第76話:爆弾再投下
リアース歴3236年 9の月20日19時過ぎ。
今日の一仕事を終えた俺達夫婦は、冒険者ギルドである人物を待っていた。
「あ!お姉様とルーク様だぁ~!」
「お!アイシャちゃんとルークじゃん、これから飲みにでも行くか?」
ケビン兄妹が冒険者ギルドに入って来た。
一仕事終えて帰って来たところかな?
俺達夫婦が待っていた人物はこいつらではない。
「悪ぃ!今、人待ちなんだよ」
「そうなの、ゴメンね!」
俺とアイシャはケビンとニコルに謝る。
先月のライバル同士の集まりで一緒に飲んだ奴らとはすっかり仲良くなってしまった。
最近は週に3~4回一緒に飲んでいる。
「そっか、俺達兄妹は向かいの店で飲んでいるから、後で来られたら・・・」
「兄さん、お姉様!」
ケビンのお誘いの言葉が言い終える前に、凄い勢いで新たな人物現れた。
毎度の事ながら嵐の様なジークである。
俺と同じ様に髪を伸ばし放題にして、首の後ろの所で1本にまとめている。
長いまつ毛に小顔、そして可愛い顔・・・
もう、お前は女の子にしか見えねぇよ!
ジークは何時もの様に俺に抱き着こうと突進して来る。
「止めろ!」
ゴキっと云う音がする。
鞘の部分でジークの頭とてっぺんを叩いたのだ。
師匠直伝の鞘チョップである。
「痛っ!兄さん酷いよ~」
ジークが頭を押さえて床にうずくまる。
ウケケケケ!鞘チョップ気持ちが良いわ~。
しかし、毎度の事ながらジークも飽きないねぇ。
少しは学習しろよ。
うっ、涙目でこっちを見るなよ~、つい欲情しそうになるじゃないか。
「ジークちゃんは相変わらずねぇ!」
「キュ!」
(本当だねぇ!)
「て・天使だ!」
「「「え?」」」
ケビンが突然変な事を言いだす。
俺とアイシャ、ニコルが声を上げる。
ケビンの目が♡型になっているぞ。
こ・こいつは・・・ぶれない奴だよ本当に。
「我が愛しの天使よ!私とお付き合いして頂けないでしょうか?」
ケビンは片膝を付いて、床にうずくまっているジークの手を取る。
今、歯がキランと光ったぞ!
ケビンよ、君は先日までアイシャを女神様と言って口説こうとしていなかったか?
ベレットと同じで女に見境がないじゃないか。
「何言っているのよ、ジークちゃんは男の子よ!」
俺が心の中でケビンに毒づいていると、アイシャがため息をついてケビンに突っ込みを入れる。
流石、最近突っ込み役のアイシャ。
「え~~~!」
「ウ・ウソ~?」
ケビンは悲鳴を上げ、ニコルは驚いた顔をする。
「お・俺の天使ちゃんが男の子・・・」
ヘナヘナと床に崩れたケビン。
彼は真っ白に燃え尽きていた。
(燃えたよ、燃え尽きた、真っ白にな・・・ by 矢吹ジョー)
ジョー!
前にも似たような展開があった様な・・・
冒険者ギルドの真向かいの居酒屋に行くと、レミオン達主従はすでに飲んでいた。
「あれ?ケビンどうしたの?」
レミオンがケビンの様子を見て聞いて来た。
ケビンは屍の様だった。
口から魂が抜け出ている様だわ。
「バカ兄は、又失恋したのよ。バカが移るから放っておいて良いわよ!何時もの事だし」
何気にサラッと酷い事言うねぇニコルちゃん。
まぁ、ニコルちゃんの言う通り、ケビンは放っておこう。
「お!そちらのカワイ子ちゃんどちら様?」
ベレットが目を輝かせてジークに食付く。
流石に美少女?には目が早いな・・・男の子だけど・・・
「僕、男の子です!」
「「「え?」」」
レミオン主従が驚きの声を上げた。
久しぶりにセンバさんの声聞いたよ。
まぁ、皆驚くよな。
「ジークは俺達夫婦の義弟で、1カ月に1回この町に依頼で来るんだ。
まぁ、これからよろしく頼むよ!
ジーク、こいつらは俺達夫婦のライバル&友達だ。ちゃんと挨拶しろよ」
「僕はルタの村ジークで12歳です。兄さんと同じ孤児園で育ち、兄さんとは義兄弟です。
アイシャお姉様の下僕ですが、お姉様同様に兄さんを愛しています。
以後、よろしくお願いします!」
ジークの久々の爆弾投下です。
サラっと言ったけど、破壊力が凄まじいかなりデカイ爆弾です。
場が完全に凍り付いています。
皆の視線が痛いです。
アイシャはジークの『下僕』発言に身をプルプルして恥ずかしそうにしています。
あ、ヤバい!
ギャー、撤収だ撤収!
避難勧告を発令せよ~。
全員、持ち場から速やかに離れるんだぁ~。
乳神様が夜叉に闇落ちだ~。
ウェ~ン、怖いよ~!
「ジ・ジークちゃんのバカーーー!」
「ヒィーーー!」
アイシャの凄まじい怒号とジークの悲鳴が響き渡る。
あまりの怖さに誰もがブルブルと震えていた。
「エターナの聖女がエターナの夜叉に闇落ちした!」
そんな噂がエターナの町にあっという間に広まって行った。
以後、町の住人はアイシャの事をエロい目で見る者はいなくなったと云う・・・
「私は夜叉なんかじゃないもん!」
俺の胸で泣くアイシャ。
俺はそんなアイシャの頭を優しく撫でながら・・・震えていた。
次回『第77話:お預け』をお楽しみ~^^ノ




