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リアース戦記 ~鉄壁のルーク~  作者: ナナすけ
幕間
52/187

第50話:花嫁候補

連載を始めさせて頂いてから1カ月が経ちました^^

お陰様で先日5000PVを越える事が出来ました。

誠に有難う御座いますm(_ _)m

 リアース歴3236年 4の月30日8時過ぎ。


 私の名はマルタ。

 バニング家の聖龍騎士団に仕える騎士である。

 私は今年の初めに、バニング伯爵様に命じられてオーレ・バニング様の副官になった。

 オーレ様はバニング家の次期後継者候補の一人である。

 私の任務はオーレ様を補佐する事・・・と表向きはそうなっているが、実は彼が次期後継者に相応しい人物かどうかを見定める任務を命じられている。

 オーレ様は火の加護をお持ちで、剣の腕の評判もなかなかである。

 だが、聖の加護をお持ちになっていない。

 バニング家は代々、聖の加護と武力を象徴した家柄である。

 聖の加護をお持ちでないオーレ様が次期候補となるには、聖の加護持ちの女性を伴侶としなければならない。

 次代に聖の加護を受け継がせて行くために。



 『聖の加護持ちの最高の花嫁』を探して、オーレ様と私は動き出しました。

 1の月と2の月は首都ザーンにて花嫁候補を探しましたが、候補になりそうな貴族のご令嬢達は早くから婚約が決まっており空振りに終わりました。

 平民の中で聖女候補となる人物にも当たってみましたが、候補になりえそうな方はいらっしゃいませんでした。

 後は首都以外で探すしかありません。


 3の月からは聖女候補達の情報を当てに旅に出ました。

 今のところ成果はありません。

 この頃になって来るとオーレ様の性格が分かって来ました。

 思慮に欠け、短期で粗暴、貴族特有の我がままな性格。

 私の判断では、ハッキリ言って次期後継者候補としては相応しいとは思えない。

 まぁ、後継者決定はまだ先なので、それまでに改善してくれればと思う・・・


 4の月の中頃、私達は交易都市ルーラに居た。

 そこで有力の情報を得たのである。

 ルーラから1週間くらい北に行ったエターナの町で、評判の高い『元』聖女候補がいるらしい。

 元と云う部分が実に引っかかるが、その元聖女候補の噂は、容姿端麗で学業の成績も良く、エターナの奇跡でも活躍をして『エターナの聖女』として町の皆に慕われている素晴らしい美少女らしい。

 今は聖女候補を止め、冒険者見習いになった云う噂だ。

 いったいどんな少女なのだろう?

 オーレ様と私はすぐエターナの町に向かいました。


 昨日の4の月29日の晩にエターナの町に着いた。

 今朝は朝早くから冒険者ギルドで情報収集をしながら彼女を探しています。

 彼女の名はアイシャ、銀髪の青目で絶世の美少女らしい。

 3歳くらいの時に町の近くで何者かに襲われ母親と乗り合わせた者全員が死亡し、彼女だけが生き残ったが、その事故で彼女のそれまでの記憶は失われた様だ。

 以後、エターナの町の孤児園で育てられ、聖女候補として頭角を現す様になった。

 しかし、エターナの奇跡後に突如、聖女候補を止めて冒険者見習いに転身した。

 理由は今のところ不明の様である。

 あ!向こうから男の子と一緒に歩いて来る少女・・・銀髪の青目!


「オーレ様!向こうから来る少女がそうではありませんか?」


 私は興奮してオーレ様に告げる。

 歩いて来る少女は噂通りの絶世の美少女。

 今まで探した中で一番の花嫁候補であった・・・



「そこのアンタ!もしかしてアイシャって女か?」


 ガッチリした体格のオーレが威圧感を出しながらアイシャに話しかけた。


「確かに私はアイシャと申します。

 で、名前も先に名乗らない礼儀知らずな貴方様はどちら様でいらっしゃいますか?」


 アイシャは凛とした物怖じしない態度で対応する。

 嫌、むしろ挑戦的な態度で。


「ふ!随分と気の強い女じゃねぇか。そう云うのは嫌いじゃねぇぜ。

 ほ~、噂通り極上の女じゃねぇか・・・」


 オーレはアイシャの豊満な胸を見てから身体全体を舐めまわす様に見る。

 まるで目で犯すかの様に。


「嫌らしい目で見ないで下さるかしら!物凄く不愉快ですわ!」


 激怒するアイシャ。

 自意識過剰かと自分でも思うのだが、男性の胸への視線はいつも感じていたアイシャ。

 オーレの視線は、いつも見られている視線以上に不愉快であった。


「そうツンケンするなって!俺の名はオーレ・バニング。お前を俺の妻にしてやるよ」


 自身たっぷりに言うオーレ。

 貴族の自分の申し出に、平民が断るはずがないと疑わない。


「ハっ!貴方は何をおっしゃっているのかしら?

 夢は寝ている時だけになさって下さいませ」


 オーレを汚物か何かの様な見るアイシャ。


「お・俺の妻になれば次期バニング伯爵夫人になれるのだぞ。なぜ喜ばん?」


 まさかの反応に動揺するオーレ。


「私が貴方の妻?考えるだけで身の毛がよだつのでお断りさせて頂きますわ。

 伯爵夫人か何かは知りませんが、どうぞ他を当たって下さいませ。

 それに、私にはすでに素敵な婚約者がいますの!マシュー、行くわよ!」


 アイシャは吐き捨てる様に言った。

 オーレは予想外の拒絶でポカンとした顔になる。

 アイシャはクルっと背を向け冒険者ギルドに入って行こうとする。


「ま・待て!」


 我に返ったオーレはアイシャの腕を慌てて掴んだ。


「放しなさい無礼者!」


 オーレが掴んだ手をパチンと手で弾く。

 2度目の拒絶。

 オーレはワナワナと身を震わせた。


「こ・婚約者がいると言ったな?相手は貴族なのか?」

「いいえ、私と同じ平民で冒険者よ!」

「へ・平民だと!」

「あら!いけないかしら?でも、貴方と違ってとても素敵な人よ」

「俺も随分コケにされたもんだな・・・まさか平民の婚約者に負けるとは。

 まぁ、婚約相手が平民なら問題なかろう。

 マルタ、この女を拘束して連れて帰るぞ!」


 オーレはもう1度アイシャを掴もうと手を伸ばす。

 そこに何者かが割り込んだ。


「いい加減にしろよ、貴族様!姉ちゃんが嫌がっているだろ」


 マシューがアイシャのオーレの間に割り込み、オーレを睨みつける。


「どけ!平民風情が!」


 オーレはマシューの胸倉を掴み上へ持ち上げる。


「マシューを放しなさい!」


 アイシャはオーレの乱暴な行動に激怒する。


「グ!姉ちゃんの婚約者が平民だからってバカにするなよ。

 兄貴はエターナの小さな英雄なんだからな!」

「「エターナの小さな英雄?」」


 オーレと一緒にマルタも反応する。

 マルタは今までの動向を黙って見届けていたが、まさかここで英雄の名が出て来るとは微塵も思っていなかった。


「そうさ!英雄の婚約者に手を出したらまずいんじゃないの?」


 マシューはオーレの威圧に耐えながらも抵抗する。

 確かにまずい!マルタはそう思った。

 エターナの奇跡で英雄となった少年ルークの名は首都ザーンでも有名である。

 小さな英雄は今や演劇の題目で大行列が出来るほどである。

 平民とは言え英雄の婚約者に手を出せば、世間の非難で大変になる事は目に見えている。


「オーレ様!この少年の云う通り、流石にそれは大問題となります。

 ここは引きましょう。他の女性を又探せば良いじゃないですか?」


 マルタはオーレに懇願する。

 バニング家の名に傷が付いては一大事である。

 お目付け役の自分にも火の粉が降り掛かる。


「うるさい!お前は黙っていろ!」


 もうこのままでは収まりが付かないオーレである。

 マルタは頭を抱えた。

 その時だ。


「そこで何を揉めている!」


 白いひげを蓄えた威厳のある男が冒険者ギルドから出て来た。

 ギルド長のベルクーリである。


「あ!ギルド長助けて下さい。

 この貴族様が私を妻にすると突然言い出して暴れているんです」


 アイシャはベルクーリにしがみ付いた。

 ベルクーリはルークにとって父親的な存在であり、アイシャにとっても同様の存在なのだ。


「貴族様?」


 アイシャを安心させるかの様に肩を軽く二度叩きながら、オーレを一睨みする。


「私はこのエターナの町の冒険者ギルド長をしておりますベルクーリと申す者です。

 失礼で御座いますが貴方様の名前をお伺いしてよろしいでしょうか?

 そして、申し訳御座いませんがマシューから手を放して頂けますかな」


 一応、敬語で対応する。

 しかし、その目は敵愾心むき出しである。

 ベルクーリの圧倒的な威圧感に屈してマシューから手を放す。

 オーレの虚勢を張る威圧と違って、相手を心底震え上がらせる本物の威圧感だ。


「わ・私の名はオーレ・バニング。バニング家の次期後継者候補である」


 親に怒られた子供の様にオドオドと答えるオーレ。

 先ほどまでとは打って変わった態度だ。


「そのオーレ・バニング様は、このアイシャ嬢に何の用事で御座いますか?」

「私はバニング伯爵の命で我が妻となる者を探している。

 実は貿易都市ルーラでアイシャ嬢の噂を聞いて、それで・・その・・・我が妻にしようと思いここまで来た次第である」

「そうで御座いましたか!

 残念ながら、アイシャ嬢はこの町の英雄ルーク殿とすでに婚約を交わしているのですよ。

 この事はルーク殿の後見人でいらっしゃるエターナのご老公も容認して御座いまして、町を挙げて喜んでおるのですよ。

 大変申し訳御座いませんがお諦め下さいませ」

「あ・あい分かった!面倒を掛けたな。行くぞマルタ!」


 苦々しい顔をしたオーレは踵を返しこの場から歩き出した。

 マルタは慌ててベルクーリとアイシャに頭を下げて、オーレの後を追う。


「もう大丈夫だ!」


 ベルクーリはアイシャに優しく声を掛ける。

 まるで娘に話す様に。

 ベルクーリはオーレの去り行く後ろ姿を見て一抹の不安を感じていた。


 マルタを連れて足早にギルドを離れるオーレ。

 去り行くオーレは怪しい笑みを浮かべていた・・・


次回『第51話:暴行』をお楽しみに~^^ノ

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