記者会見場1
記者会見場。
照明が眩しく、熱気が漂う会場に、無数のフラッシュが降り注ぐ。最前列には新聞社、テレビ局、科学雑誌の記者たちが詰めかけ、誰もが息をのんで舞台の上を見つめている。
壇上には黒い台座の上に銀色のスピーカーと巨大なディスプレイが設置されている。そのスクリーンには、白髪の老人の顔が映し出されていた。
彼の名は、天野博士。
かつて世界的な神経科学者として知られた人物だ。しかし、三年前、天野博士は公式には心臓発作で死亡していたはずだった。
司会の女性が声を張り上げる。
「それでは、発表に移らせていただきます。まず、こちらの映像をご覧ください。」
スクリーンに切り替わる映像。
天野博士が研究室で脳の断層画像を前に議論している姿が映され、次の瞬間、スピーカーから合成された電子音声が流れる。
「皆さん、初めまして。私は天野信吾です。」
声はかすかに機械的だが、確かに本人のものだった。会場にざわめきが広がる。
博士の映像が薄く笑みを浮かべる。
「おそらく、皆さんの多くは信じられないことでしょう。しかし、これが現実です。私は今、このコンピュータシステム内に存在しています。私の脳は、完全にデジタル化されました。記憶、思考、感情——すべてが。」
一瞬の沈黙の後、誰かが息を呑む音が聞こえた。博士の声が続く。
「人間の脳内情報の完全なコピー——それが、このプロジェクトの成果です。私たちは、死を超えることができるのです。」
記者の一人が手を挙げ、声を張り上げた。
「博士、それは『不死』という意味ですか? もしデジタルコピーが可能なら、人は永遠に生きられると?」
博士の顔が一瞬曇ったように見えたが、すぐに淡い笑みを取り戻した。
「確かに、肉体は滅びます。しかし、意識は保存され、再び動き出すことができる——理論上は、永遠に。私たちはその最初の一歩を踏み出したのです。」
場内は騒然とし、誰もが言葉を失った。
そのとき、スクリーンの奥で何かが微かにノイズを発し、博士の表情がわずかに歪んだ。
「……ただし、完璧にはまだ届いていない部分もあります。記憶の再構築には微細な揺らぎがある。私の中にある『私』は、果たして本当に私なのか——その問いは、皆さんに託したい。」
そして、画面がフェードアウトし、会場は再び暗闇に包まれた。




