第92話:小悪魔
リアース歴3236年 10の月22日7時半。
変な盗賊に出会った翌日。
俺達は朝一で冒険者ギルドに顔を出した。
次の町への護衛依頼を探しに来たのだ。
あの変な盗賊に絡まれるのはもう嫌なので、早くこの町を出ようと思ったからである。
しかし、生憎と都合良く護衛依頼がない。
ぬ~、どうしよう?
取りあえず、受付カウンターのお姉さんにでも聞いてみようかな。
「すいませ~ん、南か東の方に向かう荷商隊の護衛依頼とかないですかね?」
「掲示板には載っていませんでしたか?」
「ハイ、そうなんですよ」
「そうですか~、こちらとしては掲示板に依頼が無ければ何ともしようがありませんねぇ・・・あっ、そうだ!商人さん達の方に直に聞いてみたら如何ですか?
こちらの掲示板に載るより、早いと思いますけど」
「あぁ、なるほど!分かりました。直接商人さんの方に尋ねてみますね。有難う御座いました」
「いいえ~、大したお役に立てなくてゴメンなさい!」
「そんな事ないですよ!では失礼します」
「あっ、ねぇ君!」
「ハイ?」
「良かったら後で一緒に食事にでも行かない?」
え!それってお誘いで御座いますか?
ウホホ~イ!年上の綺麗なお姉様からお誘いですよ~。
でもゴメンなさいねぇ。
俺、嫁さん一筋なんですよ~。
「申し訳御座いません!俺、嫁がいるんで」
「あらそうなの!残念、好みだったのにぃ~」
「本当にスイマセン!」
「別にいいのよ~」
「では失礼しますね!」
「頑張って下さいねぇ」
「ハ・ハイ!」
なかなか綺麗なお姉さんだったな。
胸も大きそうだったし・・・
「何鼻の下を伸ばしているのよ!」
アイシャが睨んで俺の尻をつねる。
「痛っ!い・痛いってばアイシャ~」
「何長い事話をしていたのよ?」
「別に何も話してないってば~、痛いからつねるの止めてって~」
「フンっ!」
アイシャはプイっと顔を背け、口を尖らせて拗ねた顔をする。
本当に嫉妬深いんだからぁ。
受付のカウンターのお姉さんとちょっと話しただけじゃないかぁ~。
鼻の下何か伸ばしてないぞ~。
あっ、伸びて~ら!
スイマセン。
本当にゴメンなさいです。
俺達の言い争いを先ほどのカウンターのお姉さんが微笑みながらこっちを見て手を振って来る。
それを見てアイシャの目尻が上がる。
キャーーー!アンタ、何やってくれてるんですか?
火に油注いでどうするんだよ~!
「貴方、行くわよ!」
俺の襟首を掴んで引っ張ってギルドを出て行くアイシャ。
キャー、怖いよ~!
カウンターのお姉さんは微笑みながら何時までも手を振っている。
も・もしかして断られた報復だったりします?
責任とれよ~、この小悪魔~!
アイシャに引きずられたまま、俺達はアル商会までやって来た。
アル商会とは、ルーラに来る時に護衛依頼でお世話になった商人のアルさんのお店です。
俺達がこの街で知っている荷商隊で商売するほどの商人さんったらアルさんしか知らないからだ。
それにしても大きなお店だなぁ。
学校の体育館の半分くらいあるかな?
アイシャは俺を引きずったままズンズンと進んで行く。
いい加減、襟首を離して~!
「こんにちは~、アルさんいますか?」
アル商会の入り口に入ってすぐの受付でアイシャが尋ねる。
「社長で御座いますね。少々お待ち下さいませ」
受付のお姉さんが足早に奥に去って行った。
俺はここでようやくアイシャから解放された。
ふ~、苦しかった~。
あの小悪魔のお陰で酷い目にあったでござる。
「おや!ルークさんとアイシャさんじゃないですか!いったいどうしたんですか?」
「あの~、私達出来るだけ早く次の町に行きたいんですけど、アルさんの所で南か東の方に行く護衛依頼の仕事ってありませんか?」
「急ぎの仕事で御座いますか、少々お待ち下さいね。
お~い、誰か荷商隊の日程表を持って来てくれないか」
「は~い!」
奥の方から誰かの声がして、パタパタと足を鳴らしながら予定表を持って来てくれた。
「社長どうぞ!」
「あぁ済まない!えぇ~と・・・あぁ、明日ラドの町に行く荷商隊がありますな。
護衛依頼の方は・・・定員人数は決まっているみたいですなぁ」
「そうですか・・・」
「まぁ、お二人なら追加しても良いでしょう!」
「「え!」」
「この間の道中もお二人とイナリ君に随分と助けられましたからな。」
「「有難う御座います!」」
「キュキュ~!」
(有難う~!)
「明日の7時にここを出発となりますで、それまでに来て下さいね!」
「本当に有難う御座います!」
「こちらこそ、又お願いしたしますね!」
「「ハイ!」」
良かった~、明日この街を出られるぞ。
俺とアイシャは笑顔で喜び合う。
先ほどまでの拗ねた顔が嘘の様に。
これでようやく小悪魔からの呪いから解放された様です・・・
次回『第93話:ダリア一家再び』をお楽しみに~^^ノ




