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第33話 漆黒のダークネス

「ほら見ろ! あれが漆黒のダークネスだ!」


「見ろって言われてもさ、アイマスクしてるから見えねえんだわ。わかりやすく説明してくんない?」


「体型は人型だけど身長が二、三メートルあってかなりでかい。全身の防御を真っ黒な鎧で固めている。大きな両手剣を右手だけで持ち、左手には巨大な盾を持っている。これで良いか?」


 なるほどな。敵の姿はだいたい想像はついた。でかくてマッチョな脳筋タイプか。そういう奴はだいたい遠距離攻撃に弱い。この前みたいに爆発スキルでワンパンできそうだな。 


「漆黒のダークネス! この僕が相手だ!」


 おっと、この声はリュートだ。この街で最強の冒険者で今まで数々の死線をくぐり抜けてきたあいつなら勝てるかもしれないな。本当は俺が格好良く決めたかったが、ここは手柄を譲ってやるとしよう。さあ、街の皆を救ってくれ!


「魔王軍幹部の俺様に勝負を挑むとは大した度胸だ」


 やっぱり魔王軍の幹部だったか。俺のせいでこの街が目をつけられちゃったみたいだ。本当に申し訳ないね。そろそろ引っ越しも視野に入れよう。


「いざ尋常に勝負だ!」


「一瞬でケリをつけてやるよ!」


 剣と剣がぶつかり合い巨大な金属音が鳴り響く。


「人間にしてはやるじゃないか」 


「この街のために負けるわけにはいかないんでね」


「それならばこの技ならどうかな? アイスブレード!」


 お前も氷属性使いなのかよ。名前と見た目からして闇属性使いなのに。魔王軍は氷属性縛りでもしてるのか?


「ぐっ……なかなか重い一撃をくれるじゃないか。こっちもとっておきの技を使わせてもらうよ。ブレイブソード!」


 キンキンキンと、何度も剣のぶつかり合う音が響く。その度に物凄い風が吹き、戦闘の凄まじさが伝わってくる。


「ハァハァハァ……つ、強い」


「もうバテたのか? そろそろ終わらせてやろう。まあ暇つぶしにはなったよ」


「ぐふっ……」


 肉が斬れる鈍い音が聞こえる。その直後、リュートが一言も発さなくなった。


「大変です! リュートさんが……」 


「おい、ジェシカ! 何があったか説明しろ!」


「血まみれになって倒れちゃいました。多分もう死んで……」


「くそっ!」


 俺は地面に拳を叩きつけた。

 リュートは俺の数少ない友達だった。性格の悪さから嫌われているこの俺に分け隔てなく接してくれた。そんなあいつを殺されたと知り、怒り、悲しみ、言葉では表せない程の感情が込み上がってきた。


「漆黒のダークネス! お前だけは絶対にぶっ殺す!」


「こ、こんなに感情的になっている師匠は初めてです!」


 俺はアイマスクを外してダークネスを睨みつける。猛烈な爆風が奴を襲う。とてつもなく怒っているせいだろうか、心做しか普段よりも爆発が激しくなっているような気がする。


「どうだ、やったか?」


「ひぇぇ〜! あいつピンピンしてやがりますよ!」


 魔王軍幹部だから耐久力が段違いなのだろうか。だが、それでも関係無い。何度でも爆撃してやれば良いだけのことだ。


「喰らえ! 必殺十連爆撃!」


 ダークネスの体が何度も何度も爆発する。これだけの攻撃を浴びせれば流石に生き残れまい。


「全然効いてないっぽいですよ、師匠!」


「は!? どうして?」


 ダメージを与えるどころか甲冑に傷すらつけられていない。耐久力が高いとかじゃないのか? 何かカラクリがあるのだろうか。


「ふっふっふ、お前がダンテ・ウィリアムズか。煉獄のインフェルノを倒したとかいう」

 

「ああ、そうだ!」


「お前は驚いているんじゃないか? 何故、お得意の爆発スキルが通用しないのか」


 あっ、これは敵が勝手に説明してくれる流れだ。あんなクズの声は聞きたくも無いが、少しでも情報を得るためにしっかりと耳を傾けておこう。


「俺様が着ているのは希少な魔鉱石で作られた『対Sランクスキルアーマー』。これを着ている限りSランクスキルは効かないんだよ。煉獄のインフェルノがSランクスキルでやられたと聞いたからな、全財産を叩いてこの鎧を購入したのだよ」


 その鎧、ちゃんと金出して買ったんだな。魔族にも通貨的な物があるのだろうか。

 それにしても、こいつはかなり用意周到な野郎だな。俺のことをしっかりと分析して対策を立ててやがる。爆発スキルが通らないんじゃどうしようもないぞ。

 

「師匠、どうにかしてください!」


「リュートさんが倒れた今、頼れるのはあなただけです、ダンテさん! その悪知恵を生かして打開策を考えてください!」


「頑張れ、ダンテ! せっかく転生したばかりなのに、また死ぬのは御免だぜ!」


 皆、こんな俺のことを頼りにしてくれている。ここは退くわけにはいかないな。何か策を考えないと。あいつには爆発スキルが効かない……爆発……爆発……あっ、良い事を思いついた! ピンチの時は頭の回転が速くなる、それがダンテ・ウィリアムズという人間だ。


「お前達! 今から俺の指示通りに動いてくれ!」


 三人を手招きして俺の近くに引き寄せる。そして敵に聞こえないように耳打ちで指示を伝えた。


「了解!」


 俺の意図を理解した三人は走ってこの場から離脱した。

 さてと、これで布石は整った。後は俺の体がどこまで持ってくれるかだな。体力に自信があるわけではないが根性出していくぜ。こういう時のために普段はゴロゴロして英気を養っていたんだからな。


「改めて宣言するぜ! 漆黒のダークネス、お前は俺がぶっ倒す!」

 


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