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リアース戦記 ~鉄壁のルーク~  作者: ナナすけ
新人冒険者の章
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第68話:新婚生活

 リアース歴3236年 7の月27日。


「貴方!朝ご飯出来ているから早く起きて。イナリちゃんも起きてね」


 チュ!と軽く頬にキスをして俺を起こすアイシャ。

 俺はウーンと背伸びをして起き上がる。

 実家?

 そうだだった、帰って来たんだよね。

 まだ半分寝ぼけているのか頭の回転が遅い。

 アイシャはイナリを連れて台所へ戻って行く。

 昨晩、師匠達と晩飯を食べながら会話をした後は、旅の疲れからかすぐにアイシャと寝てしまった。

 師匠とジークは食事の後、孤児園へ帰って行った。

 俺とアイシャが我が家に帰省している間は、俺達の邪魔をしない様に孤児園で寝泊まりしてくれるのだ。

 気を使わせてしまって本当に申し訳ないです。

 ん~、台所の方から良い匂いがして来る。

 アイシャは先に起きて朝ご飯を用意してくれたんだな。

 宿と違って新婚夫婦って感じが半端ないな。

 とても幸せな感じだ。


「ねぇ、起きたの~?」


 台所の方からアイシャの声がする。


「起きているよ~」


 俺は慌てて着替えて台所に向かった。

 テーブルの上にはすでに朝食が用意されている。

 パンにコーンスープ、スクランブルエッグと山鳥の肉の燻製もある


「さぁ、早く顔を洗って食べましょう!」


 アイシャは鼻歌まじりでテキパキと動いている。

 エプロン姿のアイシャが新鮮~。


「アイシャは朝から機嫌良さそうだね!」

「何だかね、こうやってエプロンをして朝食の準備をしているとね。

 新妻って感じがして凄く幸せなのよ」


 身体をクネクネしながら喜ぶアイシャ。

 又もや一人の世界に入っちゃいました?

 オーイ!帰っておいで~。


「アイシャはエプロン姿も可愛いね。俺も何か新婚って感じがして凄く幸せだよ」

「可愛いって・・・ウフフフ!嬉しいわ。ありがとう」


 頬を赤らめて照れ出すアイシャ。


「今度はさぁ・・・は・裸エプロンして欲しいな!」


 俺の願望をストレートで言う。

 男は皆、裸エプロンが大好きなんだよ。

 そうだよね皆!


「バ・バカ!・・・もうエッチなんだから~・・・今度ね!」


 照れ怒りながらも最後には小さな声で承諾が出た。

 ウホホ~~イ!


「やったー!楽しみだなぁ」


 妄想するだけでにやけてしまう。

 ムスコちゃんも喜んでいきり立って来ちゃったよ。

 これから朝食だ、静まれ静まれ。


「もう!エッチな事は考えなくて良いから、早く朝食にしますよ」

「ハーイ!」


 これ以上バカな事を言っているとアイシャが本当に怒り出しそうだ。

 俺は素早く顔を洗い、夫婦プラス1匹で朝食を始めるのであった。

 アイシャの朝食は美味しかった。

 リアース世界の味付けは、地球よりも全体的に薄味だ。

 調味料の種類や塩の生産量が影響しているのかな?

 今朝のアイシャの朝食の味は、昔の愛子の頃の味がした。


「美味しい!懐かしい味だ・・・」


 スクランブルエッグを食べながら俺はボソっと言った。


「分かった?」


 アイシャが俺を見つめて答える。


「うん、愛子の味がした!」

「やっぱり分かってくれたんだ、嬉しいな」


 アイシャはニコリと笑う。

 そして、ちょっと悲しそうな顔になった。


「何だか悲しそうだね?どうかしたの?」

「初めて貴方のために朝食を作ろうとした時にね、どうしても『美味しいね』って言って貰いたくて、何を作ろうか考えていたの。

 そうしたら、前世の味付けにしたら喜んでくれるかな?ってね。

 それで昔の味付けで作っていたら、ちゃんと気が付いてくれるかな?と余計な事まで考えちゃって・・・そして、貴方は美味しいって言ってくれた。昔の味を覚えていてくれた。

 凄く嬉しかったわ!それで今、フっと思ったの。

 この昔の味付けは前世のお母さんから教わった味なんだなぁって。

 そして家族の事を思い出しちゃって・・・」


 悲しそうな原因はそれだったのかぁ。


「おばさんのカレーライス美味しかったよね。俺の母さんの味より好きだったなぁ」

「そんなこと言ったら京ちゃんのお母さんが怒るよ!」


 アイシャの顔が少し和らいだ。

 良かった~。


「アイシャ、今度はおばさんのカレーライス作ってよ。あの味忘れられないんだよなぁ」


 前世の事を一人で思い出して悲しむ事はないんだよ。

 俺もいるんだし、二人で昔の事を一杯思い出そうよ。

 悲しい事だって俺が笑顔に変えてみせるさ。


「この世界にお米あるかしら?香辛料も高そうよ」


 笑顔に変わるアイシャ。

 いつものアイシャに戻って来たかな?


「お米もどきはクの国で手に入るらしいよ。前に師匠が言っていた」

「え!お米あるんだ」

「高いらしいけどね。クの国では香辛料も何でもあるみたいだよ」

「え、高いの~!だったら無理じゃない」

「貯金も溜まって来ているし、少しくらいは大丈夫だよ。

 それにそう云う楽しみもないと人生つまんないよ」

「もう少し貯めないとダメです!」

「え~!だったらさ~、昔の味を再現して商売でもしようか?

 プリンやチョコレートとかは異世界物語の内政あるあるじゃないですか」

「そんなに上手く行かないわよ。もう、バカな事ばっかり言うんだからぁ」

「別に良いじゃん~!」


 朝食の会話は楽しい話に変わって行く。

 二人で笑いながら食べる食事は格別に美味しいよね。

 これからこんな毎日が続いて行くんだよ。

 俺達はもう夫婦なんだからさ。


次回『第69話:奴を求めて』をお楽しみに~^^ノ

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