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追放された侯爵令嬢と行く冒険者生活  作者: たけすぃ
驚くほど近く、息をのむほど遠い君へ

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追放侯爵令嬢様、冒険者になる4

 ギルド職員の態度に正直に言えば途方にくれそうになっていたが、このまま帰るわけにもいかないのでもう一度質問する。


「冒険者登録をしたいんだが」


 ギルド職員の反応は今度は少しだけマシだった。


「は、はい、こひょで受け付けてまふ」


 噛みまくりだが大丈夫か?


「それじゃあ俺と彼女二人の冒険者登録をお願いしたい」


 オルクラ王国でも同じ冒険者登録書を使っているのだろうか? 等と考えながらギルド職員の対応を待っていると、ギルド職員がじっと俺の顔を見ているのに気が付いた。

 つい先程もあったよなぁこの状況。

 促す為にも声を掛けようとするとギルド職員の女性が先に口を開いた。


「あの!お名前を伺っても!?」


 伺うも何も登録する時に分かるだろうに。

 そう思いつつも、そういう手順なのかもしれないと思って答える。


「彼女はエリカ・ロングダガー、俺はシン・ロングダガー」


 誓って言う、俺は本当に普通に名前を告げただけだ。

 面倒くさそうでもなかったし、怒りを滲ませてもいないし、脅すような顔でもなかったはずだ。


 エリカ・ロングダガーとエリカの名前を告げる時にもしかしたら気持ち悪い笑顔になったかもしれないが、誓ってそれだけだ。

 だがギルド職員の反応は予想外も良いところだった。


「ロングダガー!“身分不相応のロングダガー”!やっぱり本物のロングダガーだった!」


 

 *



 突然叫びだしたギルド職員を目の前に、俺は唐突に不安に駆られた。

 身分不相応のロングダガー、メルセジャも確か俺の事をそう呼んだ。


 あの時はそれが何かを聞きそびれてそのまま忘れてしまっていたが、他国のギルド職員にまでそう叫ばれては流石に疑問に思う。



 これは……もしかして俺のエリカに対する身分不相応の恋心は世に広く広まっているのでは?



 いや確かに自分自身も身分不相応だとは思う。

 貧乏子爵家の次男坊が侯爵家のそれも王国宰相の愛娘を好きとか言ってるのだ、いや口に出した事なんて一度も無いが、そりゃもう誰がどう見ても高嶺花だし身分不相応だ。


 冒険者ギルドには独自の情報網があると言われている。

 時には国が知らないような事すら詳細を掴んでいる事があるという。


 まさかそのギルドの情報網に自分の身分不相応の恋心まで把握されているとは。

 冒険者ギルドの情報網の強さに恐ろしさよりも感心してしまう。


 いやそれにしても他国にまで俺がエリカの事が好きな事が広まっているとは……恥ずかしくて死にそうだ。



「貴方ちょっと宜しくて?」


 俺が自分の身分不相応の恋心が国境を跨いで広まっている事に驚いているとエリカがすっと前に出てきた。


「その“身分不相応のロングダガー”とはどういう事ですの?」


 ん? もしかして怒ってる?

 声も魔力も固い。


「ひえ!」


 声を真正面から受けたギルド職員の女性が固まる。


「わたくしもロングダガーでありますので、侮辱であれば……ええよろしくてよ、受けて立ちましょう」


 声に当てられたギルド職員がダラダラと汗を流す。

 気持ちは分かるが冒険者ギルドの職員としてはどうなのかと思う。


 冒険者なんて基本的に自分の命を賭けて暴力で飯を食っていこうと考えるような連中ばかりだ。

 しかもこちとら今年で十六歳になるような、明らかに年下の人間なのだ。


 ちょっとばかし相手が不機嫌だからといちいち固まっていては仕事にならないだろう。

 いやもうエリカが怒っていたら俺も出来れば近づかないが。


「どうなんですの?」


 何がどう、なのかは置いておくとして、言葉は丁寧だったが温度がぐっと下がる。


「いえいえいえいえいえ!侮辱だなんてそんな!」


 ギルド職員の反応は必死なせいか過剰だった。


「“身分不相応のロングダガー”と言えば有名な二つ名でございます、そこに尊敬や畏怖はありますが侮辱だなんてそんな!」


 二つ名?

 俺はエリカの背後で首を傾げる。

 確かに冒険者の中では二つ名が付くような連中がいる。


 俺の師匠もそうだが、兄弟弟子にもある。

 だが俺にはそんな物は無かったはずだ。


 あれは何か特殊な連中が付けられる渾名あだなみたいな物だ。

 俺のような特徴のない人間に付くような物では無い。


 ……いや待て、身分不相応な思慕を抱くと二つ名が付くまで知れ渡っているという事なのか?

 はっず! どうしよう? めっちゃはずい。


「そうなんですの?」


 エリカが意外そうな声で言う。

 ギルド職員が高速で首を上下に振る。


「はい!はい! それはもう有名です!」


 エリカの機嫌が良くなったのが分かったのか畳みかけるようにギルド職員。

 いやまて、そのままの勢いで由来を説明するのか? 俺がエリカに身分不相応の恋心を抱いていると国を跨ぐぐらい有名ですと。

 それは止めなくては、と俺は焦るがギルド職員の口は止まらなかった。


「“串刺しエルザ”の兄弟弟子にして“親切なバルバラ”を師とする“身分不相応のロングダガー”と言えば有名ですので」


 ……は?

 俺は突然に出てきた兄弟弟子と師匠の名前に困惑する。


「今度そちらへ“身分不相応のロングダガー”が登録しに行くのでよろしく願うと、お二人からおどさ……頼まれておりましたし」



 あー。

 俺は思わず天を仰いだ。

 だいたいさっせたからだ。

 脅すって何やってんのあの二人は。

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