表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リアース戦記 ~鉄壁のルーク~  作者: ナナすけ
新人冒険者の章
68/187

第66話:結婚式

 リアースの結婚式は教会で愛を誓い合い、証明となる15㎝四方の銀の盾に二人がサインすれば終わりである。

 参列者などは特にいなく、教会の見届け人と結婚する当人達だけ。

 地球で云えば、簡単な結婚式と役所に出す婚姻届けがセットになった様な感じである。

 結婚式自体は物凄く簡略だが、その後の披露宴が王家や貴族、平民などで大きく違ってくるのだ。

 王家や有力貴族などは3日3晩盛大に行われるが、平民などは親類などへのお披露目程度、もしくは披露宴自体行われないケースも多い。

 ルークとアイシャはついにその日を迎える。

 末永く幸せにと願う・・・




 リアース歴3236年 7の月24日11時。


「二人は永遠なる愛を誓いますか?」


 シスターが俺とアイシャの前に立ち、誓いの言葉を問う。


「「ハイ!」」


 俺達二人は躊躇なく答える。

 俺達の服は普段着であり、特別な事と云えばアイシャがベールを被っている事かな。

 地球の結婚式と違って、何か味気ないなぁ。


「では誓いのキスを!」


 シスターが静かに言う。

 俺とアイシャは向かい合う。

 俺はアイシャの顔を隠すベールに手を掛け、そっと頭の上に上げる。

 普段はスッピンなアイシャだが、今は赤い口紅だけを付けている。

 綺麗だな!

 つい見惚れてしまう。

 アイシャが目を閉じて待って居る。

 オット!イカンイカン。

 俺は自分の唇をアイシャの唇に重ねる。

 5秒くらいしてから唇を離した。

 アイシャから涙が零れていた。


「では、引き続きこちらの盾に二人のサインを!」


 寝かされてある銀の盾の上にカーボン紙みたいな物と白い紙が乗っている。

 その白い紙の空欄部分に俺達二人の名前を書く。

 盾の上の白い紙とカーボン紙をシスターが剥ぎ取る。


「ハイ、これにて終了となります!

 おめでとう御座います、どうか末永くお幸せにね。

 それと、この書類は本協会で保管させて頂きます。

 こちらの盾は奥様がお持ちになっていて下さいね」

「ハイ!」


 アイシャが嬉しそうに盾を持つ。

 結婚式短っ!10分も掛かっていないやん。

 何だか結婚式の有難味が薄いわ~。

 しかし、リアースの世界で結婚の意味は重い。

 このリアースは一夫多妻である。

 結婚した妻はこの盾を持つ事で、以後他の男性は一切受け付けず貞操を守り続けると云う意味を表しているのだそうだ。

 既婚者の女性に手を付けようとした男性は一切許されず、問答無用でイチモツ去勢となるらしい。

 考えるだけでも恐ろしい~!

 オーレやイスカルが、アイシャが結婚する前に強引にでも自分のものにしようとしたのは、こう云う事が理由である。


「あ!少しだけ待って貰って良いですか?」


 俺は終えようとする結婚式に待ったをかける。

 そして、ズボンのポケットから2つの指輪を出す。

 以前、アクセサリー屋で買って聖の精霊術を付与して貰った結婚指輪だ。


「どうか致しましたか?」


 シスターは俺の顔見て、不思議そうな顔をする。


「この結婚の証の指輪をお互いの指にはめたくて」


 俺は照れながら指輪をシスターに見せる。


「結婚の証の指輪!そんな事初めて聞くわねぇ?」


 そうだろうね、これって地球での儀式だからね。

 俺は指輪の一つをアイシャに渡す。

 

「何所かの古い儀式みたいなもんらしいですよ。俺、それ気に行っちゃいまして」


 適当な言い訳を話す。

 そして、お互いの左の薬指に指輪をはめ込む。


「あら、そうなの。フフフフフ、何だか良いわねそれ!」


 アイシャは左手の薬指の指輪を見てウットリしている。

 シスターはアイシャの顔を嬉しそうな表情で見ている。

 穏やかな時間が流れる。


「ルーク君、アイシャの事頼むわね」


 母親の気持ちなのかなシスター。

 長い間ここで育てて来たんだから、きっとそうだよね。


「ハイ!一生大事にします。お任せ下さい」


 俺はシスターを見て真剣に答える。

 俺の言葉を聞いて、又涙目になるアイシャであった。



 12時頃、冒険者ギルドの真向かいの居酒屋を貸し切りにして披露宴を行った。

 ご老公様主催でと言っていたが、実際にはギルド長のベルクーリさんが仕切っていろいろとやってくれている。

 ご老公様、ミネバ婆ちゃん、ステイさん、ベルクーリさん、フォッカーさん、マシューや孤児園の子供達、露店のおっちゃんや何とジークまでいる。

 町でお世話に成っている人や冒険者の人達が沢山集まってくれていた。

 居酒屋には入りきらなくて、外で祝福してくれている人もいる。

 皆から祝福されて俺とアイシャは本当に幸せ者だよ。

 ベルクーリさんがビールを片手に持ち、椅子の上に立って皆を見渡す。


「え~、ご静粛にお願い致します!コラー、そこまだ飲むの早い。

 乾杯するまで我慢せんかい」


 乾杯の音頭をとる様ですね。

 こう云う時にフライングして先に飲み出す人っているよねぇ。


「え~、この度、町の英雄ルークと町の聖女アイシャ嬢が晴れて夫婦と相成りました。

 ルーク、アイシャ、本当におめでとう!」

「「「おめでとう!」」」

「「「ヒューヒュー!」」」

「二人が結ばれた事はこのエターナの町皆にとっても大変嬉しい限りで御座います。

 皆さんもご存じの通り、二人はご老公様が後見人をなさっております。

 この場はその後見人でいらっしゃいますご老公様によって設けられました。

 皆さん、ご老公様に感謝の拍手を」

「「「パチパチパチ!」」」

「流石、ご老公様!」

「え~二人が出会いましたのは・・・」

「話が長いぞ~!」

「「「そうだそうだ!」」」

「「「早く飲ませろ~」」」


 待ちきれない人からヤジが飛ぶ。

 まぁ、あるあるですな。


「グヌヌ!分かった分かった。皆、コップを持ったか?」

「「「「「持った~!」」」」」

「では!ルーク、アイシャ、結婚おめでとう、乾杯~!」


 コップを高らかに上げてベルクーリさんが叫ぶ。


「「「おめでとう!」」」

「「「乾杯~!」」」


 地響きかと思うくらいの歓声が上がる。

 イナリがビクっとして、アイシャの胸に逃げる。

 グヌヌ!今回だけは特別に許してやろうイナリ君。

 いいか!今回だけだぞ!


「ここはご老公様が全て払って下さるそうなので、食べ放題飲み放題だぁ。

 皆、遠慮せずにガンガン行ってくれ~。無礼講じゃ無礼講じゃ~!」


 ベルクーリさんが椅子の上で吠える。

 何か変なスイッチ入っちゃっていませんか?

 ベルクーリさんも結構なお歳なんですから、はしゃいじゃダメですよ~。


「野郎ども、ガンガン行くぞー!」


 そして、フォッカーさんが煽る。

 アンタは煽るな~!

 歯止めが利かなくなるだろうが。


「「「おぉー!」」」


 何時もの宴会のノリが始まった。

 あ~あ、こうなったらもう止まんないぞ。

 飲めや歌えやと段々収集がつかなくなって行く。

 気が付くと横にいるアイシャは顔が真っ赤になっていて、かなり酔っている様である。


「ルーク、そこにお座り!イナリちゃん一緒に!」

「え?」

「キュ?」


 俺とイナリは床に座らされた。

 そして、延々と説教される・・・

 夜中に目が覚める・・・途中で寝ちゃったみたいだな。

 アイシャは俺の目の前の椅子に持たれかかりながら寝ている。

 ベルクーリさんはカウンターの上で寝ているし。

 フォッカーさんは床に転がり、一升瓶を抱きながら寝ているよ。

 ご老公様とミネバ婆ちゃんの姿は見えないから途中で帰ったかな?

 周りの皆はぐでんぐでんに酔っぱらって寝ている。

 そして俺は・・・なぜか上半身裸の状態で正座して寝ていた様だ。

 な・なぜ又裸?

 俺は酔っぱらうと脱ぐ癖でもあるのか?

 ん~。思い出せん!

 これからは酒を飲むの控えようっと。

 黒歴史に新たな1ページが刻み込まれるのであった・・・


ようやく本当の夫婦になった二人でした(*´д`*)

次回『第67話:帰省』をお楽しみに~^^ノ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ