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「なんっぞこれえええええうっひゃあ!!」



 癒し系……じゃない。

 いや失敬。

 

 はしたないことこの上ないのは承知だが、思わず手をひっこめて床にこぼしてしまった事を謝罪します。



「何だこれ、水が茶色い!? え、まさかこれ泥水なの!?」


 脇で固まる女子工員の顔を見ると、哀しそうな、申し訳なさそうな、そんな目で俺をじっと見上げている。


 てか今思ったけど、女子工員って、略すとJKだよな……年齢もビンゴだし。

 これからこの子らの事をJKと呼ぶ事にしよう。



「あ、ご、ごめん、ついビジュアルに押されて......変な意味じゃないから、ほんと」


 咳ばらいをして再度、缶に口を付けてみたが、だめだ。顔を背けて思い切り壁に吹き出してしまった。


「まっっっっ......ドマックスまずいぃ!? ヴぉええええええええええ!! けほっこほっ」


 

 わかった。

 これ、錆の水だよね?

 タンクの内部が錆びて腐ってるんだ、サイアク!!



 こんな水を日常的に飲んでるのか、このうら若き乙女らは......!?



「も、申し訳ない」



 口を拭きながら、落涙を堪える。


 なんだ、なんだこの船は。飲料水の確保なんて基本中の基本だろ、コンプレックス、あ、間違えた、コンプライアンスのカケラもないわね!!


 ハルキ爆おこ。



「ごほ、ごほ。これはタンクの改修の必要があるな」



 なんとかその場を収め、JKの背中を押しながら製缶ラインへ戻る途中、長身の若い男性工員が空缶を詰めた木箱を担いで向かいからやってきた。



 するといきなり、その缶たちが青白く、または緑色に光り、文字が浮かび上がった。



『切る  貼る   繋ぐ』



「……!?」


 俺は思わず立ち止まる。


 目が見開くような、観てはいけないものが見えてしまったあの感覚。



 息が止まり、鳥肌がざわめく。


 俺の様子を見てギョッとした様子で、一礼しながら足早にすれ違っていく男性工員。



「ど、どうしたんですか......? 雑務長どの……?」


 JKの問いかけに、すぐに反応できなかった。


「い、いや、なんもないよ」



 釈然としないまま、彼女を持ち場に戻してフレアに報告し、爪叩き(蟹の脚の甲羅を割る作業)をしている作業甲板の見回りに行った。



 デッキへ出ると、船は低空飛行していた。

 昨日見た時は二百メートル以上はあろうかという高度を飛んでいたのに、今は海面までおよそ四、五メートルという位置にホバリングしており、グモアがひっきりなしに、蟹を運んでは下ろし、また網を上げにトンボ返りを繰り返していて活気に満ちていた。まるで巣に三つを運ぶミツバチみたいだ。


 そして水揚げされた蟹を大勢の男性工員らが網から外して金属製の大きな籠へ放り込み、煮熟槽まで台車で運んでいた。


 煮熟槽ではクレーンで籠ごと吊り上げ、そのまま沸騰する湯の中に漬けて煮込み、それをまたクレーンで吊り上げて海中に浸して冷ます。


 そうしてから、爪叩きだ。

 活気に溢れていて、続々と蟹が水揚げされては工場に流れていく様は、なんだかとても気持ちが満たされる気がする。




『ケンカバカリガニ・推定一・六トン』



 ――やっぱり。



 蟹の掛かった網を見ると、じわーッと情報が浮かんでくる。


 なんか、スキャン機能というか、画像検索みたいなスキルなんだな。

 スカウターみたいでテンション上がるぜ。


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