第14話 わんわんわん
次の日、二人で犬の像の前に訪れた。
この神社は一時期、大きな神社の神仏を祭っていた時期もあった。なので、もう一つの神社と比べてみても大きく人も多い。地元では有名な方の神社だ。境内には経路に沿うように大樹が並んでおり、入ったときの別世界に来てしまったかのように空気が変わる。その経路を進んで奥に進んだところに目当ての像は置かれている。
「ここの前で、あれをやれば助言をくれるのかもしれないのか」
「はいそうです、早くやってください」
「え、横山がやるんじゃないのか?」
「先輩の助言が欲しいからやるんですよ、本人がやらないと意味ないですって」
たしかに横山の言うと通りだ。本人がやらなくては適切な助言をもらうことができないだろう。でも、これをやるのは気がひけてしまう。もしも、知り位になって見られたらなんて思うと……
「早く先輩やりましょう、今なら誰もいませんから」
横山がせかしてくるが、こちらの気持ちがいまだに収まらない。
自分に言いつける、これができたら彼女探しが進むかもしれない、彼女を見つけるためには必要のことだ、と。
「よし、やるぞ」
「先輩これも、使ってみてください」
横山が渡してきたのは、犬耳のカチューシャだった。
「犬にもっと似せた方がいいと思ったんです、ぜひ」
いつもなら、こんなことを絶対にしないが、きっもちを固めた俺に心の揺らぎはなかった。有無を言うことなく横山からカチューシャを受け取ると頭に装着し、像の前で三回回った。そして
「ワン」
どこから声が来るのかと、俺は四つある耳を立てる。横山も黙ってみ耳に手を当てている。
あれから何分経ったのだろうか、いやたったの数秒だったかもしれない。そんな時間を黙って待っても声が聞こえることはなかった。
それから、気持ちがこもてなかったや、回り方が違うといった、横山監督の指示のもと幾度もチチャレンジし、最後は監督自ら行ったが助言とやらは一言も聞こえてこなかった。
何度もチャレンジした俺らは、疲れ果ててそこにへたり込んだ。
「先輩、私たち何やってるんでしょね」
「やめろ、それ以上言うと泣くはめになるぞ、俺が」
ちょっとずつ冷静に落ち着いてくる頭のせいで、今まで何をやっていたのかと悲壮感が襲ってきた。
「帰りますか」
「そうだな」
自分の荷物をもち帰路につく。二人の口数は来る前と比べてあからさまに減っていた。周りは、夕方になっていたのでほんのりと暗かった。二人でとぼとぼ歩いてたら横山が言った。
「先輩」
「なんだ」
「もう、カチューシャ外していいですよ」
「ああ、そうだな」
横山にカチューシャを渡す。それから、家に帰るまで二人の口からっ言葉が出てくることはなかった。
いやー青春ですね!
次も検証です