3.灰色の狼 -in a forest-
俺は早速対抗手段を整えた。まずは装甲を手に入れる。装甲は俺の形状に沿って膜のように覆っていった。
これでは視界が塞がってしまって何にも見えなくなってしまうのでは?と思ったがどうやら問題ないようである。
何とも不思議な事なのだが、装甲の外からも見る事が出来るようになっていた。因みに内側に目を向けたら何も見えなくなっているようだ。
というか何この視界。
720°全域を見ることができるだなんて想像したことも無かった。いや、そもそもどうやって想像しろって話だが。
タイヤを確認して見ると装甲で覆われているようなことはなかった。機体との繋ぎ目が多少補強されたようである。そして装甲が完成した頃、
「ウォーン!」
開戦の狼煙を挙げて一匹がこちらに向かって走って来た。
よく見ると四足歩行の狼だった。目は完全に獲物を逃さないかのようにずっとこっちを見ている。
近づいてくると体重全てを使い、鋭利な爪を振り上げて引っ掻いて来た。
火花が散るー。
本当は切り裂こうとしていたのだろう。しかし、こちらはちょっと傷がついたぐらいだった。
もし、装甲が無かったら直接攻撃を食らっていたのか。一体どれほどの威力が有ったのだろう?その疑問は直ぐに解消した。
視界の右上に映る緑のバーが一撃で少し減っている。これは初めてのダメージだった。比較するものこそ無かったが、確実に減っている証拠である。
狼は渾身の一撃が大して通用しなくて狼狽していた。暫く金縛りに縛られたかのように動きを見せない。
もう一度爪を立てても食い込むことはなく硬さに阻まれるだけであった。諦めるかな。と、俺が楽観視していると、他の狼達も走ってきて俺に攻撃しようとしてきた。
いくら一撃のダメージが少ないとは言え右上の耐久力のバーは徐々に減っていることを示している。
このバーが無くなったらどうなるのかは分からないが想像に難くない。きっと、死ぬ。いや、機械だから壊れるのだろう。そもそも回復する方法を俺は何一つ知らない。死んだら眼を覚ますのだろうか。まぁ、怖くてそんなこと試すのは俺には無理だけどね。
これ以上攻撃されるのは許容出来ない。どうやら対抗策を取るしかないようである。
俺は自分に兵装を施した。
『ふはは、とっておきだったのだがな。仕方ない!』
と、ばかなことを言ってみる。球の上に一台の砲が取り付けられた。外から見れば完全に戦車っぽく見えてカッコいいこと間違いなし。
しかし此処で俺は絶望的な事に気がついた。
銃口が上に向かない!考えてみれば分かることだった。
現在俺に取り付けられた車輪は2つ。バランスを常に崩している。だが、左右に倒れることは無い。しかし、前につんのめっているのである。
これだと銃はずっと地面にしか向けることができない。左右に動かすことも出来るにはできるのだが...狼を照準に全く収められない使いものにならない代物だった。
側から見れば地面に向けた銃砲を左右に動かすという奇行をただ行なっている戦車である。
訂正...超カッコ悪かったです...。
ptは0という表記にはならず、なしとなっていた。その表記が、君にはもう何も残されていないと言われているようであった。せめて1日ぐらいは生き抜きたかったなぁ。今更嘆いても遅い。既に手遅れだ。
というのは建前で...最終奥義!!
『[ロボット召喚]』
俺は再び唱えた。これを使うとなかなか戻れなくなってしまう。面倒なのでできるだけ使いたくなかったが致し方無い。
生き抜く為ならしょうがないね。
視界が変わり、狼と殆ど同じ視点になった。右腕に有る銃口を狼に向けようとした。しかし、またも身体の操作が出来ないことに気がついた。
狼に銃口が向いていることには変わらず。
一閃し、弾が放たれた。
その精度は俺が撃ったにしては異常だった。狼はゴブリンに比べて体もふたまわり小さくて、小回りも利くし、何より素早い。
だから、狙って当てるだけでも大変なはずなのだ。だが、銃弾は正確に狼の頭を貫く。
これで最初にこちらを攻撃して来た狼、恐らくは頭領を討った。そして、他の狼は頭領が倒されたのを見るとバラバラになるのではなく逆に怒り狂ってこちらに迫って来た。
しかし、正確無比な射撃は容赦なくヘッドショットを命中させていく。
が、流石に単発の銃では多数の敵を捌ききれなかった。そして、接近を許してしまった狼の爪が俺に迫って来た。
しかしそれを踊るかのように俺は避けてしまうとそのまま銃を向けて狼の頭を撃ち抜いた。
仲間の異常に気がついたのか士気が徐々に低下している。遂には逃げる者まで現れ始めた。どうやらこれには謎の音を出す銃も影響しているようだったが。
戦闘開始から半刻が過ぎた頃、狼の群れは完全に崩壊して壊走をし敗北を決する。
そしてそれと同時にロボットを動かす事ができるようになったことに気がついた。どうやらこのロボットは自分の身に危険が迫ると手助けしてくれるのかもしれない。
とはいえそれでは、どうして森の中を歩いている時勝手に動く現象が起きなかったのだろうか。疑問が残るが何か条件があるのかもしれなかった。
再び自分の姿を見てみると装甲にはひびが入っていた。あと少しで壊れる所だったのが分かる。正に、ロボット様々だ。
その後、また襲われる危険が有った為夜な夜な警戒していた。もしこれが生物だったのなら本格的なサバイバル生活になっていたんだろう。
そんなものしたいなどとは思えないけど。
そのままずっと神経を張り詰めていた。だからなのか、何事もなくあっという間に月が沈んでいき、東の空から太陽が昇り始める。空が茜色に染め上がっていた。
俺はふと、ロボットのままだった事を思い出す。
『もう疲れたってのに、また魔物がわんさかいる場所を通っていかないといけないのかよ。とはいってもそれで戻れるとも限らないのだけれど。ってあれ?何でこんな所に穴が開いてるんだろう?』
機体に穴が開いていた。それはこのロボットでも右手が入るか入らないか位の大きさでしか無い。だがやはり他とは違う部分があると気になるものである。
穴に近づいていった。銃を地面に置いた後穴の中に右手を入れてみる。すると、簡単にするりと入って行った。奥に当たる感触もなかったのでどこまであるんだ?と思い更に入れて二の腕にまで達した時、それは起きる。
急に穴に引っ張られるようになり抜け出せなくなってしまった。それどころか、体全体が吸い込まれだし気づいた時にはまた視界が戻っていたのだ。
『吸い込まれた時はどうなるかと思ったけど、もしかしてロボットになったあと戻るための穴だったのかもしれないな...って分かるわけがないだろう普通!嫌がらせか!?とにかく、これからは戻るのが楽になるのだし良しとするか...』
因みにロボットも地面に置いたはずの銃も消えてしまっていた。本当にどういう仕組みなのか理解に苦しむな...。
超技術の力が成せる技なのか、将又魔法だったりするのか。その時、森の奥に2つの人影が見えた。
またゴブリンか...?
と思ったがどうやら違うらしい。時間が経つにつれそれが鎧を着た兵士達だということが分かった。
ー遂にこの星の知的生命体に逢えるようだ!
あ、友好的じゃないのは来ないでね!いや、絶対に来るな。近寄るなよ?また危険な目にあうのはごめんだ!
読んでくださりありがとうございます!
アドバイス出来ればお願い致します。
毎日の投稿時間を決めました。詳しくはあらすじに書きました。




