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第12話 根拠よりも、証拠よりも、

 昼休み学食でまさおとご飯を食べていると彼女探しの話になった。

 唐突すぎて、鼻からうどんが出てきた。人って本当に焦って、むせると鼻からうどんって出るもんなんだね。物語の中だけだと思ってた。もう一度すすると、鼻のうどんはすぐに引っ込んでいった。


「なんで、そのことまさおが知ってる?」


「隠さなくたってよかったじゃないか、前オカルト研究同好会について調べただろ。その時に明が珍しいなと思って、聞いてみたらわかったんだよ」


「だ、だれに」


「天野さん」


「やっぱり、恵か」


 まさおが俺について聞くとしたら恵だってわかっていた。

 彼女を探していることをついて知ってるのは横山、恵、唯、nonさんだと思ったらもう一人知らない間に増えていたとは。


「それで恵はなんて言っていたんだ?」


「『明がこわれたー、陰キャなくせに後輩の女の子と仲良くしてるー』って」


 恵そんな風に俺のことを思ってたのか、それに陰キャって、せめて幼馴染としてもう少しオブラートにつつんでほしかった。


「いや俺のことじゃなくて、彼女についてだよ」


「そっちは、明が彼女を忘れてしまっているから、見つけ出すって言ってるってことぐらいだよ。全然意味が分からなったんだけどこれ以上情報が出てこなくて」


「そっか」


 まさおは、ほぼすべて知ってた。


 これ以上の情報が出てこなかったって、俺自身も持ってないんですけどね。


「あと、一年の横山さんと仲良くしていることもだね」


「これも、恵から?」


「うん、天野さん」


 恵は全部話しちゃったのか。陰で母親に俺のこと伝えているみたいだし、恵にとっての俺へのプライバシーの配慮ってあるんだろうか。


「それで、明は本当に彼女がいて、ただ自分が忘れてしまっているだけだと思ってるの?」


「ああ、ほんとに思ってる」


 この気持ちだけは揺らいだことがない、きっと見つけ出すまで誰になんと言われようが変わることはない。


「ふざけているってわけではないんだね、その彼女が明のことを忘れてしまっているとは思わないの?明と同じように」


「そのことも考えたさ。でも絶対に彼女は覚えている。そしてどこかで俺のことを待っているはずだ」


「根拠はあるの?」


「ない」


 根拠だの根拠だの証拠だの言ってては彼女の存在さえも俺の妄想かもしれない。でも彼女いるのに妄想だと俺があきらめてしまってはいけないと思う。いるのにあきらめてしまうことだけは避けたった。


「絶対にいる、俺は信じている」


「つまり直感でそう思ってるんだね」


「……」


 自分の言っていることがどれだけ論理的じゃないかは知ってる。まさおにも止められるんだろう。自然と顔が下へ向いてしまう。


「別に否定しようとしてるとか、止めようとしてるわけじゃないよ」


「違うのか?」頭が一気に上がる、予想外の言葉だった。


「本人がいるって言ってるものを、俺から居ないという証拠があるわけじゃないしね」


「まさおも信じてくれるのか」


「信じているかは置いといても、否定をするつもりはないよ」


 独りよがりなところが多かったせいか、親友に認められたって実感が今は一番ありがたかった。

しかし、まさおは言葉をつづいた。


「でも、永遠と探し続けることはできないよ、来年はもう受験生だ、見つかる見つからないどちらであってもしっかり区切りをつけないとね、」


「そうだな、」


 ここで昼休みの終わりを知らせる予冷が鳴った。


「急がないと、授業遅れる」


 俺はうれしい気持ちのままに伸び切ってしまったうどんをすすった。


 放課後になり、俺は急いで部室棟へ向う。今までほとんど進んでなかったので、今日こそは何か一つでも手掛かりを見つけなくてはいけない。


 部室に入ると俺より先に横山が来ていた。腕には大量ノートが抱えられており、床には何個かの段ボールが転がっている。もともと残っていた段ボールからさらにいくつか増えている。


「明先輩、こんにちは」


 横山が俺に気付いた。


「ああ、横山、ところで何を抱えているんだ?」


「何って、ノートですけど」


「なぜノートを抱えているんだ?」


「なぜって、このノートが先輩の欲しい情報があるかもしれないノートだからですよ、」


「ほんとか!」


 うれしさのあまり声を張り上げてしまった。


「慌てないでください、確実にあるってわけではないですよ」


「そうなのか、わかった」


「わかったなら、そこの段ボールからノートを机に出すのを手伝ってください」


 言われた通りにノートを机に出していく。

 このノートはオカ研に代々受け継がれている物で、部員たちが気になったものを調べた成果をまとめてたものだそうだ。もしかしたら、この中に俺と同じ経験をしたり、聞いたことがあってまとめた人がいたかもしれない。確かにそれを見つけることができれば大きな手掛かりになる。


「私もオカ研に入ったときっ先輩たちから唯一受け継いだものです」


「読んだことあるのか?」


「まだ一回もないです、埃っぽかったんで触りたくなかったんです、これだけは出したくなかったんですけどね」


「そ、そうか」


 きっぱりした態度に、それでもオカ研の部員なのかと疑問を抱いたが、俺の為にやってくれたと思うととてもうれしい。


「明先輩、おれのために……とか思ってます?これは、恵先輩からお願いされたからですからね」


「恵が?」


「昨日、帰ってるときにお願いされちゃったんで……仕方なくです」


 恵まであんなこと言いながらもお願いをしてくれたんだな。あの様子だから、てっきり反対しているのだと思っていた。魔組に感謝の念を送っていると一つ引っかかることがあった。


「え、俺との協力してくれるっていう約束は何だったの?」


「あ、それはですね、まあ、あれですよ」


 はぐらかされたているように感じるが、どうあれ手掛かりになるかもしれないものが出てきたから、ようやく本格的に彼女を探せるようにった。


 机にノートを全て並べると、俺は意気込み新たに目の前の一冊に手を伸ばした。


 ついに、動き始めた感がありますね!それにタイトルも(それっぽくて)かっこいい(と天使が勝手に思っているだけ)です!

 次は地道にノートをめくります!

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