第41話:スタンピード6
リアース歴3235年 6の月25日 21時。
ゴブリンの襲撃を受けて4日目。
屈強な冒険者が戻って来た事で、町の防衛は安定している。
ゴブリン達の度重なる攻撃も跳ね返し、勢いは今こっちにある。
「ステイ、援軍が来るとしたら何時くらいだと思う」
広場の仮本部でギルド長が地図と睨めっこをしていた。
「22日の夕方に襲撃を受けてすぐに狼煙を上げました。
その日のうちにルーラまで伝わるのは無理でしょうから、23日に情報がルーラに届いたとして・・・早くて27日ぐらいでしょうか?
まぁ、28~29日と考える方が妥当だと思いますが・・・」
「やはりそれくらいか・・・町の食料はどうだ?何時までもつ?」
ギルド長は腕組みをしてウ~ンと考える。
状況はあんまりよくないのかなぁ?
「後、1週間くらいは大丈夫だと思いますが、ポーションや薬品類が底をつきそうです。
完全に流通が止まってしまっていますので、早い段階で何か手を打たないと・・・」
ステイさんが渋い顔で答える。
眉間に皺が寄っているよステイさん。
イケメンが台無しですよ~。
「奇襲か・・・でも失敗したら、防衛が崩壊する恐れもあるしな・・・
やはり、ここは援護待ちの一手が無難か・・・」
援軍は何時来るんでしょうね?
本当に来るよね?
このまま見殺しにされるのは嫌ですよ~。
せっかく愛子と再び出会えたのに~。
26日の14時過ぎ。
「ギ・ギルド長!見張り番からの報告です。
に・西の街道沿いに騎士団らしき部隊が見えるそうです」
連絡係の人が慌てて飛び込んで来た。
「それは本当か?やけに早いな・・・早すぎる・・・」
ギルド長と数人の部下が正門へと走る。
俺もこっそりと後を着いて行く。
だって、援護が来たと聞いたらジッとしていられないじゃん。
ギルド長が見張り台に登って行く。
お~早い早い。
歳の割に元気だねぇ。
「間違いない!あれはルーラ伯爵家の家紋の旗」
リの国には東西南北で支える4伯爵家がある。
北の玄武スザル家、東の聖龍バニング家、南の朱雀ルザク家、西の氷虎ルーラ家。
この4伯爵家は、リの国王からの信頼も厚く、実力においても政治・武力によって各々が各地域をまとめ上げており、まさに国の要となっている。
西の交易都市ルーラを中心として治めているルーラ伯爵家は、氷虎をモチーフとしたデザインを家紋としている。
その家紋を刺繍した旗を持った騎士団が、エターナの町のすぐ傍まで来ているのだ。
ルーラの氷虎騎士団が、ギルド長ベルクーリの予想よりかなり早く着いた理由には少し訳があった。
西を治めるルーラ伯爵家は、ラウラ大山脈、ウララ大山脈を国境にして、クの国と隣国している。
クの国とは同盟で結ばれており国同士では良好な関係が長く続いているのだが、クの国の奴隷商人による奴隷狩りが密かにリの国に侵入していた。
先日、奴隷狩りを見かけたと云う情報が入った氷虎騎士団は、騎士団をいくつかに分けて、その奴隷狩りを追いかけていた。
その奴隷狩りを追いかけていた部隊の1つが、運良くエターナの町の危機を知る事となる。
この部隊250人の行動は早かった。
他の部隊にも連絡も入れつつ、自分達はエターナの町を先んじて目指した。
これがギルド長ベルクーリの予想を超えた理由である。
騎馬に乗って表れた氷虎騎士団250人は、エターナの町を襲うゴブリン部隊の背後を強襲した。
馬に乗った騎士団は一塊となってゴブリン達の集団を中央突破して行く。
「今がチャンスだ!俺達も討って出るぞ!」
ギルド長からの命令で、討伐隊200名が正門から討って出る事になった。
俺は、ウォールの術で大扉を覆っていた土壁を排除する。
大扉を開けて、討伐隊が飛び出て行った。
俺は未成年だから連れて行って貰えなかった。
(坊やだからさ! by シャア・アズナブル)
ふん!どうせ坊やだい。
だけど、チ〇コの毛は生えているんだぞ。
エッヘン!
そんな事はどうでも良いですよね。
ゴメンなさいです。
俺は留守番で正門死守隊となった。
何時でも大扉を閉められる様に門で待機だ。
俺達正門死守隊200名は門の外で戦況を見守る。
騎士団は『鋒矢の陣』でゴブリン部隊に突撃して、中央突破に成功した。
鋒矢の陣とは、「↑」の形に兵を配し、正面突破に有効と云われている陣構えの事だよ。
中央突破した騎士団は、ギルド長達の討伐隊と合流を果たす。
騎士団と討伐隊が連携をしてゴブリン達を倒していく。
騎士団の騎馬隊がゴブリン部隊に突撃をして、ゴブリン達をかき乱し、歩兵の討伐隊が
散り散りになったゴブリン達を各個撃破して行く。
う~ん、確実にゴブリン達の数は減って来ているけど、なんか乱戦状態になって来た様な・・・
そう言えば、変異種って何処だ?
俺は戦場を見渡す。
見当たらないなぁ。
もう倒されちゃったかな?
リーダーの変異種が倒されちゃったら、後は烏合の衆だもんね。
その時だ!
あれ?
1部隊が乱戦の中から抜け出てこっちに向かって来た。
あ!
あ・あれは変異種!?
変異種を先頭に100体くらいのゴブリンの一団がこっちに来る。
「皆、急いで門の中に!は・早く大扉を閉めなきゃ!」
皆に大声で呼びかける。
気づいた200名の正門死守隊は慌てて門の中に逃げ込もうとする。
大扉の開きを少しにしていたのが失敗だった。
うげ!皆が我先に逃げようとして大混乱だ。
変異種が物凄い速さで迫って来る。
これはヤバい!
ま・間に合わない!
(諦めたらそこで終了だよ! by 安西先生)
って、諦めてたまるか~。
奴らに侵入されたら・・・町の皆が!アイシャが!
俺達は絶体絶命のピンチに陥っていた・・・
スタンピードは次回で決着!
次回『第42話:スタンピード7』をお楽しみに~^^ノ




