第6話:九尾の妖狐の子
リアースには沢山の魔物が存在するが、聖獣と云う存在もいる。
魔物とは人に災いを成す存在。
聖獣とは人を災いから守る存在。
神が使わした存在とも言われている。
聖獣は神と同等に崇拝される存在。
リアースはそんな生物がいる世界・・・
リアース歴3225年 4の月11日。
ルタの村には春夏秋冬があります。
日本の緯度と近いからなのでしょうか?
あれだけ積もっていた雪がすっかり解けて、少しずつ暖かくなって来た今日この頃。
ラウラ大山脈の山頂にはまだ雪が残っていますが、雪解けの水が麓の村々を潤して、草木が生えだして大地が青々として来ました。
ルタの村の畑作業も盛んになって来ましたよ~。
土の精霊術を練習し始めてから半年くらい経ちました。
ウォールやピートはマスター出来ました。
ストーンエッジやサンドストーム、ゴーレムは只今特訓中であります。
ゴーレムは特に難しいわ~。
聖の精霊術の方も教会で一生懸命頑張っていますよ。
体力や傷を治すヒールの外にも、解毒や麻痺などの状態異常を治す『エスナ』を覚えました。
これで何かあっても自分である程度癒す事が出来そうです。
もし、前世でヒールやエスナを使えたとしたら、愛子を助ける事が出来たのであろうか?
いつまで経っても俺って奴は・・・
聖の精霊術も覚えなきゃならない術がまだまだある。
これからも頑張らねば。
剣術の方は・・・まだ教えて貰っていません。
絶賛、走り込み中であります。
あ!絶賛の使い方が変ですね。
黙々とただひたすらに走っております。
早く剣術も教えて欲しいです。
そんな練習や特訓を続けていたある日。
夜遅くに父が狩りから帰って来ると、父の腕に小さな白いモフモフの毛をした生物が抱かれておりました。
モフモフだぜ、触りてぇ~。
「ルーク、今帰ったぞ~!」
父は疲れた顔をしていた。
父の顔や手、外套や皮の鎧の所々に血が付いていました。
「お帰り父さん!その白いモフモフは何?それにどうしたの、その恰好?」
父さんの事も気になるが、モフモフの方がもっと大事。
ゴメンね父よ!
「まず水を一杯くれ!喉がカラカラだ」
俺は慌てて台所に水を汲みに行った。
「ハイ、父さん水」
「ありがとうルーク」
ゴクゴクと喉を鳴らして勢い良く飲み干す父。
「フー、生き返った!ルーク、隣りのロニエおばさんに頼んでヤギのミルクを貰って来てくれないか。この一角ウサギの肉と交換と言ってくれ」
「ヤギのミルク?」
「この子に飲ませなきゃならん。急げ!」
俺は又もや慌てて隣りの家に駆け出して行ったのだった。
もう使いパシリさせて~。
父が白いモフモフにミルクを上げると「キュッ!キュッ!」と鳴いてミルクを舐め始めた。
リスくらいの大きさかな?
尻尾がフサフサだぁ~。
小さくて可愛い~。
癒されるわ~。
狼の子かなぁ?狐っぽい感じもするなぁ。
父はミルクを舐める姿を見て安心すると、血の付いた皮の鎧を脱ぎ出して、風呂場に身体を洗いに行った。
俺はその間、モフモフから少し離れた所で見つめていた。
だってさ、先ほどちょっと近づいたら「フー!」威嚇したんだぜ。
泣いちゃうよ俺。
あぁ、モフモフ触りてぇ!
サッパリした姿で戻って来た父は椅子に座り、今日1日あった事を、順を追って話し始めた。
「父さんが、朝日が昇る前からラウラ大山脈に狩りに出かけた事は知っているな?」
「うん、知っているよ」
「昼頃には大山脈の中腹の近い所まで行ったんだ。
そこで偶然、魔物同士の争った形跡を見つけたんだよ。
辺りは血の海だった・・・
シルバーウルフ(狼の魔物)の群れと九尾の妖狐が争った様だった」
「九尾の妖狐だって!?」
俺は驚いて、つい声を出してしまった。
妖怪の類いまでいるのか~
何でもいるなぁ~この世界。
「お!お前、『聖獣』の九尾の妖狐を知っていたのか。
物知りだなぁ~、流石俺の子!」
流石俺の子!じゃねぇよ親馬鹿。
あれ?今、サラっと重要な事言わなかったか?
「今、聖獣って言った?」
「九尾の妖狐は聖獣だぞ、ルーク。それは知らなかったのか?」
「九尾の妖狐って妖怪じゃないの?」
「妖怪?なんじゃそら?」
え?妖怪じゃないの?
聖獣扱いなの?
「あ!いいのいいの。何でもないから話続けて」
「え~っと、シルバーウルフと九尾の妖狐の戦った形跡まで話たんだったな」
「そうだよ」
「父さんが見た時には、この子以外は全部亡骸だったよ。
この子の兄弟らしい2匹もダメだった・・・
これは父さんの予想だけど、子を産んだばかりの弱った九尾の妖狐にシルバーウルフの群れが襲い掛かったんじゃないかなぁ?
九尾の妖狐親子には食われた形跡がなかったから、シルバーウルフの群れを何とか撃退したけど、それで力尽きたって感じじゃないかなぁ?
俺がこの子を見つけた時、この子もかなりヤバかったからなぁ。
俺の持っていた水を取りあえず全部飲ませて、それからはもう全力疾走で帰って来たんだ」
「そうだったんだぁ・・・あ!ミルクが空だ。よっぽどお腹すいていたんだねこの子。
父さん、もう少しミルク足す?」
「あぁ、頼む」
俺は空になった器にミルクを注ごうとした。
すると、子狐はビクっと身体を震わし「フー!」と俺を見て威嚇し出した。
あ!これは・・・
俺の頭の中で(ラン!ランララランランラン~♪)と風の谷のナ○シカの音楽が流れ始めた。
こ・これは、動物と仲良くなるイベントってやつだな!
(馬鹿な俺ですいません)
俺は威嚇している子狐に向かって、そ~っと右手の人差し指を差し出した。
「おいで、さぁ!」
(さぁ、噛むのだ子狐よ!)
「おっ、おい!」
「痛っ!」
(おほー!来た来た来たー!)
案の定、子狐は俺の指に噛みついた。
血が出て来ました。
「怖くない!ほら、怖くない・・・ってギャー!痛ぇ~!」
(ぶっ飛ばすぞこのガキャー!)
俺はあまりの痛さから、ブンブンと噛まれた右手を振り回した。
子狐は、振り回される手から噛むのを止めて、空中に放り出された。
空中でクルっと回転して姿勢を戻す。
そこを父が両手で捕まえた。
「危ないじゃないかルーク!」
「だって噛んだんだもん!」
俺はブーブーと文句を垂れた。
(ナ○シカのバッキャロー!)
「もう、これから家族になるんだから仲良くしてくれよ」
「キュっ!」
あれ?今、返事した?
「父さん、今、こいつ返事した?」
「聖獣は頭が良いって云うからなぁ。俺達の言葉を理解しているのかもな?」
そんなアホな?
生まれてすぐ人間の言葉が分かるって・・・それってチートじゃんか。
父の言う事に素直な子狐。
俺と九尾の妖狐の子は、こうして出会ったのであった・・・




