第75話:ライバル
ライバル。
それは好敵手。
それは競争相手。
ライバルの存在は大きい。
負けたくないと云う気持ち。
その気持ちが己を向上する力となる。
今、ルークにライバルが現れる・・・
リアース歴3236年 8の月24日9時前。
俺達夫婦は変な兄妹に絡まれていてドン引きしていた。
「ケビン、トイレの前で何を騒いでいるんだ?」
ゲっ!又一人増えたよ。
今度もイケメンさんですか。
綺麗な金髪で、青い瞳の涼しげな眼差しですなぁ。
ち!こいつも俺より背が高いや。
着ている鎧も立派だし、何処かのお坊ちゃまか何かでしょうかねぇ?
ハァー!俺の周りはイケメンばかりで本当に嫌になるよ・・・
「レミオンか!聞いてくれレミオン。俺は失恋をしたんだ」
「失恋?」
「あぁ、こちらの女性に一目惚れをしたのが、すでに亭主がいたんだ」
「こちらの女性?・・・!」
ケビンと呼ばれた男が、アイシャを見て又泣き出した。
レミオンと呼ばれた男はアイシャを見て驚いている。
こいつもアイシャに惚れた口かな?
もう勘弁してくれよ。
「お・俺の女神様が!」
「「お前の女神様じゃねぇよ!」」
俺とレミオンが同時に声を上げた。
俺とレミオンは顔を見合う。
「「プッ!」」
又もや二人して吹き出す。
「「アハハハハハ!」」
そして盛大に笑い出した。
アイシャもククっと声を出さずに笑っている。
「何だよお前ら!人の失恋を笑いやがって・・・」
別に可笑しな事があった訳じゃない。
でも、何だか妙に笑えたんだ。
何故か暖かい気持ちになったんだよなぁ。
「お前ら、何を馬鹿笑いしているんだ!」
又々一人増えたよ。
あ!今度はベルクーリさんでしたか。
「「「ギルド長!」」」
俺とレミオン、そしてケビンも同時に反応する。
「お!期待の新人が勢揃いか」
「「「期待の新人?」」」
「そうだ!ルーク、レミオン、ケビン、お前ら3人はこの町の期待の新人だ。
誰が先にDランクに上がれるか賭けの対象にもなっているからな。
ライバルとしてお互いに切磋琢磨して頑張れよ」
賭けの対象ってオイオイ。
「ギルド長!私は期待の新人じゃないのかしら?」
アイシャが、自分の名前を呼ばれなかった事が不服だったのかベルクーリさんに詰め寄る。
「落ち着けアイシャ!お前はルークと込み扱いで言わなかっただけだよ。そういきり立つな」
「ブー!」
口を尖がらせてアイシャが拗ねる。
フッと愛子が父親とじゃれ合っていた時を思い出した。
アイシャにとってベルクーリさんは父親なんだな。
「女神様!拗ねたお顔も可愛い~」
「「だから女神様じゃねぇよ!」」
又二人して突っ込みが入る。
レミオンとは気が合いそうだな。
「ライバルか・・・何だかそう云うの良いよな!よし、ライバル同士親睦を深めると云う事で、これから皆で飲みにでも行こうぜ!」
ケビンが俺とレミオンの肩を抱いて来る。
暑苦しい男だな本当に。
「「朝っぱらから行かねぇよ!」」
「バカなの!」
「お兄ちゃんって本当にバカ!」
俺とレミオン、アイシャ、ニコルが突っ込みを入れる。
俺達の騒動を見ていた人達からもため息が出ていた。
ケビンがしばらく駄々を捏ねていたが、今夜もう1度集まって飲む事で何とか折れた。
ベルクーリさんやフォッカーさんも来るらしい。
俺達を肴にして飲みたいだけだなと勘繰る俺。
そして、俺達はそれぞれ今日の仕事のためにギルドから出掛けて行った。
何時もの様にエターナ森林で薬草摘みとビッグラッドの駆除をした俺達夫婦が18過ぎに冒険者ギルドに戻って来た。
ビッグラッド12匹、一角ウサギ2羽、薬草100束分で、銀貨2枚と大銅貨9枚。
後で残りの100束分の薬草をポーションにして銀貨1枚となるので、合わせると銀貨3枚と大銅貨9枚の稼ぎとなる。
ギルドポイントはイマイチだが、お金の方は今日もホクホク。
アイシャがギルドに預けてある夫婦共財産の残高を確認してニヤニヤしている。
結構溜まって来ているのかな?
最近はアイシャに財産の管理を任せっきりな俺であった。
俺達夫婦は約束してあった冒険者ギルドの真向かいにある居酒屋に行く。
俺達夫婦が結婚披露宴をしたあの居酒屋だ。
「オーイ!こっちだこっち」
ケビンが立ち上がって俺達夫婦を呼ぶ。
テーブルを2つ合わせて、レミオンを含めてすでに5人が座っている。
2つの席が空いているので、俺とアイシャを入れて7人になるのか。
「俺達夫婦が1番最後みたいだな。待たせた様で申し訳ない」
「俺達も先ほど来たばかりだから気にしないでくれ」
ケビンがニコニコと答える。
こいつは意外と人当たりが良さそうなタイプだな。
朝は俺をモブ扱いしたけど・・・
「お姉様は私の隣りにどうぞ!」
「え!う・うん」
ケビンの妹がアイシャを手招きする。
アイシャはニコルの隣りに座り、俺は更にその隣りに座る。
兄妹揃ってニコニコだな。
朝の俺への態度はなんだったんだ?
「二人共取りあえずエールで良いかな?」
俺が座った席のアイシャとは逆隣りになるエミオンが聞いて来た。
「「うん!」」
俺とアイシャが同時に答える。
「ここエール2つ追加~!」
「はいよ~!」
ケビンが大きな声で注文をし、居酒屋の女将さんがそれに答える。
エールはすぐに届いた。
「さて、エールも来たのでまず乾杯をしよう。その後でお互いに自己紹介をしようか」
ケビンがエールの入った瓶を片手に持ち立ち上がる。
皆のエールの入った酒瓶を持つ。
「乾杯!」
「「「「「乾杯~!」」」」」
う~ん!冷たくて美味しい。
こののど越し感がたまらん。
一仕事した後のエールは格別じゃのう。
この後、言い出しっぺのケビンから順に自己紹介が始まった。
ケビン16歳。交易都市ルーラ出身で、剣と盾を使い、加護なし。
最初の出会いが最悪だったが、人当たりは悪くないし、輪の中心となるリーダータイプの男だな。
ニコル14歳。兄と同じくルーラ出身で、弓を使い、加護なし。
妹の方も出会いは最悪だったが、話してみると兄に似て人当たりは割と良い。美少女だがちっぱいなのが残念だな・・・ちっぱいなのが。重要な事だから2度言いました。
ゴメンなさいです!
アイシャと俺の事は取りあえず置いておいて。
レミオン15歳。海洋都市エドナを治めるエドナ子爵の3男。槍を使い、水の加護持ち。
話をしてみると、他人との間に壁を作っている感じがする。前世の俺に似た感じだ。
でも何だか俺と相性が良さそうな気がする。
センバ34歳。レミオンのおもり役。斧使い、土の加護持ち。
兎に角無口。ひたすらと酒を飲んでいるだけです。
ベレット18歳。レミオンの従者。短剣使い、加護なし。
見た目通りチャライ。常に女の尻を目で追っている。
以上が各々の自己紹介であった。
自己紹介の後は適当に飲んで食べて親睦を深めようと云う事になった。
別に親睦を深める必要あるのか?と突っ込みを入れたかったが我慢した。
アイシャとニコルはイナリのモフモフを堪能しながら、恋バナなどで話が盛り上がっていた。
ベレットさんは女性を口説きに他の席を回り、センバさんは一人黙々と飲んでいる。
残った俺とケビンとレミオンは、魔物の事や報酬の事、Dランクに向けての事など、下らない話も含めていろいろな話をした。
話の主導権は常にケビンで、どちらかと云うと話下手な俺とレミオンがケビンの話について行く感じだ。
時には貴重な情報交換、時には馬鹿笑いと、時間はいつの間にか23時頃になっていた。
考えてみれば、同世代の同性と酒を飲みながらこんなに会話をするのは、前世を踏まえても初めてかもしれないな。
最初、この場に来るまでは非常に面倒くさいなと思っていた俺であったが、今こうやって話している事がとても楽しかった。
ベルクーリさんは俺達の事をライバルと言っていた。
確かに同世代の同じ冒険者でライバルとも言って良い間柄かもしれない。
ライバル=友!
前世の記憶で、そんな内容の本を読んだ気がする。
俺の心の中ではそんな気持ちが芽生え始めていた・・・
次回『第76話:爆弾再投下』をお楽しみに~^^ノ
ん!爆弾?そう、あの方が再登場です^^;




