第71話:新装備
リアース歴3236年 8の月10日。
昨日の夕方、レッドベアの変異種を倒して村に持ち帰ると村中が大騒ぎとなった。
死んでいるとはいえ、普通のレッドベアより一回りも大きい変異種の姿は、村人を震え上がらせる。
冒険者ギルドに持ち込むとギルド長代理のロットさんやギルド職員、冒険者の人達から質問攻めにあった。
どうやってこのバカでかい魔物を倒したのか?
まぁ、予想していた通りに聞かれましたな。
その質問に関して、俺やアイシャは・・・
「企業秘密です♡」
と言って全てそれで突き通した。
ロットさんは仕事柄しつこく聞いて来たが、俺達の答えは変わる事がなかった。
先ほど、ギルド職員の解体屋さんに聞いた話だと、変異種の素材や肉を捌くのに昨夜までかかったそうだ。
素材はどれも一流品、肉質も超一流と教えて頂き、俺もアイシャもホクホク顔です。
肉は全部村に提供したので、今晩も又、村の皆で肉祭りをする事に決まりました。
村長さんが酒の手配が大変だとぼやいていましたよ。
俺達は今、変異種の皮を持ってポム爺さんの防具屋に向かっている。
ポム爺さんとは、古くからこの村で防具屋を営んでいる職人さんです。
若い頃は交易都市ルーラで有名な防具作りの職人さんだったらしいけど、酒に溺れて店を潰して評判を落とし、以後、逃げ出してこの村に流れ着いたと云う噂です。
ちなみにこの村では酒を飲んでいる姿しか見た事ないです。
「ポム爺さんって、肉祭りの時もひたすらお酒を飲んでいたあの人の事よねぇ?」
アイシャが俺の顔を覗き込んで聞いて来る。
「そうだよ!」
「本当に大丈夫なの?」
ちょいと不安そうな顔のアイシャ。
実は俺も少し不安です。
「俺も一抹の不安はあるけどロットのおじさんの推薦だからねぇ。まぁ大丈夫でしょ」
実は新装備を作るに当たって、前々からロットさんに相談していました。
それでポム爺さんの所を薦められたのです。
「本当に大丈夫かしら・・・」
アイシャはかなり不安の様です。
そんな話をしていると、すぐポム爺さんの防具屋に着く。
狭い村だからね・・・
「ポム爺さんこんにちわ~!」
防具屋のドアを開ける。
う!店の中から酒の臭いが。
うわ~、部屋が埃っぽいや。
「お!ルークか?・・・ヒック!・・・遠慮せず入って来い」
やっぱり飲んでるなぁ。
本当に大丈夫かいな。
「あ、こんにちは~」
アイシャも遅れて挨拶をする。
「ほい、こんにちは!・・・ヒック!」
ダメだこりゃ。
でも、ロットのおじさんの推薦だし仕方がないか。
「ポム爺さん!俺達夫婦の新しい防具を頼みたいんだけど。この変異種の皮でさ」
鉄人君が運んで来た皮を手に取りポム爺さんに渡す。
う!重い。
「ほほう!良い皮じゃの」
ポム爺さんの目が光った・・・気がする。
ポム爺さんは皮を触りしげしげと見ている。
「でしょ!お願い出来る?」
ポム爺さんが俺とアイシャの顔を見る。
「良かろう!デザインはどんな風が良い?」
職人の目になった。
これが本気になった職人の目なのね・・・酔っているけど。
「あの~、デザインって私達が決めても良いんですか?」
アイシャが恐る恐る聞いて来た。
「勿論構わん!しっかりとしたデザインがあるなら、ワシはそのデザイン通りに仕上げるだけじゃ」
ポム爺がニヤリと笑う。
う!ちょっと顔怖いよ。
「ねぇ、貴方!私がデザイン描いてもいいかしら?」
突然、アイシャの目が輝き出した。
あ!そうだった。
前世の愛子って服をデザインしたりするのが大好きだったっけ。
俺と一緒に遊んでいたファイナルファ〇タジー14では、クラフターのゲーマーとしてかなり有名だったんだよなぁ・・・
「い・いいよ!」
「ポム爺さん、紙とペンあるかしら?」
真剣モードに突入しちゃった。
これはもうアイシャに全て任せるしかないな。
あれこれ口出ししたら怖そうだ・・・
「お・おう、これを使ってくれ!」
ポム爺さんは紙とペンをアイシャに渡した。
アイシャは早速フリーハンドでサッサッと描いて行く。
「F〇14で大好きだったソーリアンレンジャータバードをベースにして・・・ここはこうしてと・・・あ!ここはこんな風が良いかしら?」
アイシャがブツブツと独り言を言いながら楽しそうにデザインを描いている。
ポム爺さんは防具作りの準備を始め、俺は暇そうにアイシャが出来上がるのを待つ。
20分くらい経った。
「出来たわー!ねぇ、貴方見て」
「どれどれ?」
ジャケットじゃなくロングコート?ん~、ロングジャケットと云うべきか。
全体的に黒がベースのデザイン・・・中二病みたいだな。
へぇ~、ジャケットの裾が左右で長さが違うのか。
右側は膝丈くらいで左側が腰くらいまでか・・・この世界では何とも奇抜な。
太もも位までのロングブーツか・・・これはまぁ良さそうだな。
腕の部分は俺とアイシャで違うデザインなのか。
アイシャは手から肘にかけて皮オンリーで出来ており、俺のは手甲と肘の部分だけ鉄が加えられている。
外套はシンプルだけど、内側がポケット一杯あったりして便利そうだな。
まぁ、そんなに悪目立ちしないから良いか。
「うん!良いんじゃない。俺はこれで構わないよ」
嫌だとは絶対に言えないです。
「本当!良かった~。ポム爺さん、これでお願い出来ますか?」
「どれ?・・・ふむふむ・・・変わったデザインじゃのう。
まぁ、これくらいならお安い御用じゃ、任せておけ」
ポム爺さんがウィンクをした。
うげぇ、キモイから止めて。
「ヤッター!楽しみだね貴方」
「う・うん!あ、お代の方はどれ位かかりそうですかね?」
アイシャには頷いてみせて、ポム爺さんの方を見る。
これだけ奇抜なデザイン・・・金の方が心配だな。
「余った皮を貰えるなら金は要らねぇぞ。むしろ、こちらから金を出さなきゃならない位じゃ」
「え!そうなの?ん~、だったらこのイナリのも分も作って貰えるかな?
ポム爺さん、それでチャラにしない?」
だったら次いでにイナリもお揃いで作って貰おう。
イナリも大事な家族だからな。
「こいつの分もか!ん~、それでもワシの方が大分得をすると思うが、それで本当に良いのか?」
「それで良いよ!その代わり、頑丈に作ってよね」
「分かった!任してけ」
「いつぐらいで出来そう?」
「1週間くらい見て貰えるか?」
「OK!これで商談成立~!」
俺は両手でVの字を作る。
「では、寸法を測らせて貰おうかの?まず嫁さんからじゃ」
ポム爺さんはアイシャを指した。
「あ、ハイ!」
アイシャは手を広げて真っ直ぐに立つ。
ポム爺さんはメジャーみたいな物を取り出しアイシャの寸法を測って行く。
「この乳は本物かの?」
ポム爺さんがアイシャの胸を人差し指で突いた。
「キャーーー!」
アイシャが特大の悲鳴を上げる。
「このエロ爺が~!」
俺の乳神様を触りやがったなぁ。
俺は右手を固く握りしめ、怒りの鉄拳を繰り出そうとする。
成敗してくれるわ~。
「オホ!スマンスマン。あまりにも立派な乳神様じゃからつい」
「乳神様?」
乳神様の名に反応して怒りの鉄拳が止まる。
「そうだ!ワシは乳神様愛好者じゃ。ルーク、さてはお主もじゃな?」
ポム爺さんの目が光った・・・今度は本当に光ったんだよ。
「う・うん!」
俺は思わず頷いてしまった。
「同士じゃな!」
その言葉に高揚する俺。
同士か・・・う~ん、何と良い響きなんだ。
ん?何だか寒気がするなぁ。
「あ~な~た~!」
ヒィーーー!
振り向くと夜叉が居た!
「「キャーーー!」」
俺とポム爺さんの悲鳴が上がる。
その悲鳴は村全体に届いたと云う・・・
新防具はFFネタですんません^^;
次回『第72話:発想力』をお楽しみに~^^ノ




