第17話 目指すべきこと
家に帰ると唯はまだ帰ってきていなかった。きっとまだ部活が終わってないのだろう。普段はだらっとした感じなのだが部活の時は人が変わったかのように真剣になる。唯の入っているのは演劇部で、以外にも演技自体もそこそこ上手な分類に入ると思う。彼女を探し始めるまでは部活に入っていない俺のほうが帰宅は早かった。
早くに帰っても特にすることはないので、自分の部屋に行きとりあえずnonさんにチャットを送る。チャットはすぐに帰ってきた、この人はいつ寝ているかといつも不思議に思う。今すぐでも大丈夫とのことだったので、すぐにチャットを始めた。
『こんにちは、nonさん』
『よう、彼女探しは進んでいるか?』
『進捗は前と変わってません』
nonさんとは割と連絡は取りあっている。でも彼女探しの話をするのは久しぶりだった。
『そうか、それで今日は何だ?』
ひとまず、自分の言葉で今の状況を説明する。
『青春してるな~』
話を聞いたnonさんの第一声だった。どこをもって青春といっているのかは分からなかったが、今を楽しんでいるということだったら、あながち間違いではなかった。
『それでですね、nonさんに相談が……」
『その質問を聞く前に一ついいか』
『は、はい』
会話を割り込むようなやり取りがnonさんには珍しかったので少しおどろいてしまった。
『立ち止まったらいけない、もう動けなくなるかもしれないぞ』
nonさんから出た言葉だった。
まさに相談しようと思っていることの核心を突く言葉だった。
nonさんさらに言葉をつづけた。
『大丈夫だ、若い時の失敗はいたくない、大人になってからは転ぶのが怖くなってしまうからな。今のうちにしっかりと走っとけ』
どうやらnonさんに今の俺は見透かされていたらいい。ぶれそうになったのをもう一度立て直す事ができそうだ。
『nonさん、ありがとうございます』
『お、そうか、で相談とやらは大丈夫か?』
分かってることをわざわざ聞いてくる、ここがnonさんを尊敬しているところかもしれない。わかっていることをわざわざ隠してでも相手の最善を与えてくれるところに。
今回俺の場合なら言ってはいけない言葉を言う前に止めえてくれた。言ってしまったら、今とは変わった気持ちになってしまったと思う。
相談なんてもう必要なかった。
『はい大丈夫です』
『それならよかった、がんばれよ』
『はい』
と返事をしたところで、チャットは終わった。
まだ制服から着替えてなあかったので部屋着になり、リビングに行くと唯が帰ってきていた。
唯はお菓子の棚を漁っているところだった。
「あ、兄が先に帰ってきてるって、久しぶりだね」
「そうだな、とりあえず制服着替えてから、お菓子を食べろ」
はーいと言って、唯は自分の部屋に行った。
まさか、いつも制服のまま、お菓子食べてたなんてことはないよな。今日たまたま、制服のまま食べようとしちゃってただけだと考えよう。そこまでずぼらなわけがないよな。な!
「……」
一応後で聞くか、あくまでも一応な。
努力ができる人って、マジで尊敬です。天使は基本自分に甘いので、疲れることは続きません。
次もオカ研でノートです。