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生存遊戯  作者: 田田田
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俺、サバゲーデビューします。

いきなりだが俺は秋葉原にいた。というのも、昨日客に渡されたチラシの店に行くためである。チラシに描いてある地図を頼りに歩いていると店はあった。大通りにその店は無く、裏通りの雑居ビルにその店はあった。

『サバゲーショップ鯖芸』

これがチラシにも書いてある店の名前だった。店の扉を開け店に入るとまず目に飛び込んできたのは店の壁一周に飾られている銃たちだった。次に目に飛び込んできたのは客の姿である。コンビニに集団で着たような客、つまり、黒いギターケースのようなカバンを背負った客が数人店内にいたのだ。映画で出てくるような秘密のアジトのような感じである。ゲームや映画で見たことのある銃が幾つかあった。暫く店内を見て回っていると

「いらっしゃい、サバゲーショップ鯖芸へようこそ。」

と声をかけてきた人物が俺の後ろにいた。身長は170センチは余裕であり、銀髪であり胸の谷間にタバコの箱が余裕で挟めるぐらいの巨乳。ヤンキーではなく、マフィアの幹部のような雰囲気を身にまとった美人だ。「こっちに来な。」と言うので女の後についていくと、店の奥にはテーブルを間に挟み椅子が2つずつ対面に置いてある空間が現れた。

「まあ、なんだ。座れや。」

女はドンッと座り、テーブルに足を組みながら乗せた。あ、因みなんですけどドンッと女が座った瞬間、胸が服の上からでもわかるように揺れた。

「あ、ありがとうございます。」

女の雰囲気に少し驚きながらも座った。

「お前さんの雰囲気から見るにこの店は初めてだな。」

「ええ、初めてですが。あなたは誰なんですか?」

思い切って聞いてみた。すると女は少しプッと笑いこう言った。

「おっと、失礼した。私はこの店の店長の天王寺麻友だ。この店に来たということはサバイバルゲーム、通称:サバゲーに興味が少しでもあるからだと思うが、この店を何で知った?」

俺はショルダーバッグからチラシを取り出し「これで知りました。後、とりあえずなんですけどサバゲーに必要な一式を買いに来ました。」と言いながら店長に見せた。すると店長は

「一式を買いに来たと言ったが、お前は何がサバゲー用品の中で一番大事だと思う?」

と俺に聞いてきた。」

「えっとですね、昨夜、寝る前に動画でサバゲーがどんなものか観たのですけれど、撃ちあうからには銃、つまりエアガンじゃないんですか?」

店長は指でチッチッチとやりながら「違うな」と言い、こう続けた。

「動画を観たと言うのなら、動画に映っていた人たちの顔はどんなだった?思い出してみろ。何かあったはずだ。」

俺は昨夜観た動画を思い出した。店長は「顔はどんなだった」と言ってるけど・・・・・・。

あっ、もしやこれかな。俺は店長に言ってみた。

「店長、もしかしてゴーグルとかマスクですか?」

すると店長は、少しゆっくり目に拍手をしながら「ご名答」と言った。

「そうだ。その通りだよ。まあ、簡単に言ってしまえば顔面保護の為の物だな。眼鏡を掛けていたとしても、眼鏡を掛けたままでも掛けることのできるゴーグルをしなければならない。そうしないと、」

「そうしないと?」

「敵チームのプレーヤーの撃った弾が目に当たった場合、失明の可能性大だ。マスクは、歯の保護。今の時代は、改正銃刀法で銃の威力の上限が決められているが距離によっては歯に当たった場合最悪歯が割れてしまう。」

俺は正直びびった。コンビニでのバイトの休憩中、「サバゲーは遊び。」のような旨がネットにあったではないか。

「いきなりお前をビビらせたようで申し訳ないが、遊びで失明や歯が割れたくないだろ?歯が割れたとしても入れ歯で何とかなるにしても、目は失明してしまったらお終いだ。お互いにルールを守ってやるのがサバゲーだ。」

納得した。

「次が銃だ。エアーソフトガン、まあ、日本ではエアガンで通じるがエアガンと言っても作動方法、要はパワーソースが主に三種類ある。」

「弾を撃ち出す為の方法って事ですか?」

「そうだ。まず一つ目は電動。バッテリーを使い、メカボックス内のギアを回転させピストンを動かして空気を圧縮させ弾を発射する。サバゲーで使われるエアガンのほとんどが電動だ。二つ目はガスガン。電動とは違い、マガジンにガス缶から入れた液体ガスを、温めて気化させ、バルブを開くことで一気にガスを放出させて弾を発射して、スライドをブローバックさせるものだ。で、再びガスが気化し、充満することで次弾を撃てるようになる。だが、ガスガンには欠点がある。」

何なのだろう。ガスガンの欠点とは。

「何なのですか?欠点って。」

「ガスガンの欠点は「寒さ・冷え」に弱いということだ。液化ガスをあたためることで気化させると言ったが、気温が低いと十分にマガジン内で液化ガスが気化せず動作不良を起こし、生ガスを噴き出したりろくに撃てない。だから、冬場のサバゲーではあまり使われない。屋内フィールドだったら多少マシだがな。」

残る一種類の方法とは何なのだろうか?電動とガス・・・・・・、もしかして。

ふと頭の浮かんだことを店長に言ってみた。

「あのー、もしかしてなんですけど、三種類目の作動方法って「空気」ですか?」

すると店長はニヤリとして俺を見ながらこう続けた。

「お前は素晴らしいサバゲーマーになれるぞ。そうだ、三種類目のパワーソースは空気だ。ただ、補足を入れるとだな弾を発射させるまでの動作を手動でやるんだ。これにも欠点がある。何だと思う?」

「弾を発射させるまでの動作を手動でやるということは、連射性に欠けるということですか?」

「またまた素晴らしいな君は。そうだ、連射性に欠けるのが欠点だ。簡単に言ってしまうと、電動ガンと対峙した時、こちらが一発を撃つのにかかる時間で向こう側は数十発も撃ってくるんだ。連射性に欠けてしまう分、メカボックスがない分、相手から位置の悟られにくさがある。まあ、それも一撃で相手をヒットできたらの話だがな。」

店に来る前に家で調べた際に書かれていたルールにもあったことを確認がて

「体やフィールドによっては銃も含めますが、どんなところに一発でも弾が当たれば「ヒット」となり、そのゲームでは戦死扱いとなりフィールドから退場し速やかにセーフティーエリアに戻らなくてはならないと。跳弾でもヒット扱いにする場合もフィールドによってはあると。」

店長の天王寺麻友は腕を組み(本人は自覚してはいないと思うが、胸が強調された。)足を組み直し俺に言った。

「お前さん、本当にサバゲーをまだ一回もやったことないのか?ここまでちゃんと調べてくる一回もサバゲーをやったことが無い客なんてお前が初めてだ。いいセンスを持っているんじゃないか?今後が楽しみだ。」

ここまで褒められるのも例え仕事上言っているだけでも悪くない。今まで生きていた中でここまで褒められたのは無かったから嬉しいのだ。

「あ、あの、俺、今日はサバゲー用品一式を買いに来たんですけど・・・。」

「お、そうだったな。悪い悪い。まずはさっきも言ったように顔面保護のゴーグルとマスクだ。ついてきな。」

と店内のゴーグルとマスクのコーナーに案内された。色々な種類が陳列してある。

「初心者にはっと、これだな。マスクとゴーグルが繋がっている奴。お、そうだ、一つ言っておくが、花粉症対策のゴーグルはサバゲーになんか絶対に使うなよ。」

「どうしてですか?」

「一言で言ってしまえばレンズが割れる。そもそも、あれはサバゲーで使われることを想定して作られていない。レンズ部分に被弾して割れた欠片が目に刺さってでもしたら大惨事だ。」

忠告をしながら店長は俺にゴーグルとマスクが繋がった(店長曰く、ゴーグル部分とマスク部分は分離できる。)レンズ部分は透明でフレームとマスク部分の色は緑色の物を見せた。

「マスク部分の鼻から口にかけて横に細い隙間が数本あるがこれは呼吸をしやすくするための穴だ。弾は通らないサイズだから安心していい。ゴーグルのフレームの上と横のこれまた小さい穴が数個左右両方に開いているが、これはレンズがゲーム中曇りにくくするために開けられている。ゲーム中はいくらレンズが曇ったからという理由でフィールド内ではゴーグルを外してはいけないからな。」

「あの、隣にサングラスのようなゴーグルがありますけどこれはどうなんですか?」

「これか、これはシューティンググラスでな、サバゲーでも使えるのだがあまりお勧めしない。というのも、レンズ部分がかなり横に広くても完全に目を覆えていないだろ。横からの被弾で弾がレンズと目の間に入る危険性がある。サバゲーで使う人もいるが自己責任だ。選択の自由があるが、自由の裏には責任が伴う。初心者には先程のゴーグルとマスクが繋がっているのがおススメだ。フィールドによっては、シューティンググラスの使用を禁止している所もあるぐらいだ。」

そうか、目は大切だからな。

「次に、やっとかもしれないが銃だ。フィールドに行けばレンタルで借りることも出来るが自分の銃を買えば愛着がついて今後のサバゲーライフの相棒になる。どんな銃がいい?」

銃ね・・・・・・、俺、店内に飾られているのを見ても名前がわかるのなんて一つもないしな・・・・・・。ゲームや映画で使われていたな程度でしか分からん。

「先程の話から、電動にしようと思うのですが名前がわかるのが一つもないです。ゲームや映画で出ていたな程度でしか分からないです。」

「ガンマニアや長年サバゲーをやっている人だって最初は何にもわからなかったんだ。私もその内の一人だった。恥じることはまったくない。むしろ先入観に囚われることなく選ぶことが可能だからむしろ良い。銃を選ぶのに幾つかポイントがある。一つは性能面で選ぶ。ただ、今の改正銃刀法のせいで威力の上限が決められているために、飛距離はどんな銃もほとんど同じだ。それだけは頭に入れておいて欲しい。二つ、さっきお前が言ったように見たことがあるで選ぶ。三つ、「これ、カッコイイ。」という見た目で選ぶ。これはさっきのゴーグルの件のように強制はしない。好きなのを選べ。」

好きなのを選べといきなり言われても正直悩む。車を持っていないから大きくて長くて重いのは除外するとしよう。

「因みになんですけど、店長はどんなのを持っているのですか?」

すると店長は腰に付けているポーチからスマホを取り出しササッと画面を数回フリックやタップして画面を俺に見せた。

「私はこのL85A1だ。見た目の好みで選んだ。スコープも取り付けた。このような銃はブルパップといって、マガジンを刺すところがトリガーよりも後ろにあるんだ。コンパクトで取り回しもいい。」

独特なフォルムをした銃だ。銃の色に緑が入っていて面白い。大学の時、ミリタリーマニアの友人が「L85は鈍器・ジャムる。良い点あんまりない。」と言っていたのを思い出した。

だが、今はエアガン選びだ。実銃の話ではない。

「なんか、こう、もっとシンプルなのないですか?一般的な感じでゲームや映画で出てくる感じのがいいです。」

それ以外にこだわりはない為、それだけ要望を伝えた。すると店長は

「一般的でシンプルなのが良いか・・・。これなんかどうだ?」

と二人がいた後ろの壁の右から2番目上から3番目の黒い銃を指さした。

「この銃はM4SOPMOD SHORTYといってだなアメリカ海軍が使用するMK18 MOD0が元ネタだ。私のL85A1よりも拡張性に優れているから様々なパーツを取り付けることが可能だ。どうだ?」

この銃を見た瞬間、一目惚れした。体中に電撃が駆け巡った。こいつとならやっていけると感じた。

そう思った次の瞬間、俺は店長に言っていた。

「店長、こいつにします。これ下さい。」

今まで生きてきな中でこんなにも即決したことは無かったとおもう。いや、無い。

店長が「飾ってある展示品を触ってみるか?」と言うので触らせてもらった。渡されるときに「引き金に指をかけるなよ。」とも言われた。

 実際に持ってみると見てみるだけでは分からないことも分かってくる。短い分、構えやすく取り回し性が良い。黒くてカッコイイのも良い。ありがとうございますと言いながら店長に返した。店長が

「電動ガンを動かすにはバッテリーが必要だが、充電器も必要だ。一回の定例会でバッテリーは2つ持っていけばいい。昼休み中に午前中使っていたのを充電できる設備があれば充電しつつ、午後からのゲームは二個目のバッテリーを使っていればいい。充電器は一個で数個のバッテリーを充電できるのがあるからそれを買えば良いぞ。銃に寄って対応するバッテリーと対応しないバッテリーがあるから注意しろ。今回は私が用意する。安心しな。」

「ありがとうございます。店長のような美人に用意いていただけるなんて。」

「ほう、私を美人と言ったか・・・。」

何かいけないことでも言ってしまったのだろうかと不安に思った瞬間、店長は言った。

「良い奴だお前は。気に入った。そういや名前を聞いていなかったな。お前の名は?」

「高野亮太です。」

「よし、亮太。次は弾だ。」

「弾ですか?どれも一緒なんじゃないのですか?」

「いいや違う。まず、サバゲーで使うBB弾は絶対に100円ショップで売っているのは買うな。サバゲー用のを使え。」

「何故です?」

「100円ショップで売ってる弾はな簡単に言ってしまうと作りが雑なんだ。バレル内部で詰まって故障の原因になってしまう可能性が大だ。」

ちゃんとした物を使えって事だな。そして店長は続けた。

「で、サバゲーで使われている弾のサイズの9割が直径6ミリメートルなんだが、更に現状三種類に分けられる。まず一つ目がプラ弾。完全樹脂製のBB弾。銃を買った時の箱の中に小袋に入れられてあるのがそれだ。弾のみでも売っている。二つ目がセミバイオ弾。一つ目に話したプラ弾と、後で話すバイオ弾のハーフって感じの弾。プラ弾と共に屋外フィールドでの使用はほとんどのフィールドで禁止されている。」

「残る三つめはバイオ弾ですね?」

「そうだ。バイオ弾は簡単に言うと、土に還る樹脂で作られたBB弾だ。今のサバゲーで使われている弾の9割がバイオ弾だ。土に還るのには数年かかってしまうが、環境のことも考えないといけないのだよ高野君。昔のバイオ弾はちょっとしたことで直ぐにボロボロになってしまったり、膨張してしまい使い物にならなくなってしまうことが多かったが、今現在のバイオ弾は品質が格段に向上していて、袋に乾燥材と共に入れてちゃんと封をして高温多湿を避けて保存すれば何ともない。バイオ弾を買っておけば屋外フィールドでも、屋内フィールドでもどっちでも参加出来る。」

更に店長は続けた。

「弾には幾つか重さに種類があるのだが、今回はメジャーな二種類の重さを簡単に教えようと思う。先ずは、0.2グラム。基本的な重さである。標準的な重さなのでフィールドで弾速チェックというものがあるのだが、基本的にこの重さで計測する。次は0.25グラム。ちょっと重くなった分、弾道が安定する。前々から言っている銃の威力の上限は具体的にいうとだな、0.2gの弾を使った際に威力が0.98ジュール以内ならOKだ。」

「弾速を計測した際に威力も分かるのですか?」

「ああ、弾速計測器ってので計測するのだが、液晶画面に表示されるから安心しな。」

なんか、スポーツでいうところのドーピング検査の様だ。なんて思っていたら店長がさらに加えた。

「あ、言っておくが、一度使ったBB弾を拾って再使用なんて絶対にするなよ。銃の故障の原因となってしまう。」

ここで、ある疑問が浮かんだ。

「あの、銃以外の装備、とりわけ服系統はどうすればいいのですか」

「服に関してだがな、初心者が初めてのサバゲーではぶっちゃけた話、公然良俗に反していなければどんな格好でもいい。フィールドで迷彩の上下をレンタルしてる場合もあるが、汚れてもいい服ならなんでもいい。ただ、赤系統や黄色系統の服は避けた方がいい。というのも、ほとんどのフィールドでは赤チームと黄色チームに分かれて戦うので赤い服を着た人が黄色チームで、黄色い服を着た人が赤チームという混乱する可能性大な事が発生するからな。まあ、フィールド側も対応はすると思うがな。」

そして、服とエアガンに関して最後に。と店長がちょっと真面目な顔になって言った。

「サバゲー用の迷彩服を買ったからといって、サバゲーに行く日に家からフィールドまでサバゲーで使う装備を着てくるな。と言うのも、ファッションでも迷彩デザインがあるにはあるが、サバゲーを知らない人から見たら本物の軍人と思われてもおかしくない。赤の他人に威圧感を与えてはいけないんだ。後、エアガンにもなんだが、ガンケースに入れてフィールドまで来い。いくら実銃ではないにしろ全く知らない人から見たら本物と感じることがあるからな。見た目が銃なだけでサバゲーに対し、「サバゲーをしている人は戦争が好きな人」なんてとんちんかんな意見をいう頭のいかれた生き物だっているからな。肩身が狭い業界なんだよ。」

その後、あると便利な用品を数点店長が用意してくれた。ガンケースはサービスでおまけしてくれた。そしてレジに行き会計するといったところで

「とりあえず、お前が18歳以上か年齢確認するぞ。身分証明所証見せな。」

よくよく話をきくと、万が一、18歳未満に18歳以上用の銃を売ってしまうと店も経営不可能レベル沙汰になるかららしい。

諭吉が5枚以上は飛んだが、店長が言うにはサバゲーの初期投資でそのぐらいは当たり前だという。大学1年生の頃からのバイト貯金で買えた。ま、家賃やその他の料金もあるから節約生活で、当分の間の朝昼晩の飯はコンビニの廃棄落ちで賄うか。

お釣りとレシートを受け取り、後は店を出て帰るだけとなった時、「ちょいと待ちな。」と店長に呼び止められた。

「今度の日曜日空いてるか?」

と卓上カレンダーを指さしながら店長が身を乗り出しながら言ってきた。身を乗り出されているせいで胸の谷間がもろ見えてます。主張が激しいボディって凄いですね色々と。

「今度の日曜日ですか?いつもはバイトのシフトが入っていますが、この日は空いてますね。どうしたんです?」

俺の休みの日を確認してどうしたんだ?なんて思った次の瞬間、店長は俺的には耳を疑う事を言った。

「よし、んじゃ、今度の日曜に早速サバゲーに行くか。当日の午前6時にこの建物の前で待ってな。詳細は追って連絡したいからLINEのID教えな。」


いきなり今度の日曜サバゲーに行くことになってしまった。土曜日もバイト無かったから良かったけど、もし、土曜にバイト入っていたら一式をバイト先のコンビニに持って行ってバックヤードの空いているコンセントでバッテリーを充電する羽目になっていたぞ。そして、今日初めて会った人とLINEのIDを交換したぞ。母親以外の女性とラインのIDを交換したのは初めてだ。

 店を出た後、秋葉原にあるラーメン屋で味噌ラーメンを食べて帰ることにした。帰り道はただ来た道を戻るだけだったのだが、なんか、こう、幼稚園児や小学生の頃のに感じた遠足の数日前のわくわく感で満ち溢れていたのだ。ただ、銃が重いのだ。ガンケースに入れて背負っているだけだが重いのである。

 帰宅後、早速、天王寺麻友からLINEが来た。

「ん?早速、LINEが来ている。何々、『今日は来店ありがとう。今度の日曜日の件だが、建物の前に来る前にコンビニで1リットル以上のスポーツ飲料を2本買ってきてくれ。その分の金は後で払うから。』か。」

バイト先のコンビニでもサバゲーに行く客らも買って行ったな。まだ時間はある。

分かりました。と返信した。するとすぐに既読がついた。

 翌朝、バイト先までに通る交差点を全て青信号で止まることなく行けた。そしていつも通りにタイムカードを押しいつも通りにコンビニの制服に着替えているとガチャリとドアノブの回る音がして革ジャンに白いバイク用ヘルメットを持った店長が入って来た。言っておくが、コンビニの店長であって、サバゲーショップ鯖芸の天王寺麻友のことではない。

「おはよう。高野君。そういえば、この前サバゲーショップに行くとか言っていたけど行ってみた?」

ヘルメットを棚の空いているスペースに入れながら店長が聞いてきた。

「ああ、行きましたよ。とりあえず一式を買うだけのつもりで店に行ったんですけど、ショップの店長に今度の俺の休みの日曜日にサバゲーに連れていかれることになりました。んで、ショップの店長と連絡を取るためということでLINEの交換しました。」

「今度の日曜?ちょっと待ってな、今スマホで天気を調べているが・・・・・・、その日は晴れだけど夜から雨だな。折りたたみ傘を持っていった方が良いかも。サバゲーにはショップの店長と高野君の二人で行くのかい?」

そういや天王寺店長は他に誰が来るとか言ってなかったな。

「ショップで話をした時には何にも人数に関してのことで話していなかったです。バイト終わったら聞いてみます。シフト始まるのでお先に失礼します。」

そう言いながらバックヤードから出て行く俺を見ながら店長は俺に聞こえない大きさで言った。

「じゃあ、高野君はアイツにあったのかな・・・・・・?」

アルコール洗浄液で手を除菌した俺はいつも通りにレジを打っていた。レジの斜め後ろにはフライヤーがあり、ちょうど唐揚げが揚がり終わり完成のチャイムが鳴った。いい匂いが立ち込めてきた。

「唐揚げ揚げたてです。只今、おにぎり1個と唐揚げと対象の飲み物をセットでお買い上げになると50円引きセール実施中です。いかがですか?」

と少し艶やかな声色で萩原さんが隣のレジで言っている。効果が多少はあるようで多くの男性客が買っていった。そういや、今日の昼飯をまだ買っていなかったことを思い出し、客数が減り多少落ち着いたときにバックヤードから自分の財布を持ってきた。そして、商品棚からツナマヨおにぎりと麦茶を取り、萩原さんのレジ前に立ち唐揚げを頼んだ。すると萩原さんが

「高野君もしかして昼ごはんの用意?昼御飯だとしたら量が少ないように思うのだけれど。」

と、ピピピとレジ操作しながら聞いてきた。お釣りを受けとりながら

「ええ、そうですよ。今日は、夜までのシフトじゃなくて午後三時までの日なので少なくて良いんです。」

と返すと

「高野君が良いんなら良いんだけど。お姉さんの奢りでもう一品どうかな?」

と提案してきた。不思議に思ったので聞いてみた。

「もう一品って何ですか?サラダとかですか?」

すると

「サラダとかじゃないよ、もう一品は、わ・た・し。」

「は?何を言っているんですか。冗談ですよね。」

まんざらでもない表情で萩原さんは俺を見ながら

「高野君だったらお姉さんいつでもウェルカムだよ。養ってあげる。」

と言った。はいはい、そうですか。と軽くあしらいながら俺はタバコやレジ袋の補充をした。

溜まった不要レシートをゴミ箱に捨てていると萩原さんに話しかけられた。

「そういえば、この前店長から聞いたんだけどさ、この前秋葉原に行ったんだって?何を買ったの?」

と聞いてきた。店長と話していたやつだなと思いながら

「今度の日曜にサバイバルゲームに行くことになったのですが、その一式を買いました。」

「一人で行くの?」

「いえ、一人ではなくショップの店長と行きます。本当は、一式をとりあえず買うだけにしようと思って店に行ったのですけど、サバゲーに行くことなんて考えていなかったのに店長に半強制的に連れられる形で行くことになりました。」

「この前、店長とそのサバイバルゲームについて軽く話した際に調べたんだけど、フィールドがあるってネットに書いてあったんだけど、高野君が今度行くのどこのフィールドに行くのか知ってる?」

「いや、それなんですけど、ショップの店長はただ、集合時間と集合場所を言っただけでどこのフィールドに行くとは言っていないんですよ。当日のお楽しみっぽいです。」

「けがに気を付けてね。高野君が怪我したらお姉さん泣いちゃうぞ。」

大の大人が年相応ではない感じにプンプンと頬を膨らませながら言ってきた。

「は、はあ・・・。ありがとうございます。」

大した事も起こらず、本日のシフトが終わり帰宅した。夕飯を食べ終わり、食器を洗い、湯を沸かし風呂に入りさっぱりした。冷蔵庫からキンキンに冷やしてあったコーラを取り出し飲みながら録画していたアニメを観ているとサバゲーショップ鯖芸の天王寺麻友店長からLINEが来た。

「ん?何々、『今度のサバゲーは現地で私の知人と合流することになった。質問があればどうぞ。』か。えーっと、『お昼ご飯は、フィールド近くのコンビニで調達ですか?それとも、朝の次点で買っておくのですか?』っと。」

と返信した。すると、ペットボトルに蓋をし終わるよりも早く返信が来た。

「『昼飯に関してのことだが、各自事前に調達するものあるし、定例会参加料金とは別料金でフィールドで買える。因みに、今度行くフィールドは500円でカレーが出る。前日までに電話予約すると確実だが高野、お前はどうする?』か。」

ペットボトルからキャップを外し、二口コーラを飲んだ後

「『カレーの予約お願いします。』」

と返信しておいた。既読がすぐについた。となると、定例会の参加料金だがどのフィールドに行くのかまだ分からないから何円必要なのか用意できない。なので

「『あの、もう一つ質問です。まだ今度行くフィールドが分からないので定例会参加料金が用意できていません。フィールドは秘密なら、料金だけでも教えてください。』っと。」

質問したら、

「お、早い。何々、『あ、そうだった。定例会参加料金を伝えていなかった。まだフィールドは先に教えてしまうと調べられてしまって先入観を持たれてもなんだから秘密だが、参加料金は男性3000円で女性2500円だ。じゃ、当日を楽しみにしていなルーキー高野。』」

と返信が来た。男性と女性とで参加料金に差があるのか。

まだサバゲーの日前日まで数日あるが、充電以外の準備を済ませてしまおうと思い、装備とブーツを入れるためのエナメルバッグを引っ張り出してきた。更に、ブーツを入れる大きめの袋も出してみた。銃はガンケースに入れるから良いとして、それ以外の装備が全てエナメルバッグに入るか試してみた。

「何とかとりあえず入った。綺麗に畳めば入る。」

バッテリーと充電器と銃の予備マガジンはガンケース内に全て入った。BB弾は袋を開けボトルに入れた。天王寺麻友店長が

「BB弾をボトルに詰め替えた際、ボトルに乾燥剤を入れておけばマシだぞ。」

と言っていたのを思い出し、煎餅を買った時に袋に入っていた乾燥剤を入れて蓋をした。バッテリーと充電器以外の荷物を玄関に置き、風呂に入り眠りについた。

 翌朝、今朝は雨だった。洗濯物を干そうと前日思っていたが、寝る前に部屋干しにしておいて正解と思いながらバイト先に向かう。道中、路上に雨でぐしょぐしょに濡れている成人向け雑誌が落ちていた。

「おはようございます。」

傘を傘立てに入れバックヤードに入る。そして、タイムカードを押した。

「おはよう。高野君。最近、君変わったね。」

と店長が言ってきた。

「何が変わったんですか?」

「接客中以外も笑顔になっていることが多くなったよ。サバゲーが良い影響を高野君に与えているんじゃないかな。」

「いや、店長。俺、まだサバゲーをやっていないんですよ。今度の日曜日ですよ。」

「実際にまだやっていなくても、興味がある物が出来ただけでも人は変わるもんだよ。」

「そんなもんですかね。」

自分自身では笑顔でいることが多くなったとは実感できない。というか、笑顔かそうでないかを判断できていないのが正直なところだ。

店長との会話を交わし、レジに行く。レジの目の前の商品棚は対象商品数点買うとクリアファイルプレゼントという仕組みのアニメとのコラボコーナーが設置されている。俺のシフト後にいる人たちで設置したのだろう。

サークルの新歓だろうか、酒を買う大学生が今日はやけに多いと感じながら、時々身分証明書の提示を求めながらも接客した。

 「お疲れ様でした。」

シフトが終わり家、といっても安いアパートに帰った。この日は録画していたアニメも無かったので、夕飯を食べ風呂に入り寝た。

 朝が来た。この日はサバゲーの前日でもあり、バイトも休みの日だ。なんか、こう、明日が人生初のサバイバルゲーム参加ともあり、幼稚園児や小学校低学年の時にも感じた遠足や運動会の前日のようなわくわく感と不安が体中を入り乱れているのである。

ネットでサバイバルゲーム専門誌があるというのを知り、隣駅の大型書店の雑誌コーナーに行ってみたらあった。名前が「月刊サバゲー」まんまな名前だった。今月号の特集が「初心者に向けて」だったのでその該当ページを読んでみると、書いてあったのはテクニックと言うよりもマナーが多かった。

・ヒットしたらヒットアピールをしながらフィールドから速やかに出て行くこと。

・退場していく際、戦っている最中の味方に敵の位置を教えてはいけない。

・暴言を吐いてはいけない。

・フィールドインする前に必ずゴーグルをすること。

・フィールドから出る際、出口にある弾抜きボックスにマガジンを抜いてから数発撃つこと。

等と書いてあった。

これは今後も使えると思いこの特集の為だけに雑誌を買った。雑誌を買うこと自体がものすごく久しぶりな気がした。

 帰宅して気が付いたのだが、この月刊サバゲーは表紙を毎号グラビアアイドルが飾ることが分かった。サバゲーだけではなく、ミリタリーに関係するイベントに関してのことも書かれていた。昼飯は買い溜めしていたカップ麺を食べた。

 夜、俺は夕食に冷凍うどんを湯がき生卵をのせたのを食べた。風呂にも入り、後は寝るだけになったのでバッテリーの充電を開始した。

「おやすみ」

私しかいない空間に呟いた。

 翌朝、集合時間に間に合うように起きた。バッテリーが充電完了していたので玄関に置いてあるバッグにバッテリーと充電器を入れた。遠足にでも行くかの気分だ。

外は少し明るくなった程度で人もほとんどいない。いたとしても新聞配達の人かコンビニでの店員だけだ。天王寺麻友に御使いを頼まれていたことを思い出した。

「お使いついでに朝飯もおにぎり買うか。」

銃を入れたガンケースを背負ってみると思っていたよりも重い。エナメルバッグにガンケースという異様ないでたちである。集合場所であるサバゲーショップ鯖芸の入っている建物がある秋葉原まで電車に乗らなくてはならないのだが、目立つらしくチラチラと他の乗客の注目を浴びた。アキバには到着したのだが、集合時間まで1時間はある。特撮の録画しておいて良かったな、とか思いつつ駅近くのコンビニに行き朝飯のためのおにぎりとお使いのスポーツ飲料を二本買った。あ、レシートはそれぞれ分けて会計してもらった。

 コンビニを出た。空は完全に明るくなった。まだ、日曜日のアキバといえども早朝でまだ人もまばらである。雀の鳴き声を聞きつつ集合場所へと歩く。

「っと、集合時間までまだ10分もある。おにぎりでも食べるか。」

一人集合場所でおにぎり(ツナマヨ)を食べる俺。途中、トラックが通り過ぎた。遠くに聞こえる雀のちゅんちゅんという鳴き声をBGMに人生二回目の秋葉原の建物の前でのぼっち飯も乙なものである。おにぎりを食べ終わり、残ったフィルムをズボンのポケットに入れた。本来、まだ寝ている時間でもあるため眠気があるため軽く伸びをしていると、左側から赤の軽が来た。そして俺の前で止まり、運転席横の窓が開き中から天王寺麻友の顔が出てきた。

「おはよう、高野君。さあ、行こうか。死なない戦争、生存遊戯『サバイバルゲーム』をしに。」



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