、種々の美味い食べ物を取り出して、種々の料理を作って、(スサノオに)勧めると、

スサノオは、その(大ゲツヒメの)様子を立って伺(うかが)っていて、「汚く、渡そうと、勧めた」と(誤って)思って、その大ゲツヒメ(の仮の身)を殺してしまった。

　すると、殺された神(、大ゲツヒメ)の(仮の)身に、次のような物が生じた。

　頭に、蚕(かいこ)(の卵)が生じた。(蚕は絹糸を出す。蚕の「蛹」、「サナギ」は食べる事もできる。)

　二つの目に、稲の種が生じた。

　二つの耳に、粟(の種)が生じた。

　鼻に、小豆が生じた。

　陰部に、麦(の種)が生じた。

　尻に、大豆が生じた。

　このため、神産巣日は、これらの現れた(卵や)種を取らせた。