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追放された侯爵令嬢と行く冒険者生活  作者: たけすぃ
君のいない道を一人で歩く、ただし君と

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81/199

シスターシャラは耳に砂糖が詰まる


 *


「それでシンさんは出て行ったんですか?」


 教会のシスターであるシャラ・ランスラは空を飛ぶ熊を見たと言われた方がまだ信じられると思いながらエリカに聞き返した。

 少なくともファルタールにはそういう魔物がいるらしい。


「ええ」


 魔物退治などで共に行動するようになった仲間であり、そして友人であると思っているエリカ・“ロングダガー”は落ち着いた様子で優雅に茶を飲み頷く。

 流石元大貴族の令嬢である、所作の一つ一つが美しい。


 シャラはエリカのその落ち着き払った様子に首を傾げそうになる。

 魔境の森から帰ってきてから、何故か一日一度は先輩シスターと面談するようにと司教様より命じられていた為、ロングダガー家に顔を出す暇が無かったのだがその間にいったい何があったのか。


 聞けばエリカは故郷で無実の罪で国外追放に処されるという理不尽を受けたという。

 それを良しとせずに真っ当な貴族としての人生を捨ててまでシンがエリカと共に出奔したと聞かされた。


 何故か二人とも夫婦であるというのは茶番であると言っているのが不思議だったが。

 シャラは、まぁ少なくともシンさんはまだ貴族であるらしいので、そういった言い訳が必要なのでしょうと、本当は夫婦ではないと嘘をつく二人の事に納得していた。


 だが、そのシンがエリカの側から離れるのだ、それも一週間も。

 久しぶりに顔を出そうとロングダガー家を訪ねてみればまさかのまさかである。

 

 まだ立って踊る牛がいたと言われた方が信じられる。

 少なくともファルタールにはいるらしい。


 流石にシャラとて夫婦だからといって四六時中毎日一緒にいるものだとは思っていないが、相手はこの夫婦である。

 半日や一日は想像できるが一週間となると割と真剣に想像が困難だった。


「その……エリカは大丈夫なんですか?」


 それは彼女が命を狙われているという立場である、という意味もあったが殆どはシンが側に居なくて大丈夫か? という意味だった。

 なにせ魔境の森で魔力切れを起こした時のエリカをシャラは見ているのだ。


 あれは無理である、思い出しただけで口の中が甘くなるし、胃液が蜂蜜になる。


「何を言っているんですか」


 エリカの呆れたような顔に若干の安堵を感じてしまう。

 どうやら心配のしすぎだったようだ。


「一週間ほど離れる程度、大丈夫に決まっているでしょう寂しい」


「え?」


「何か?」


 心配のしすぎで幻聴が聞こえたようだ。

 ただでさえ神の声を聞いたと言ったら教会の皆に可哀想なものを見る目で見られたのである、しっかりせねば。


 泰然たいぜんとしたエリカの様子を見てシャラは自分が狼狽してどうするのかと気を引き締める。


「シンは幻想《理想》の為にと言いました、そうであるならばわたくしがシンを止める事はいたしません。理想《一年後の約束》が側にある事に安堵し足を止めたと、止めてしまっていたと彼が言うのであればこの一時の別れも必然であるのでしょう会いたい」


「ん?」


「何か?」


 何かおかしな事がありましたか? 視線でそう問うエリカの姿に小首を傾げながらシャラは自分の耳の穴を穿ほじってみる。

 大丈夫、何も詰まっていない。


 突然耳を穿りだした自分を不思議そうな目で見てくるエリカを見て気を取り直す。

 とかく彼女が心配だというのは本当なのだ。


 回復魔法が下手で、冒険者が使うような攻撃魔法が得意で、あげくに音節《破壊》魔法が一番得意な自分は教会ではちょっと浮いている。

 ぶっちゃけると教会内に同年代の友人はいないのだ。


 いやまぁ教会外でも少ないが。

 何故か突然悲しい気持ちになりながらもシャラはエリカに言う。


「寂しくなったら何時でも言ってくださいね? すぐに駆けつけますから」


 友人なのだ、これぐらいのお節介は許されるだろう。


「まったく」


 エリカが困ったように微笑む。


「そうなりましたら貴方を一番に頼らせていただきますせつない」


「うん?」


「何か?」


 シャラは耳を穿って自分の耳に砂糖が詰まっていないか確かめた。

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