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追放された侯爵令嬢と行く冒険者生活  作者: たけすぃ
驚くほど近く、息をのむほど遠い君へ

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31/199

追放侯爵令嬢様と買い物しよう3

ブックマーク、評価、ありがとうございます。

 ラナに紹介された武器屋は何というか、こうハッキリ言っていいなら。


「ボロいな」

「ボロいですわね」


 ぼろかった。

 ボロボロだった。

 よくこれで商売しようと気になるなというレベルでボロい。


 ラナからの紹介でなければ入ろうとすら思わなかっただろう。

 というか多分武器屋だと気が付かなかった。


 エリカがどうするのかと問いたげな目でこちらを見てくるので意を決して脚を進める。

 触った瞬間壊れるんじゃないかとビクビクしながら扉を開けると、扉の先は意外な程に綺麗な店内だった。

 綺麗、というよりこれは。


「何もありませんわね」


 俺の背後でエリカが言った。

 店内には武具も棚も何も無い。

 一瞬、入る店を間違えたかと思ったが店のカウンターの上にはトルロッソ武具店と書かれた木製のプレートが置いてあった。


 商品の展示もなく、人の姿すら無い店内に戸惑いながらもカウンターまで歩いて行く。

 カウンターの上に呼び出し用のベルも無く、本当に何も無いなと思いながらカウンターを見下ろすと人が転がっていた。



「すいません、すいません」


 伸び放題の腰まであるボサボサの黒髪をバッサバッサと上下に振り回しながら眼鏡を掛けた女が謝る姿はちょっと怖かった。


「あまりにも暇だったのでつい寝てしまって、驚かせてしまって申し訳ないです」


 いくら暇だからと言ってあんな所で眠るのはやめて欲しいと思う。

 殺害現場にでも遭遇してしまったのかと思って慌ててしまった。


「まったくですわ、気配をまったく感じなかった物ですから死体かと思いましたわ」


 エリカが抗議すると黒髪の女がすいませんとバッサバッサと髪の毛を振り回す。


「まあ、それはそれとして」


 エリカが謝る女を制止して言葉を継ぐ。


「ここは武器を取り扱っているのかしら?」


 ちらりとカウンターに目を這わす。


「トルロッソ店主?さん」

「あああ申し遅れました、わっしはトルロッソ武具店の店主をしています、テペ・トルロッソと申します。えー、その、お客様?で宜しいんですよね?」


 珍しい一人称だな、訛りとしては南部の訛りに近いのでそちらの方の出身なのかもしれない。


「ああ、客だよ。剣を買いに来た」

「ほぉおおおお」


 俺の返答にテペが奇声を上げた。

 どうしよう、今すぐ帰りたい。


「わああゴメンナサイゴメンナサイ!」


 表情に出たのかテペが俺の腕に縋りついてくる。

 テペの意外な力の強さに油断していたとはいえ一瞬バランスを崩しそうになる。


「久しぶりのお客さんでつい興奮してしまって」


 テペが涙目でうったえてくる。


「わかった、わかったから」


 俺は早く離してくれと思う。

 エリカの顔がちょっと不機嫌になっている。

 元侯爵令嬢としては礼儀のなっていない店員というのは見ているだけで不愉快なのだろう。


 だがテペは俺の腕を離さないどころか、手でさすりだし、ほぉとかへぇと呟きだす。

 その度にテペの大きめな胸が腕に当たる。


 ゴワゴワとした皮のエプロン越しではあってもつい意識してしまう。

 いい加減怒鳴ってでも離させようかと俺が思い始めるとテペがマジマジと見ていた俺の腕から顔を上げた。


「お客さん、珍しいですね。地は貴族様方の使う騎士団剣術にその上に我流? いえ、これは南方由来の剣術ですかね、とても珍しい筋肉をしています」


 テペがいきなり俺の剣術の素性を言い当てる。

 というか筋肉を見てたのか。

 いやしかし筋肉だけで分かる物なのか?


 確かに俺の剣術は学園で習う騎士団剣術の上に師匠から教えられた南方から伝わったとされる剣術を教わった事で今の形になっているが。


「おお、しかもお客さん殆ど純剣士系ですね? 魔法は身体強化をかなりの強度で使えそうですが……放出系はかなり苦手とお見受けします」


 次々と俺の特徴を当てていくのが怖い。

 腕一本の筋肉を見ただけでそこまで分かるのは普通ではないだろ。

 恐怖に近い感情まで湧いてくる。


「そこまでにしなさい」


 と、更に何かを言いつのろうとしたテペを止めたのはエリカの声だった。


「本人に断りも無く話す内容としてはいきすぎでしてよ」


 エリカの冷たい声にテペが奇声をあげて手を離しスイマセンスイマセンと頭を下げる。

 悪気があってやったワケじゃ無いと感じていた俺は、何度も謝るテペの姿が哀れだったので、あと謝る度に髪の毛が俺の顔に当たるので、気にしてないとフォローを入れようとしたら何故か俺まで怒られた。


 妻のいる目の前でよその女にベタベタと自分を触らせる夫がどこにいますか、と。

 茶番劇に付き合って貰っている身で、そこまで気が回らなかった自分を恥じつつ俺は深く反省した。

ブックマーク評価して頂けると大変励みになります。

信じないかもしれませんが、少しでも増えるとオッサンがガッツポーズしてます。

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