第67話:帰省
リアース歴3236年 7の月25日。
披露宴の後、宿で1日ゆっくりと新婚気分を味わった。
俺は腰が抜けるほどアイシャを抱いた。
二人でイチャイチャしまくったのだ。
アイシャは暇さえあれば結婚指輪を見てニヤついている。
本当に夫婦になったんだなぁと実感が湧いて来た。
「あ・貴方!明日は何時頃ここを出るの?」
アイシャは恥ずかしそうに俺を見ている。
明日はルタの村に行くんだけど・・・今、貴方って言った?
「あ・貴方?」
「貴方って呼んだらダメ?昔からそう呼ぶのに憧れていたんだけど・・・」
上目遣いでおねだり口調で話すアイシャ。
ウキャー!メチャメチャ可愛い。
「い・良いよ」
「ありがとう、あ・な・た!」
真っ赤になって照れながら言う。
ダメだ!もう堪りません。
俺はアイシャを押し倒す。
「あ、コラ!ちょっと・・・あ、あぁん・・・貴方、ダメ・・・」
アイシャの甘い喘ぎ声が響く。
外の暑さより熱い営みが再開される。
イナリは完全に夏バテをしていた・・・
26日の朝早く、俺達は穴熊亭を出た。
予定では2~3週間戻って来ないので、長期宿の契約は今日で一旦解除している。
郵便依頼のついでで披露宴に出席してくれたジークは一足早く昨日帰ってしまっている。
馬型の鉄人君に乗りながら、少しゆっくりしたペースでルタの村へと向かう。
手綱を持つ俺の前にアイシャが座る。
イナリは鉄人君の頭の上で最早寝る体制になっている。
雲が静かに流れている。
今日も暑くなりそうだ。
エターナの町の周りから出た事がないアイシャは、今回が初の旅である。
大自然あふれる景色に圧倒されている様だ。
ラウラ大山脈が近くなって来るに連れて、アイシャの興奮度が増す。
少し子供っぽくはしゃぐアイシャを見ていてこっちも楽しくなって来る。
道中、前世で好きだった歌を二人で日本語で歌う。
イナリは聞きなれない日本語に変な顔をしていたけど、途中から知らんぷりを決め込んで寝ていた。
あぁ、楽しいなぁ!
俺はしみじみと思う。
前は俺とイナリだけの旅だった。
イナリが居てくれたから特に寂しくはなかったけど、愛する人と一緒の旅はこうも世界が変わってしまうものであろうか?
俺には見慣れた景色だけど全然違って見えるのだ。
鉄人君が道なりにひたすら西へ西へと進んで行く。
「ねぇ、貴方。魔物ってあまり出て来ないの?」
旅が半分進んだ所で、不意にアイシャが聞いて来た。
少し飽きて来たかな?
「この辺は周りが大草原だから昼間はたまに一角ウサギが顔を出すくらいかなぁ。
夜になると、シルバーウルフが出て来るから危ないけどね。
どちらかと言えば、エターナの町の近くの方が大森林の影響で危ないよ」
「そうなんだぁ。最初、町を出た頃は緊張していたのだけど、全然魔物が出て来ないから何か拍子抜けしちゃったわ」
「もしかして、今までは緊張を隠すための空元気だった?」
「ち・違うわよ!」
あ!正解だったか。
もう素直じゃないなぁ。
でも、そんなところも又可愛いけどね。
「まぁ、何か近づいてくればイナリが教えてくれるし、そこまで緊張する事はないよ」
「そっか、イナリちゃんがいるから安心なのよね」
「キュ!」
(任せて~!)
「安心した?」
「うん!」
アイシャから鼻歌が聞こえて来た。
それに合わせて俺は歌い出す。
二人の歌謡ショーが再び始まる。
真上にある太陽の日差しが暑いなぁ。
旅はまだ半分くらいである。
村がようやく見えて来た。
前半はペースがゆっくりだったので、日没前までに間に合わないかと思ったが、後半のペースアップのお陰でギリギリ間に合いそうだ。
ここから見えるラウラ大山脈はかなり大きく見える。
すっかり変わった景色にアイシャは喜んでいる。
「貴方、あれがルタの村ね?」
「そうだよ、あれがルタの村だ!」
ルタの村はエターナの町みたいに城壁はない。
村の周りには水が流れる深い堀と木の柵で囲まれているだけだ
この堀は父ロデリックと俺が自衛のために作った堀だ。
村の周囲にはハンナ師匠が作った魔物除けによって守られており、鼻の利く魔物は一切寄って来ない様になっている。
エターナの町ほどではないが、出来る限りの対策は取っているのだ。
約2カ月振りに見たルタの村。
たった2カ月離れただけなのに妙に懐かしさを感じる。
(ルタの村か・・・何もかも皆懐かしい by 沖田艦長)
「あら!あそこに立っているのはジークちゃんとクロード様かしら?」
確かに師匠とジークだ。
ジークが力一杯手を振っている。
「兄さ~ん!お姉様~!」
だから、どうしてアイシャには『様』付けなんだよ。
下僕だから仕方がないのか?
ん~、解せぬ!
「オーイ!」
アイシャも力一杯手を振り返す。
「アイシャ、危ないってば!」
ジークがこっちに駆けだして来る。
派手に転ぶ!
お約束の展開ですな。
相変わらず騒々しいやっちゃ。
鉄人君がジークの所で止まった。
「ジークちゃん大丈夫?」
俺とアイシャは鉄人君から降りて駆け寄る。
アイシャはジークを抱き起し、ジークの頭を胸で包み込みながら頭を撫でる。
「な・ななな!」
俺は絶句する。
ジークが真っ赤な顔をしてやがる。
俺の乳神様に触るんじゃねぇ。
「お姉さま!もう大丈夫だから・・・その恥ずかしいよ」
赤らめた顔で照れ臭い顔をするジーク。
「ジークてめぇ、俺のアイシャから離れろ!」
鼻息を荒くして抗議をする俺。
「貴方!可愛い義弟に何て事を言うのよ」
アイシャが軽く俺を睨む。
だってさ・・・乳神様は俺だけのものだって・・・ウェーン!
「あ・貴方?お姉さま、それは何ですか?」
ジークがアイシャの元からフラフラっと立ち上がる。
「正式な夫婦になったから、ルークの呼び方を『あ・な・た』って改めたのよ。
キャー!恥ずかしい~」
アイシャが身体をクネクネしながら、何時もの様に一人で勝手に盛り上がる。
「に・兄さんを貴方って・・・羨ましい~!ぼ・僕もそう呼ぶ~」
ジークが俺に抱き着いて来る。
「いい加減にするでござるよジーク!」
ゴツンとジークの頭に師匠の鉄拳が落ちる。
そして、俺の蹴りもジークの腹に当たる。
二人とも相変わらずだね。
「師匠、只今戻りました」
俺は先ほどからの事はなかったかの様に何食わぬ顔で頭を下げる。
「クロード様、お久し振りで御座います!」
我に返ったアイシャも慌てて挨拶をする。
「お帰りで御座るよルーク!アイシャ殿も久し振りで御座るよ。さぁ、疲れたで御座ろう。
バカ弟子はここに放って置いて、食事でもしながらいろいろな話を聞かせて欲しいでござるよ」
頭と腹を抱えてしゃがみ込むジークを放って、俺達は我が家に向かったのであった。
懐かしい我が家が見えて来た。
(父さん、母さん、ただいま!)
俺は心の中でそう言った・・・
次回『第68話:新婚生活』をお楽しみに~^^ノ




