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国生みと神生み

 (において)(ここ)、天神、諸(みこと)、以、詔、伊邪那岐(イザナギ)命、伊邪那美(イザナミ)命、二柱神、修理、固、成、(この)多陀用幣流(漂える)之国、賜、天沼矛、而、言依、賜、也。


 (ゆえに)、二柱神、立[訓、「立」、云、「多多志(立たし)。]、天浮橋、而、指、下、(その)沼矛、以、(かく)()、塩、許袁呂(コオロ)許袁呂(コオロ)邇[此七字、以、音。]、(かく)、鳴[訓、「鳴」、云、「那志(なし)」。]、而、引上、時、(おのずと)(その)矛、末、垂落之塩、累積、成、嶋。

 (これ)淤能碁呂(オノコロ)嶋[自、「淤」、以下、四字、以、音。]。


 ()(その)嶋、天、降、(いらっしゃる)、而、見立、天之御柱。

 見立、八尋殿。

 (において)(ここ)、問、(その)(妻の女神)伊邪那美(イザナミ)命、(いわく)

「汝、身、()如何(どのように)、成?」


 答、(いわく)

「吾身、(には)、成成、不成合処、一処、在」


 (しかして)伊邪那岐(イザナギ)命、詔。

「我身、(には)、成成、而、成余処、一処、在。

(ゆえに)、以、(この)吾身成余処、刺、塞、汝身不成合処、而、以、(なす)、生成、国土、生、奈何(どうであろう)?」[訓、「生」、云、「宇牟(うむ)」。下、(ならう)(これ)。]


 伊邪那美(イザナミ)命、答、(いわく)

「然。善」


 (しかして)伊邪那岐(イザナギ)命、詔。

(しかり)()、吾、()、汝、行、廻、逢、(この)天之御柱、而、(なす)美斗能麻具波比(みとのまぐわい)[此七字、以、音。]」


 如此(このように)、云、(約束して)(すなわち)、詔。

「汝、()(より)、右、廻、逢。

我、()(より)、左、廻、逢」。


 (約束する)(終わる)、以、廻、時、伊邪那美(イザナミ)命、先、言。

阿那邇夜志愛(あ! 何やし愛)[上]袁登古袁(男ぉ)![此十字、以、音。下、(ならう)(これ)。]」


 (遅れて)伊邪那岐(イザナギ)命、言。

阿那邇夜志愛(あ! 何やし愛)[上]袁登売袁(乙女)!」


 各、言、(終わった)之後、告、(その)(妻の女神)(いわく)

「女人、先、言、不良」


 (といえども)(しかり)久美度邇(クミドニ)[此四字、以、音。]、興、而、生、子、水蛭子。

 (この)子、()、入、葦船、而、流、去。


 次、生、淡嶋。

 (これ)(また)、不入、子之例。


 (において)(ここ)、二柱神、議、云。

「今、(わが)所生之子、不良。

猶、宜、(もうす)、天神之御所」


 (すなわち)、共、参上、請、天神之命。

 (しかして)、天神之命、以、布斗麻邇(ふとまに)爾[上。(この)五字、以、音。]、(占う)相、而、詔、之。

(よって)、女、先、言、而、不良。

(また)、還、降、(あらため)、言」


 (ゆえに)(しかして)(帰る)、降、更、往、廻、(その)天之御柱、(のよう)、先。


 (において)(ここ)伊邪那岐(イザナギ)命、先、言。

阿那邇夜志愛袁登売袁(あ! 何やし愛、乙女)!」


 (遅れて)(妻の女神)伊邪那美(イザナミ)命、言。

阿那邇夜志愛袁登古袁(あ! 何やし愛、男ぉ)!」


 如此(このように)、言、(終わって)、而、御合、生、子、淡道之穂之狭別嶋。[訓、「別」、云、「和気(わけ)」。下、(ならう)(これ)。]


 次、生、伊予之二名嶋。

 (この)嶋、()、身、一、而、有、面、四。

 (ごとに)、面、有、名。

 (ゆえに)、伊予国、謂、()[上]比売(ひめ)。[此三字、以、音。下、(ならう)(これ)。]

 讃岐国、謂、飯依比古(ひこ)

 粟国、謂、大宜都(おおげつ)比売(ひめ)。[此四字、以、音。]

 土左国、謂、建依別。


 次、生、隠伎之三子嶋。

 (また)、名、天之忍許呂別。[「許呂」、二字、以、音。]


 次、生、筑紫嶋。

 (この)嶋、(また)、身、一、而、有、面、四。

 (ごとに)、面、有、名。

 (ゆえに)、筑紫国、謂、白日別。

 豊国、謂、豊日別。

 肥国、謂、建日向日豊久士比泥別。[自、「久」、至、「泥」、以、音。]

 熊曽国、謂、建日別。[「曽」、字、以、音。]


 次、生、伊伎嶋。

 (また)、名、謂、天比登都柱。[自、「比」、至、「都」、以、音。訓、「天」、(のよう)、「天」。]


 次、生、津嶋。

 (また)、名、謂、天之狭手依比売。


 次、生、佐度嶋。


 次、生、大倭豊秋津嶋。

 (また)、名、謂、天御虚空豊秋津根別。


 (ゆえに)(よって)(この)八嶋、先、所生、謂、大八嶋国。


 (しかる)、後、還、(いらっしゃる)之時、生、吉備、児嶋。

 (また)、名、謂、建日方別。


 次、生、小豆嶋。

 (また)、名、謂、大野手[上]比売。


 次、生、大嶋。

 (また)、名、謂、大多麻[上]流別。[自、「多」、至、「流」、以、音。]


 次、生、女嶋。

 (また)、名、謂、天一根。[訓、「天」、(のよう)、「天」。]


 次、生、知訶嶋。

 (また)、名、謂、天之忍男。


 次、生、両児嶋。

 (また)、名、謂、天両屋。


 [自、吉備、児嶋、至、天両屋、嶋、(合わせて)、六嶋。]


 既、生、国、(終わると)、更、生、神。


 (ゆえに)、生、神、名、大事忍男神。


 次、生、石土毘古神。[訓、「石」、云、「伊波(いわ)」。(また)、「毘古」、二字、以、音。下、(ならう)(これ)、也。]


 次、生、石巣比売神。


 次、生、大戸日別神。


 次、生、天之吹[上]男神。


 次、生、大屋毘古神。


 次、生、風木津別之忍男神。[訓、「風」、云、「加邪(かざ)」。訓、「木」、以、音。]


 次、生、海神、名、大綿津見神。


 次、生、水戸(河口などの水の出入口)神、名、速秋津日子神。

 次、(妻の女神)、速秋津比売神。


 [自、大事忍男神、至、秋津比売神、(合わせて)、十神。]


 (この)、速秋津日子、速秋津比売、二神、(よって)、河、海、持、別、而、生、神、名、沫那芸神。[「那芸」、二字、以、音。下、(ならう)(これ)。]

 次、沫那美神。[「那美」、二字、以、音。下、(ならう)、此。]


 次、頬那芸神。

 次、頬那美神。


 次、天之水分神。[訓、「分」、云、「久麻理(くまり)」。下、(ならう)、此。]

 次、国之水分神。


 次、天之久比奢母智神。[自、「久」、以下、五字、以、音。下、(ならう)(これ)。]

 次、国之久比奢母智神。


 [自、沫那芸神、至、国之久比奢母智神、(合わせて)、八神。]


 次、生、風神、名、志那都比古神。[此神、名、以、音。]


 次、生、木神、名、久久能智神。[此神、名、以、音。]


 次、生、山神、名、大山[上]津見神。


 次、生、野神、名、鹿屋野比売神。

 (また)、名、謂、野椎神。


 [自、志那都比古神、至、野椎、(合わせて)、四神。]


 (この)、大山津見神、野椎神、二神、(によって)、山、野、持、別、而、生、神、名、天之狭土神。[訓、「土」、云、「豆知(づち)」。下、(ならう)(これ)。]

 次、国之狭土神。


 次、天之狭霧神。

 次、国之狭霧神。


 次、天之闇戸神。

 次、国之闇戸神。


 次、大戸惑子神。[訓、「惑」、云、「麻刀比(まとい)」。下、(ならう)(これ)。]

 次、大戸惑女神。


 [自、天之狭土神、至、大戸惑女神、(合わせて)、八神、也。]


 次、生、神、名、鳥之石楠船神。

 (また)、名、謂、天鳥船神。


 次、生、大宜都比売神。[此神、名、以、音。]


 次、生、火之夜芸速男神。[「夜芸」、二字、以、音。]

 (また)、名、謂、火之炫毘古神。

 亦、名、謂、火之迦具土神。[「加具」、二字、以、音。]


 (よって)、生、(この)子、美蕃登(御 女陰)[此三字、以、音。]、(られる)、炙、而、病、臥在。


 多具理(嘔吐物)邇[此四字、以、音。]、生、神、名、金山毘古神。[訓、「金」、云、「迦那(かな)」。下、(ならう)(これ)。]

 次、金山毘売神。


 次、於、(排泄物)、成、神、名、波邇夜須毘古神。[此神、名、以、音。]

 次、波邇夜須毘売神。[此神、名、(また)、以、音。]


 次、於、尿、成、神、名、彌都波能売神。

 次、和久産巣日神。(この)神之子、謂、豊宇気毘売神。[自、「宇」、以下、四字、以、音。]


 (ゆえに)伊邪那美(イザナミ)神、()(よって)、生、火神、(ついに)、神避、(いらっしゃる)、也。


 [自、天鳥船、至、豊宇気毘売神、(合わせて)、八神。]


 (大体)伊邪那岐(イザナギ)伊邪那美(イザナミ)、二神、共、所生、嶋、一十四嶋、神、三十五神。

 [

 (これ)伊邪那美(イザナミ)神、未、神避、以前、所生。

 (ただ)意能碁呂(オノコロ)嶋、()、非、所生。

 (また)姪子(ひるこ)()、淡嶋、不入、子之例、也。

 ]


 (ゆえに)(しかして)伊邪那岐(イザナギ)命、詔、(この)

「愛、我、那邇()(妻の女神)(いのち)、乎[『那邇』、二字、以、音。下、(ならう)(これ)。]、(思う)(かえる)、子之一木、乎?!」


 乃、匍匐(ほふく)、御枕、方、匍匐(ほふく)、御足、方、而、(泣いた)時、於、御涙、所、成、神、坐、香山之畝尾、木、(もと)、名、泣沢女神。


 (ゆえに)(その)、所、神避、()伊邪那美(イザナミ)神、()、葬、出雲国、()、伯伎国、()、比婆之山、也。


 (において)(ここ)伊邪那岐(イザナギ)命、抜、所、御(腰に付けている)()、十拳剣、斬、(その)子、迦具土神()()


 (しかして)(付着)(その)御刀(先端)()血、走、就、湯津石村(清浄な神聖な岩の群れ)、所、成、神、名、石析神。

 次、根析神。

 次、石筒之男神。

 [三神。]


 次、(付着)、御刀、(根本)、血、(また)、走、就、湯津石村(清浄な神聖な岩の群れ)、所、成、神、名、甕速日神。

 次、樋速日神。

 次、建御雷之男神。(また)、名、建布都神[「布都」、二字、以、音。下、(ならう)(これ)。]。(また)、名、豊布都神。

 [三神。]


 次、集、御刀之手上、血、(より)、手、(また)、漏出、所、成、神、名[訓、「漏」、云、「久伎(クキ)。]、闇淤加美神。[「淤」、以下、三字、以、音。下、(ならう)(これ)。]

 次、闇御津羽神。


 上、(くだん)(より)、石析神、以下、闇御津羽神、以前、(合わせて)、八神、()(よって)、御刀、所生之神者、也。


 所、殺、迦具土神、()(において)、頭、所、成、神、名、正鹿山[上]津見神。

 次、(において)、胸、所、成、神、名、淤縢山津見神。[「淤縢」、二字、以、音。]

 次、(において)、腹、所、成、神、名、奥山[上]津見神。

 次、(において)(陰部)、所、成、神、名、闇山津見神。

 次、(において)、左手、所、成、神、名、志芸山津見神。[「志芸」、二字、以、音。]

 次、(において)、右手、所、成、神、名、羽山津見神。

 次、(において)、左足、所、成、神、名、原山津見神。

 次、(において)、右足、所、成、神、名、戸山津見神。


 [自(より)、正鹿山津見神、至、戸山津見神、(合わせて)、八神。]


 (ゆえに)、所、斬、()、刀、名、謂、天之尾羽張。

 (また)、名、謂、伊都之尾羽張[「伊都」、二字、以、音。]





 ここで、諸々の天の神々は、イザナギとイザナミという二柱の神々に「この漂っている国を修理して固めてください」と話して、天沼矛を与えて、言葉によって依頼した。


 そのため、(イザナギとイザナミという)二柱の神々が、天浮橋に立って、その天沼矛をさし下ろして、かきまわせば、「コオロ コオロ」と鳴り、(天沼矛を)引き上げた時に、(おの)ずと、その天沼矛の末端から垂れて落ちた塩が累積して島に成った。

 これが、オノコロ島である。

 (表音ではなく表意で漢字を「オノコロ」に当てはめるならば、「自ずと転がる」という意味で、「自転」であろうか?)


 (イザナギとイザナミは、)そのオノコロ島に、天から降臨して、天之御柱を見立てた。

 また、八尋殿を見立てた。

 (イザナギは、)ここで、その妻の女神であるイザナミに質問して話した。

「あなたイザナミの(仮の)身は、どのように成っていますか?」


 (イザナミは、)答えて話した。

「私イザナミの(仮の)身には、成熟しているにもかかわらず、結合していない所(、溝と穴、女性器)が一箇所、在ります」


 すると、イザナギは話した。

「私イザナギの(仮の)身には、成熟しているにもかかわらず、余剰な所(、突起、棒、男性器)が一箇所、在ります。

そのため、この私イザナギの(仮の)身の余剰な所(、男性器)を、あなたイザナミの(仮の)身の結合していない所(、女性器)に、さして塞いで、国土を生んでは、どうでしょうか?」


 イザナミは答えて話した。

「そうしましょう。()いですね」


 すると、イザナギは話した。

「そうであるならば、私イザナギと、あなたイザナミは、(それぞれ、)この天之御柱を回って出会ってから、(八尋殿で、)まぐわいましょう(。出会いを再現してから、性交しましょう)」


 このように言って約束すると、イザナギは話した。

「あなたイザナミは、右から(左へ左回りで反時計回りで)回って出会ってください。

私イザナギは、左から(右へ右回りで時計回りで)回って出会うつもりです」


 前述のように約束し終わって回った時に、イザナミが先に話してしまった。

「ああっ! 何と愛すべき男であろう!」


 遅れてイザナギが話してしまった。

「ああっ! 何と愛すべき乙女であろう!」


 各々、言い終わった後で、(イザナギは、)その妻の女神(である、イザナミ)に告げて話した。

「女の人が(男よりも)先に話したのは良くなかった」

 (男性を一と見なすならば女性は二であるため、男性が先行し女性が後から慎重に来るのは正しいので、イザナギは「女の人が男よりも先に話したのは良くなかった」と話したのであり、女性差別ではない。)


 そうではあっても、八尋殿で性交して生んだ子は、まず、水蛭子(ひるこ)である。

 この子(、水蛭子)は、(アシ)による船に入れられてしまって、流されてしまった。

 (

 蛭、ヒルは、血を吸う。

 血は労苦の象徴である。

 水蛭子、ヒルコは身代わりと成って労苦する者の象徴であろうか?

 御子である水蛭子は、父である神と同一視できるので、「子の数に入れない」のであろうか?

 )


 次に生んだのは、淡島である。

 これ(、淡島)もまた、子の数には入れない。

 (

 淡島は謎の島である。

 淡島は、黄泉、根の国、幽世、霊の冥界であろうか? それとも、水蛭子による世界なのであろうか?

 )


 ここで、(イザナギとイザナミという)二柱の神々は相談して話した。

「今、私達(、イザナギとイザナミ)が生んだ子達は良くなかった。

天の神々の所に帰って(天の神々に)話すのが良いだろう」


 こうして、(イザナギとイザナミは、)共に(天の神々の所へ)参上して、天の神々からの助言を請い願った。

 そして、天の神々からの助言によって、占って、このような話を(イザナギとイザナミは)された。

「女が(男よりも)先に話したせいで(子達が)良くなかったのである。

また、(オノコロ島に)降臨して帰還して、過ちを改め、(イザナギがイザナミよりも先に)話し(てから性交し)なさい」

 (男性を一と見なすならば女性は二であるため、男性が先行し女性が後から慎重に来るのは正しいので、「女が男よりも先に話したせいで子達が良くなかったのである」という話をされたのであり、女性差別ではない。)


 このため、(オノコロ島に)降臨して帰って、再び、その天之御柱を回って出会って、前のように(、ただし、イザナギがイザナミよりも先に話)した。

 ここで、イザナギは先に話した。

「ああっ! 何と愛すべき乙女であろう!」


 遅れて、妻の女神であるイザナミは話した。

「ああっ! 何と愛すべき男であろう!」


 このように話し終わってから性交して生んだ子が、まず、淡道之穂之狭別島である。(淡道之穂之狭別島とは淡路島の事である、と言われている。)


 次に生んだのは、伊予の二名島である。(伊予の二名島とは四国の事のようである。)

 この島は、身は一つであるが、面、国は四つ有る。

 面、国ごとに名前が有る。

 そして、伊予という国は、愛比売(えひめ)の国である。(伊予という国は愛媛県の事のようである。)

 讃岐という国は、飯依比古(ひこ)の国である、と言う。(讃岐という国は香川県の事のようである。)

 粟という国は、大宜都(おおげつ)比売(ひめ)の国である、と言う。(粟という国は徳島県の事のようである。)

 土左という国は、建依別の国である、と言う。(土左という国は、土佐、高知県の事のようである。)


 次に生んだのは、隠伎の三子島である。

 またの名は、天之忍許呂別(の島々)である。


 次に生んだのは、筑紫島である。(筑紫島とは九州の事のようである。)

 この島もまた、身は一つであるが、面、国は四つ有る。

 面、国ごとに名前が有る。

 そして、筑紫という国は、白日別の国である、と言う。(筑紫という国は福岡県の事のようである。)

 豊という国は、豊日別の国である、と言う。(豊という国は大分県の事のようである。)

 肥という国は、建日向日豊久士比泥別の国である、と言う。

 熊曽(くまそ)という国は、建日別の国である、と言う。


 次に生んだのは、伊伎島である。(伊伎島とは長崎県の近くの壱岐島の事のようである。)

 またの名は、天比登都柱(の島)である、と言う。


 次に生んだのは、津島である。(津島とは対馬の事のようである。)

 またの名は、天之狭手依比売(の島)である、と言う。


 次に生んだのは、佐度島である。(佐度島とは佐渡ヶ島の事のようである。)


 次に生んだのは、大倭豊秋津島である。(大倭豊秋津島とは本州の事のようである。)

 またの名は、天御虚空豊秋津根別(の島)である、と言う。


 これらの八つの島々は、先に生まれたので、(日本を)「大八島国」と言うのである。


 その後、オノコロ島へ帰還している時に生んだのは、吉備の児島である。(吉備の児島とは古代は島であった岡山県の児島半島の事のようである。)

 またの名は、建日方別(の島)である、と言う。


 次に生んだのは、小豆島である。(小豆島とは香川県の近くの小豆島の事のようである。)

 またの名は、大野手比売(ひめ)(の島)である、と言う。


 次に生んだのは、大島である。(大島は諸説、有ります。)

 またの名は、大多麻流別(の島)である、と言う。


 次に生んだのは、女島である。(女島とは大分県の近くの姫島の事である、と言われている。)

 またの名は、天一根(の島)である、と言う。


 次に生んだのは、知訶島である。(知訶島とは長崎県の近くの五島列島の事のようである。)

 またの名は、天之忍男(の島)である、と言う。


 次に生んだのは、両児島である。(両児島とは長崎県の近くの男島と女島の事である、と言われている。)

 またの名は、天両屋(の島々)である、と言う。


 (イザナギとイザナミは、)国を生み終わると、更に、神を生んだ。


 こうして生んだ神の名前は、大事忍男神である。


 次に生んだのは、石土毘古神である。


 次に生んだのは、石巣比売神である。


 次に生んだのは、大戸日別神である。


 次に生んだのは、天之吹男神である。


 次に生んだのは、大屋毘古神である。


 次に生んだのは、風木津別之忍男神である。


 次に生んだ海神の名前は、大綿津見神である。


 次に生んだ水戸(河口などの水の出入口)の神の名前は、速秋津日子神である。

 次に生んだのは、妻の女神である速秋津比売神である。


 これらの速秋津日子と速秋津比売という二柱の神々が河と海を分担して持って生んだ神の名前は、まず、沫那芸神である。

 次に生んだのは、沫那美神である。


 次に、頬那芸神である。

 次に、頬那美神である。


 次に、天之水分神である。

 次に、国之水分神である。


 次に、天之久比奢母智神である。

 次に、国之久比奢母智神である。


 次に生んだ風神の名前は、志那都比古神である。


 次に生んだ木の神の名前は、久久能智神である。


 次に生んだ山の神の名前は、大山津見神である。


 次に生んだ野の神の名前は、鹿屋野比売神である。

 またの名は、野椎神と言う。


 これらの大山津見神と野椎神という二柱の神々が山と野を分担して持って生んだ神の名前は、まず、天之狭土神である。

 次に、国之狭土神である。


 次に、天之狭霧神である。

 次に、国之狭霧神である。


 次に、天之闇戸神である。

 次に、国之闇戸神である。


 次に、大戸惑子神である。

 次に、大戸惑女神である。


 次に生んだ神の名前は、鳥之石楠船神である。

 またの名は、天鳥船神と言う。


 次に生んだのは、大宜都比売神である。


 次に生んだのは、火之夜芸速男神である。

 またの名は、火之炫毘古神と言う。

 またの名は、火之迦具土神と言う。


 (イザナミは、)この子(、火之迦具土)を生んだために、(仮の身の)女性器が焼かれてしまって、(仮の身が)病気に成ってしまって、(とこ)()せってしまった。


 (イザナミが、口という穴からの)嘔吐物に生んだ神の名前は、まず、金山毘古神である。

 次に、金山毘売神である。


 次に、(イザナミの仮の身の、肛門という穴からの)排泄物に現れた神の名前は、まず、波邇夜須毘古神である。

 次に、波邇夜須毘売神である。


 次に、(イザナミの仮の身の、尿道口という穴からの)尿に現れた神の名前は、まず、彌都波能売神である。

 次に、和久産巣日神である。この神の子は、豊宇気毘売神と言う。


 (イザナミの嘔吐物や排泄物にも神が現れたのは、神には清浄な物しか存在しないからであろうか?)


 イザナミは、(火之迦具土という)火の神を生んだために、遂に、(仮の身が)死んでしまった。


 大体、イザナギとイザナミという二柱の神々が共に生んだ島は十四の島々、神々は三十五柱の神々である。

 (

 島々と神々の合計は四十九である。

 四十九は七の二乗である。

 )


 さて、イザナギは、このように話した。

「愛する、私の、あなた、妻の女神(である、イザナミ)の命を、(火之迦具土という)子の一柱の神と()える羽目に成ってしまうと思うであろうか? いいえ!」


 すると、イザナギが、(イザナミの死体の)枕の(ほう)へ匍匐前進したり、足の(ほう)へ匍匐前進したりして泣いた時に、(イザナギの)涙の所に現れた、「香山」、「天香久山(あまのかぐやま)」の「畝尾」、「小高い場所」の木の根本にいらっしゃる神の名前は、泣沢女神である。


 そして、その(仮の身が)死んでしまったイザナミは、出雲という国と伯伎という国の国境の比婆という山に埋葬された。


 (イザナミが、火之迦具土という火の神を生んだために、仮の身が死んでしまうのは、古い肉体を燃やす火の中から新たに生まれるフェニックスの神話を連想させる。)


 ここで、イザナギは、腰に付けていた「十拳剣」、「拳、十個分の長さの剣」を抜いて、その子、火之迦具土神の首を斬ってしまった。


 そうして、その十拳剣の先端に付着した血が、清浄な神聖な岩の群れに飛んで付着して、現れた神の名前は、まず、石析神である。

 次に、根析神である。

 次に、石筒之男神である。


 次に、十拳剣の根本に付着した血もまた、清浄な神聖な岩の群れに飛んで付着して、現れた神の名前は、まず、甕速日神である。

 次に、樋速日神である。

 次に、建御雷之男神である。またの名は、建布都神である。またの名は、豊布都神である。


 次に、十拳剣を持つ手の上に集まった血が手の指の間から漏れ出して、現れた神の名前は、まず、闇淤加美神である。

 次に、闇御津羽神である。


 前述の、石析神から以降、闇御津羽神、以前の合わせて八柱の神々は、十拳剣によって生まれた神々である。


 殺されてしまった火之迦具土神の、頭に現れた神の名前は、正鹿山津見神である。

 次に、胸に現れた神の名前は、淤縢山津見神である。

 次に、腹に現れた神の名前は、奥山津見神である。

 次に、性器に現れた神の名前は、闇山津見神である。

 次に、左手に現れた神の名前は、志芸山津見神である。

 次に、右手に現れた神の名前は、羽山津見神である。

 次に、左足に現れた神の名前は、原山津見神である。

 次に、右足に現れた神の名前は、戸山津見神である。


 こうして、(火之迦具土を)斬った刀剣(、十拳剣である神)の名前は、天之尾羽張である。

 またの名は、伊都之尾羽張と言う。


 (

 火之迦具土が死ぬ代わりに神々が現れるのは、身代わりを象徴している。

 身代わりの数は九である。

 十拳剣は十という数の象徴である。

 )

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