いつまでも君はかわいい
初めて君を意識したのは幼稚園の頃
君は大型犬にじゃれつかれてた
まるで同じ生き物みたいにひとつになって
キャッキャとはしゃいでいる君を見て
僕は思った
かわいい
小学校で同じクラスになって
男子と女子があまり会話をしなくなって
せっせと漫画を描いている僕の横で
せっせと描いている君の漫画を見て
僕は気づいた
君はかわいい
恋を知る季節になって
僕は恋する相手を探すまでもなく
お弁当を忘れて泣いている君に
タコさんウィンナーを恵んであげたら
意外なぐらい笑ってた
君がかわいい
同じ屋根の下で暮らしはじめて
張り切る君の腕まくり
重たい家具を鼻の穴いっぱいに広げて
持ち上げようとして諦めて
僕に一緒に持たせてくれた
君がかわいい
夫婦茶碗をそれぞれ前に置いて
懐かしい昔話に花を咲かせながら
来年は知らない土地を旅行しようねと
まだまだ人生を楽しむつもり一杯の君を見て
僕はまた思った
君ってかわいい
歩く姿が前屈みになって
たまに転んで膝を打つ
抱いて起こすと冗談みたいに
すりむいちゃったぁ
甘えた声で報告する
君ってかわいい
僕より先に逝ってしまった
遺影の中の君が笑う
「癌になっちゃったの」冗談みたいに
クスクスクスと笑ってる
遺影の中の
君はかわいい
蓮の葉の上で君を見つけた
仏様みたいに肘をついて横臥しながら
こちらを振り向き僕を見つけて
いつものようにあかるく笑う
いつまでも
いつまでも
君はかわいい