表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
次元境界管理人 〜いつか夢の果てで会いましょう〜  作者: 長月京子
第六章:カウントダウンを刻む世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/59

28:睡眠不足の一郎さん

「でも、一郎。次郎君の様子がただ事じゃなかったわ。何か心当たりはないの?」


 ジュゼットが落ち着きを取り戻すと、わたしの不安を代弁するように瞳子さんが問いかけてくれる。思わず一郎さんを見るわたしの目にも力がこもってしまう。


「ただ事じゃないって、いったいどんな感じだったわけ?」


「あやめちゃんが、ジュゼットを見て全部思い出しちゃった時みたいにな感じよ。蒼白な顔をして、すごく狼狽えていたわ。そのぬいぐるみに宿っている11D?――カバさんも、次郎君なら思い出したかもしれないって」


「11Dの言うことは鵜呑みにできないけど、次郎が狼狽えること、か」


 わたしは一郎さんに、次郎君の様子が変わった時のいきさつを説明した。


 繰り返し見る、次郎君のそっくりさんが出てくる真夏の凄惨な夢。

 カバさんと、その真夏の光景の中で出会ったこと。


「――あやめちゃんは、ずっとその夢を見ていたんだ……」


「あ、はい」


 あっさりと一郎さんにも語ってしまったけど、やっぱり恥ずかしい。次郎君のそっくりさんが出てくる夢についてを話すのは。


 うう、顔が熱い。パタパタと手のひらで気休めに顔を仰いでいると、瞳子さんと目があった。大丈夫といいたげに微笑んでくれる。


「そうか。あやめちゃんにつながっていたのか」


「一郎さん?」


 なんだろう、夢の中でカバさんも同じようなことを言っていた気がする。


(――お嬢ちゃんにつながってるんか)


 カバさんもわたしにつながっていると言っていた。

 いったい何が? 何がわたしにつながっているんだろう。


「あの、つながるっていうのは?」


 全く心当たりもなく、想像もつかない。素直に一郎さんに聞くと、彼ははぁっと深く息をついた。


「たぶん、俺は次郎にめちゃくちゃ責められるな」


「え?」


「きっとあやめちゃんも俺を罵るに違いない」


 いやいやいや、一郎さんどうしちゃったの? 全く意味がわかりません。


「とにかく眠たい」


 は?


「ちょっと、一郎? 会話になっていないわよ。あなたまでどうしたの?」


「どうもしない、とは言えないけど、……あやめちゃん」


「はい!」


 一郎さんが苦笑する。振りまかれる色気のある仕草に、冗談でごまかしきれない影が見え隠れしているように感じるのは、気のせいだろうか。たんなる寝不足による疲労感かな。


「次郎はすぐに戻ってくるよ。俺のことを問いただしに。だから、心配しないで」


「一郎さんを問いただすっていうのは?」


「あいつが戻ってきたら、全部わかるよ。――悪いけど、今は寝不足で頭が回らない。続きは次郎が戻ってきてからにしよう」


 気怠げにこめかみを抑える一郎さんの様子が辛そうで、わたしには「はい」としか言えなかった。


「ごめんね、あやめちゃん」


一郎さんがソファからゆっくりと立ち上がる。


「今は少し寝かせてほしい」


 再び自室へ戻ろうとする一郎さんの足取りに力がないのは、睡眠不足のせいだろうか。たしかに現れてからも、ずっと気怠げだった。


 眠るために引きこもろうとする一郎さんの背中に、瞳子さんが戸惑った声をかける。


「でも、知っているなら説明が先じゃないの? あやめちゃんが不安よ? 一郎?」

 いつもの調子で言い募る瞳子さんだけど、振り返った一郎さんの顔色を見て言葉をなくす。


「悪い、瞳子。今は、本当に限界……」


 青白い顔で申し訳なさそうにされて、さすがの瞳子さんも追撃できないようだった。わたしもそんな一郎さんを引き止めてまで事情を伺う勇気はない。

 次郎君が戻ってくるなら、それで良いと自分に言い聞かせる。


「あの、大丈夫です。瞳子さん。次郎君が戻ってくるなら、それまで待ちます」


「あやめちゃん」


「それに一郎さんもあの調子だと危ないですよ。今はゆっくり寝かせてあげましょう」


「……そうね」






――11D、消息不明、継続。

――D(次元)一部消失、継続。

――D(次元)崩壊拡大、確認。

――AD(全次元)、カウントダウン。


――9。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
▶︎▶︎▶︎小説家になろうに登録していない場合でも下記からメッセージやスタンプを送れます。
執筆の励みになるので気軽にご利用ください!
▶︎Waveboxから応援する
― 新着の感想 ―
[良い点] なるほどーっ! 時々出てくる記号やカウントダウンの意味が少し分かりました。何か意味があるんだろうなーとは思っていたのですが…( ゜Д゜)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ