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背乗り

深い森の中、何もない空間に突然、ひび割れたように黒い影が広がっていく。

そして、その黒い影から出てきたものは球体の形をしたエメラルドのように淡く輝く物体。


『生命を維持できる環境を確認。周囲に生物がいないことを確認、探索モードに移行』


抑揚のない機械音が響き、球体自体が徐々に透明化していき、完全に周囲の風景に溶け込む。


この物体の正体は、滅びた地球人類の世界から赤子を載せてきた自立型支援機器。

自立型支援機器は光学迷彩で透明化したまま、周辺をスキャンしながら高速で移動する。


『非効率を検知、上空へ移動』


森の中での移動をやめ、ある程度の高度まで上昇し森全体をスキャンし始める。


『未確認の生物を確認。。。照合中。。。』

小鬼(ゴブリン)狗頭鬼(コボルト)粘液生命体(スライム)食人鬼(オーガ)などの情報に類似する生物を確認』


『照合中。。。ファンタジー要素を確認。超能力を保持する生物の存在確率、25%上方修正』

『さらなる探索を続行』


自立型支援機器は森全体を隈なくスキャンする。

『詳細スキャンに移行。小型探査機を展開。』


球体の側面にうろこ状の模様があり、そこが鱗が経つように変化する、すると一ミリにもみたない筒状の物体が300機以上が森に展開していく。


『詳細情報を収集中。。。』

おおよそ30分ぐらい経つと小型機が戻ってきて、機体の側面に格納される。


『詳細情報を照合中。。。未確認の植物を確認。優先順位を照合。』


『現状での危険度低。調査の必要性を照合。調査の必要性あり。再度優先度を照合。。。マスターの生存拠点構築を優先』


自立型支援機器は成層圏まで高度を上昇させ、惑星全体をスキャンし始める。


『広域探査レベルを上昇。広域スキャンモードへ移行。再度小型機を展開』


一ミリにもみたない筒状の物体が300機以上が再度展開される。ただ、今度は本体である自立型支援機器と同じ高度を保ちつつ、地上をスキャンし始める。


スキャンが終わったのか小型機が戻ってきて、機体の側面に格納される。


『情報を照合中。。。人間に類似した人型の生物を確認。。。文明レベルを照合。。。タイプ0.45と推定。。。』

『さらなる情報収集へ移行』


その後も自立型支援機器は縦横無尽に新たな世界で初めての惑星を飛び回る。

約3日飛び回り、同様のスキャンをありとあらゆる場所で行った。町、城、村、言語、書類、食べ物、森、人型生物、その他動植物。


『マスターの生体休眠システムの期限、残り時間24時間05分1秒』

『マスターの生存拠点構築の最適化を実施中。。。』

『実施中。。。』

『確定。』


自立型支援機器はとある屋敷の上空に来ていた。

人類史における中世期のヨーロッパ貴族を思わせる立派なタウンハウス。屋敷の周りは綺麗に整備された庭園となっており、景観が美しく保たれている。


自立型支援機器は屋敷のとある一角の窓際に近づく。

窓を隔てた先にはベビーベットに寝ている赤子がいる。


自立型支援機器は再度、高度を上げ屋敷の上空に退避する。


『容姿を照合中。。。差異レベルが許容範囲であることを確認。』

隠密(ステルス)レベルを上昇。』

『音声オフ』


自立型支援機器は球体は窓に際に戻り、窓を一枚を音もなく分解する。

そして、寝ている赤子をも分解してしまう。


自立型支援機器が赤子がいたところに移動し、動きを止める。

すると、自立型支援機器が二つに割れるように左右に分離し、その中から現れたのは別の赤子。


自立型支援機器は分解した赤子の位置に、地球人類の生き残りである赤子を置く。


自立型支援機器は最後の仕上げに分解した窓を復元して証拠をすべて隠蔽する。

その後、隠密(ステルス)状態を維持したまま、”赤子がいる”部屋の天井の隅に移動して待機状態へと移行した。


背乗り(はいのり)

地球人類の生き残りである赤子を育てる拠点して自立型支援機器が選び取った手段は、非常に簡単なものだ。


裕福な家庭で生まれたばかりの赤子と地球人類の赤子の入れ替え。

背乗りをされた家族からすれば、その事実を知れば泡を食うであろうが、その事実に気づかなければ問題ない。


それに元いた赤子はすでにこの世に存在しない。

だからと言って悪いことばかりではない。地球人類の生き残りである赤子は将来は容姿端麗で頭脳明晰であることは間違いない。

ただ、それが背乗りをされた家族として良いことなのかは分からない。


なぜなら、これから成長する赤子は地球人類の存続のことを第一に考えるように”作られて”いる。


ここはイロード連合王国。スペンサー伯爵領。現当主であるエマルシー・シュナイダー=スペンサー伯爵の領主館。

そして、今、この異世界に地球人類が産声を上げた。

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