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リアース戦記 ~鉄壁のルーク~  作者: ナナすけ
小さな英雄の章
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第43話:エターナの小さな英雄

 英雄。

 地球で英雄がいる様に、リアースでも数々の英雄がいる。

 常勝オールマンは、アの国の将軍で数々の勝ち戦に貢献して来た英雄。

 朱雀のエルリックは、ルザク伯爵家当主であり、ナの国の侵攻を何度も防いでいる英雄。

 武王ジャガは、ミの国王で人間と獣人のハーフであり、己の拳によって国を守る英雄。

 大賢者スレインは、知と精霊術に長け、エルフの里を導いて来た英雄。

 他には竜を倒してドラゴンスレイヤーとなった英雄も数多くいる。

 英雄とは優れた能力を持ち、偉業を成し遂げた者。

 危険や困難に立ち向かい、勇敢に立ち向かう者。

 そして今、リアースに新たな英雄が生まれる・・・




 リアース歴3235年 6の月29日。


 ゴブリンのスタンピードが終わり、3日が過ぎていた。

 ルークはまだエターナの町に留まっていた。

 早くルタの村に帰らなければと思っていたルークであったが、町の人々によって引き止められていたのであった。


 スタンピードが起きたエターナの町。

 歴史上、スタンピードが起こった町や村は壊滅、もしくは大きな損害を出して来た。

 エターナの町のスタンピードは、大怪我を負った者はかなり出たが、死者がゼロであった。

 町の被害も軽微と云って良い程度だ。

 これは奇跡と云って良い。

 エターナの町で起こったスタンピードの内容は、エターナの町の冒険者ギルド長ベルクーリの事細かに書かれた報告によって、町を治めるエターナ子爵に届けられ、それがリの国王の耳まで入る。

 

 この奇跡の出来事は、14歳の少年冒険者見習いから始まったと報告に書いてある。

 ゴブリンの異常繁殖を感じた冒険者ギルドは、屈強な冒険者を率いてエターナ森林へと出かけて行く。

 しかし、その隙をついてゴブリンの変異種が率いるゴブリンの大集団が、エターナの町を襲撃する。

 当初、町の中に数体のゴブリンが侵入するが、残っていた新米冒険者やこの少年によって素早く処理される。

 そして、ゴブリンの大集団が正門の大扉に取りつく前に何とか閉門に成功。

 この閉門には、少年が生成したゴーレムの力が最も大きいと報告されている。

 しかも、閉門の後に土の精霊術ウォールによって大扉は強化され、ゴブリン達の攻撃がビクともしないほど堅固になる。

 この堅固なウォールは裏門・水路の隙間などにも使われ、エターナの町は堅固な要塞と化した。

 大扉の破壊を諦めたゴブリン達はハシゴを使って石垣の上に取りつこうとする。

 町の警備兵や残っていた数少ない冒険者によって何とか防衛する。

 しかし、怪我人が多数出始めて癒しの術も追いつかなくなる。

 その時、あの少年がエリアヒールの術を使う。

 多くの怪我人はこれによって全員癒され、今まで癒しを行って来た者達も僅かな休息を得る事となる。

 少年は、エリアヒールで魔力を使い果たし倒れるも再び立ち上がり、町のために懸命に動こうとする。

 少年はこのエターナの町の者でなく、隣り村から月1回だけ依頼でやって来る孤児の少年であるという。

 この少年の健気で懸命な行いが町の住人の心に響く。

 怯え、泣き、非難ばかり言っていた町の住人は、一致団結して立ち上がったのだ。

 町はこの少年を中心に動き出す。


 スタンピードが起こって2日目の夜。

 エターナ森林へ出かけていたギルド長以下200名の冒険者が町に帰還した。

 この帰還により町の防衛は更に強固となる。

 しかし、流通が止まってしまっているために、食料や薬品な物資が底をつき始める。

 町は救援を待ちながらひたすら守りに徹する。


 スタンピードが起こって5日目。

 待ちに待ったルーラの氷虎騎士団が来た。

 騎士団はゴブリン達の背後を突く。

 騎馬隊の突撃によって敵陣を突破した騎士団は、エターナの町から討って出た討伐隊と合流して、ゴブリン達に決戦を挑む。

 騎士団と討伐隊の連携によって、ゴブリン達の数は減って行く。

 しかし、徐々に乱戦状態となって行く。

 その隙をついて、ゴブリンの1部隊が町の正門に襲おうと突撃を始める。

 その突撃の中には変異種もいた。

 討伐隊が討って出る時に開いた正門の大扉は、この突撃に慌てて閉めようとするが間に合いそうもない。

 ここであの少年が再度登場する。

 突撃して来るゴブリン部隊に大きめのゴーレムを生成して足止めを図る。

 更にウォールの術によって4重もの土壁を立ち上げ、敵の突撃を必死に防ぐ。

 突撃の時間を稼いでいる間に、石垣の上から矢や石による援護攻撃。

 突撃に気付いた冒険者達も素早く援護に向かう。

 土壁の最終ラインで、少年と少年に従うシルバーウルフの子狼が、ゴブリンの突撃を必死で防ぐ。

 突撃部隊はついに崩壊。

 率いていた変異種のゴブリンリーダーも冒険者の一人フォッカーによって、ついに倒される。

 リーダーの変異種が討たれた事により、ゴブリン達は完全に崩壊。

 バラバラになってエターナ森林へ逃げ始める。

 この後は、騎士団と討伐隊の追撃大討伐が始まる。

 これによってゴブリン達のスタンピードは終わった。

 最終決戦において大怪我を負った者がかなり出たが、死者はゼロ。

 町の被害も比較的軽微。

 スタンピード現象の歴史において、死者がゼロなどと云う事は初めてである。


 後日、エターナの町の中央広場は3日3晩お祭り状態となる。

 中央広場では、一人の偉大な少年の活躍が褒めたたえられた。

 その少年の名はルークと云う。

 若干14歳で町を救った小さな英雄。

 町の皆は、彼の事を『エターナの小さな英雄』もしくは変異種の攻撃を完全に防いだ事から『鉄壁のルーク』と云う二つ名で呼ぶ様になる。

 リアースにまた一人の英雄が誕生した瞬間であったと・・・

 エターナの町の冒険者ギルド長ベルクーリの報告は以上である。


 この奇跡の出来事は、リの国王によって公に発表され、リの国民の皆が知る事になり、吟遊詩人などによって更に他国まで広がって行く。

『エターナの奇跡』と云われたこの出来事は、後世語り継がれて行く事になるのだ。

 


「すっかり英雄になっちゃったわね、ルーク!

 何だか遠い存在になっちゃった感じだわ・・・」


 俺とアイシャは祭りから逃げ出し、公園のベンチに座っていた。


「英雄扱いは勘弁して欲しいよ!

 英雄扱いされるほどの実力がない事は、自分自身でよく分かっているんだ。

 あ~あ、アイシャとなかなか2人きりになれないし、ルタの村に帰る事も出来ない・・・」


 しまった!

 帰ると云う言葉を聞いてアイシャの顔が曇る。


「ア・アイシャ・・・そのゴメン!

 アイシャから離れたい訳ではないんだよ。

 この3日間アイシャとイチャイチャ出来て嬉しいし・・・

 でも、僕はまだ師匠との修行の途中だし・・・

 村の皆も僕の事を心配しているだろうしさ・・・」


 う~、しどろもどろだ~。

 アイシャゴメンよ~。


「良いの、分かっているよ!分かってはいるけど・・・」


 アイシャの瞳から涙が落ちる。


「アイシャ、ゴメンね!」


 うわ~、どうしたら良いんだよう?

 誰か恋愛の師匠いませんか~?

 ヘルプミー!

 俺はアイシャを抱きしめる。

 アイシャも抱きしめ返して来る。

 抱きしめる手がお互いに強くなって行く。

 抱き合ったまま沈黙が続く・・・


「私もゴメンね!」


 アイシャが俺の耳元で静かに言う。


「アイシャが謝る事はないよ・・・」


 俺もアイシャの耳元で静かに言う。

 ここで気の利いた事が言えない俺。

 小ネタのギャグなら言えるのに・・・

 俺って本当にダメな男だよなぁ。


「私も早く冒険者見習いの登録をしてこなくちゃ。

 あ!その前に学校の退学届けが先かな?」


 驚いて思わずアイシャを抱く手を止める。

 お互いに見つめ合う。


「学校止めちゃって良いの?」

「うん!あなたについて行くなら早く冒険者見習いになって実力をつけなくちゃね。

 それに、け・結婚するなら聖女候補でいられなくなるし、聖女候補でなくなったら学校辞めなきゃ・・・」


 結婚の言葉で心臓がドキリと跳ね上がる。

 そうだった!

 結婚の約束したんだよね俺達。


「け・結婚までの間にお互いにしなきゃならい事が多いね。

 離れるのは僕も本当に辛いけど、1カ月に1回は必ず会えるし、後1年お互いに頑張ろう・・・ね!」


「そうよね!1カ月なんてすぐだし、1年したらずっと一緒にいられる様になるんだもんね・・・」


 俺達はもう1度抱きしめ合う。

 あぁ、幸せだ~。

 何時までもこうしていたいや。

 アイシャの胸に手を伸ばそうとした俺。

 ピシっと叩かれたです。

 うぅ~、調子に乗って御免なさい!


 こうして10日間も続いた長いエターナの町の滞在は終わったのだった・・・


次回『第44話:爆弾投下』をお楽しみに~^^ノ


ん!爆弾投下?随分怪しげなタイトル^^

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