第93話:ダリア一家再び
リアース歴3238年 10の月22日9時。
新しい護衛依頼が決まった。
明日の朝このルーラを出発する。
さて、そうなると今日1日はどう過ごそう?
ルーラの街でのんびりと買い物でもしながら過ごすのも良いけど、あの盗賊に出会う確率が増えちゃうからちょっとなぁ。
宿で大人しくしているのも何だしなぁ・・・
やっぱり狩りをしに街の外に出るのが1番かな?
「アイシャ~、この後どうする?狩りにでも出掛けようか?」
「そうねぇ、街で買い物でも・・・ん~、あいつ等と出会うかもしれないからダメか。
貴方の言う通りに狩りにしましょう!」
「了解!」
「イナリもそれで良いよな?」
「キュ!」
(OK!)
と云う事で取りあえず狩りに決まりました。
あまり遠くへは行かずに近場で薬草探しをして、一角ウサギでも狩りながらのんびりとする事にします。
ルーラの裏門を出て、鉄人君にまたがりながら先日買ったオカニカを奏でる。
綺麗な音色が目の前の草原に広がって行く。
「心地良い音色・・・あっ、この曲!」
オカニカの音色をウットリと聞いていたアイシャが気付く。
そう、今奏でている曲は前世の愛子が知っている曲だ。
アイシャがオカニカに合わせて歌い出す。
「・・・生きる事が~ 辛いとか~
苦しいだとか~ いう前に~♪
野に育つ花ならば~ 力の限り生きてやれ~
凍えた両手に~ 息を吹きかけて~♪
しばれた体を~ あたためて~
果てしない大空と~ 広い大地のその中で~♪
いつの日か幸せを~ 自分の腕で掴むよう~
自分の腕で掴むよう~♪」 by 松山千春「大空と大地の中で」抜粋
誰が聞いている訳でもないので、照れる事なく大きな声で伸び伸びと歌ったアイシャ。
歌い終えたその顔は満足顔である。
歌と目の前に広がる雄大な光景がピッタリだな。
この曲を奏でて正解だったかな。
気分が良くなって来たので、続いて愛子が知っていそうな曲を適当に奏で出す。
アイシャもそれに続き歌い出す。
彼女の綺麗なソプラノの声は聴いていて心地良いです。
このまま歌い手としてデビューでもしますかねアイシャ。
ガッポガッポと儲かりまっせ~。
何だかピクニック気分になって来たなぁ。
まぁ、こんな日もたまにはいいかな。
俺達は小川近くで薬草の群生地を見つけた。
狩りは中止にして、今日は薬草摘みのみに変更だ。
昼食と小休憩を入れながら3時間ほど薬草摘みをして、二人で500束くらいは摘んだかな。
これだけの数をポーションにして売ったら銀貨5枚くらいにはなるな。
今日はルーラの最後の夜だから晩飯は豪勢と行きましょうかねぇ。
摘み取った薬草を馬型鉄人君の腰に括り付けた袋に放り込むとパンパンに膨れ上がった。
幾ら何でも少し取り過ぎたか・・・
まぁ、過ぎた事は忘れて早々と帰ろうっと。
俺達はルーラへと引き返す。
帰り道もオカニカを奏でた。
警戒心の強い魔物はこの音を聞けば寄って来ないだろう。
逆に呼び寄せてしまう魔物がいるかもしれないが、そこは深く追求しないで頂けると助かる。
ルーラの裏門までもうすぐ。
晩飯は何が良いかなぁ?と心はすでに晩飯の事で頭が一杯だ。
手前の大きな茂みから急に影が飛び出して来た。
俺は慌てて馬型鉄人君を止める。
「ゲっ!」
あぁ~、まさかここで出会うとは。
泣く子も笑わすあの人達です。
「ゲっとは何よ!ダリア一家に向かって失礼ね全く!」
そう、会いたくなかった盗賊さん達です。
名前はダリア一家さんでしたか・・・覚える気がないので忘れていましたよ。
目の前で盗賊団3人が俺達の行く手を阻んでいます。
「もう、貴方達は昨日から何なんですか?」
気持ちよく歌を歌っていたところを邪魔された我が妻は、怒ってダリア一家に叫ぶ。
「デカパイ少女は黙ってな!本当によくそこまで育ったわよね・・・羨ましい・・・」
「デカパイっ!」
アイシャは絶句して自分の胸を手で隠す。
ダリアさんって言いましたっけ?
我が妻の乳神様が羨ましいんですね。
その気持ち、よ~く分かりますよ。
貴女のその胸じゃねぇ・・・Bカップくらいですかね?
「そこの鉄壁さん。黙ってその肩にいる聖獣を渡して貰おうか?」
「嫌だ!」
「なっ!」
俺は即答する。
今度はダリアが絶句する番だ。
奴らの狙いはイナリだったのか~。
確かに売り飛ばせば相当なお金になるよなぁ。
「アンタ達の狙いはイナリだったのか」
「そ・そうよ!だから黙っておいて・・・」
「嫌だ!」
ダリアが言い終える前にもう1度即答で答える。
「ムキーーー!こうなったら力づくよ、お前達やっておやり!」
「「了解!」でげす!」
「じゃあ、こっちも力づくで!」
「「「え!」」」
力づくで来るならこちらも力づくで通るよ。
黙っている訳ないじゃん!
俺は馬型鉄人君に進めの指示を出す。
鉄人君は頭を下げながら奴らに向かって突進をする。
暴れ馬となった鉄人君を止められるかな?
「なっ!ちょっと止まりなさいよ!」
「嫌だ!」
「と・止まって!」
「無理!」
加速しながら奴らに近づく鉄人君。
「お前達、何とかしなさいよ!」
「「無理ですよ!」げすよ!」
「ちょっと、あっ、た・助けて!嫌~~~!」
盗賊団はルーラに向かって逃げ出す。
やっぱりこいつ等アホだな!
後ろに逃げないで横に逃げれば良いのに・・・
これじゃあ、何時までも追われるかっこじゃないかよ。
鉄人君は盗賊団にぐんぐん迫る。
「嫌~~~、助けて~~~!」
ウ~ン!見ていて本当に楽しいぞこいつ等。
笑い転げてしまいそうだ。
流石は泣く子も笑う盗賊団だな。
ドン!
等々、鉄人君が盗賊にぶち当たった。
当たった勢いで盗賊団3人が吹き飛んでいく。
「覚えてなさいよ~~~・・・」
「「覚えてろ~~~・・・」げすよ~~~・・・」
盗賊団は空の彼方に消えて行く。
ん~、まさに悪役らしい捨て台詞での退場だ。
まるでポケ〇ンのロケット団の様だな。
まぁ、死にはしないだろ。
ルーラから離れれば大丈夫かなと思っていたけど、この調子じゃ後を追いかけて来そうだなぁ。
ハァー、面倒くさいのに目をつけられちゃったなぁ・・・
次回『第94話:新しい街へ』をお楽しみに~^^ノ




