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追放された侯爵令嬢と行く冒険者生活  作者: たけすぃ
君のいない道を一人で歩く、ただし君と

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貧乏子爵家次男は瞳を探す4


 *


 シン・ロングダガーさんですよね?

 そう言ったのは、昨日出会った屑拾いの冒険者エッズだった。


 エッズはこちらの返事も待たずに語り出した。

 馬車の修理が長引きそうなので自分達でも出来る依頼を受けて隣町まで行くのだそうだ。

 ご多分に漏れず馬車の護衛に参加する事で足を確保したらしい。


 同じく隣町が目的地である俺が言えた義理ではないが、隣町ならわざわざこんな立派な商隊でなくてもと思ったが、どうも護衛の冒険者が知り合いらしい。

 それにしても昨日は死にかけていたのに次の日には新しい依頼を受けるとは中々に冒険者しているじゃないか、やはり屑拾いは気合いが違う。


「知り合いなのか? エッズ」


 そう言ったのは顎髭のジョンだった。

 なるほどエッズの知り合いとはジョンだったかと、声音で両者が知り合いであると察した俺は半歩下がってエッズとジョンの間を空ける。


「はい、ジョンさん。昨日死にかけたのを助けて貰いました」


 ちなみに昨日あったばかりの人間を知り合いだと言うのは割と冒険者的な感覚だ。

 初対面で自分の命を預ける場合もあるが故の感覚なのだろう。


 昨日はありがとうございましたと言うエッズに俺は曖昧な身振りを返す。

 俺を護衛に加えるのに難色を示していたジョンがエッズの知り合いなら、という雰囲気になっている。

 だがここで俺がシン・ロングダガーではないと言い出したらややこしい事になるだろう。


 俺は、俺が俺であると肯定できない。

 そんな事をしたらエリカが夫から指輪を贈って貰えなかった女という汚名を背負うことになりかねない。


 俺が単独で動いている事からそこまで辿り着くような暇な人間がそうそういるとは思えないが、可能性が出来るという時点で駄目だ。

 いやだがしかし、隣町までの足が……というか何故にエッズは仮面の俺をシン・ロングダガーだと?


 嗚呼、いやもう、うん、どうとでもなれ。

 最悪は隣町まで走ろう。


「エッズ君」


「はい」


「俺はシン・ロングダガーじゃない」


「はい?」


 エッズが大きく首を傾げ、ジョンが何事かと眉を顰める。


「俺はジン・ゴールデンダガーだ」


 大真面目に言ったらエッズが笑い出した。

 何故だ。


「おい、大丈夫なのかエッズ」


 何が大丈夫なのかは無視するとして、ジョンが目に涙を浮かべて笑うエッズに問う。


「いえジョンさん、大丈夫ですよ。良く事情は分かりませんけど、この人はシン・ロングダガーさんでジョンさんは知らないと思いますけど、今この街で一番有名な冒険者です」


「いや、俺はジン・ゴールデンダガー」


 俺の言葉にエッズが爆笑する。

 俺にはお前の笑いのツボが分からん。


 腹を抱えながら、そんなあからさまにロングダガーなのに、とはいったいどういう事だ。

 俺が爆笑するエッズを訝しんでいると、面倒になったのかジョンが呆れ気味に口を開いた。


「まぁ良い、護衛に加わりたいって言うのならとりあえずギルド証を見せやが……れ」


 そう言ったジョンは、何故か口をポカンと開けて俺の顔をまじまじと見てきた。

 なんだ? これはアレか? 冒険者的には仮面越しでも男と見つめ合う趣味はないとか軽めに煽った方が良いのか?


「ロングダガーだと!」


 そんな事を考えているとジョンが叫んだ。

 だから俺はゴールデンダガーだ。

 ちなみに偽名は嘘ではない。嘘ではないのだ。


 俺は何故か俺を見て驚愕するジョンを見てそんな事を考えた。

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