第3話:精霊の儀
リアース世界は、地球と異なる歴史を歩んで来た世界である。
地球の様に科学が進歩した世界ではない。
科学の代わりに『精霊術』によって進歩して来た世界。
精霊と云う存在と共存して成り立っている世界。
精霊術。
呼び方は違うが、地球の物語で云う魔法と同じ様なものである。
精霊術は万能ではない。
人を生き返らせたり、欠損した部分を蘇らせたりは出来ない。
炎や風の攻撃で大勢の人を瞬殺する事は出来ないし、人一人に致命傷を負わせるくらいが関の山である。
人々の生活にちょっと手助けをする。
精霊術とはそんな感じである。
けして、地球の物語の様なチートな力ではないのだ・・・
リアース歴3222年 6の月21日。
俺、ルーク。1歳になりました。
母ラティーナの銀髪、父ロデリックの藍色の瞳を受け継ぎ、将来が楽しみな顔立ちをしております。
言葉を覚えるまで半年かかり、少しずつ話せる様になって来ました。
ようやくハイハイの域を脱し、危なげながら歩ける様になって行動範囲も広がって来ています。
少しずつではありますが、この世界の事、自分の周りの事が分かって来ています。
その代わりに、前世の事を少しずつ忘れて行っているような気がします。
何だか悲しいです。
もしかしたら、愛子の事を忘れる日が来るのでしょうか?
そう思ったら怖いです・・・
前世のお父さんお母さんは元気でやっているでしょうか?
兄さんも元気でやっているかい?
俺は元気です・・・ってちょっと違うか。
俺、死んじゃったんだよね。
ゴメンなさい!
皆は俺の分まで長生きして下さい。
急に悲しい空気にしてしまってゴメンなさい・・・
俺が生まれて1カ月くらいでしょうか・・・
母ラティーナが亡くなってしまいました。
やはり産後の経過が良くなかったようです。
母自身で『ヒール』の魔法をかけたり、薬を飲んだりもしたようですが、駄目だったようです。
悲しいです。
またまた悲しい空気にしてしまってゴメンなさいです。
話題を変えて明るくしましょう
俺は空気を読める男なんです・・・
そうだ!この世界には、魔法があったんですよ!
驚きました~!
正しくは『精霊術』と言うそうで、まぁ、魔法です。
精霊術には、火・水・風・土・聖・闇の6種類があり、それぞれの属性の精霊に愛された者が、その精霊の加護を得て精霊術を使える様になるようです。
ただし、火⇔水、風⇔土、聖⇔闇は、精霊達がお互いに反目しあっている様で、火と水など同時に覚える事が出来ない様です。
精霊達も仲の良い悪いがあるんですね。
よって、1番多く持てたとしても属性は三つ。『トリプル』と言われています。
世界でも数えるくらいしかいないそうです。
英雄並だそうですよ。
二つの属性を持っている人は、『ダブル』。
精霊術の世界ではエリート中のエリートですね。
一つの属性を持っている人は『シングル』。
精霊術を使えない人もいますので、一つ使えるだけで十分羨ましがられるらしいです。
でもね、魔力量の多さによっては、ダブルよりもシングル持ちの方が優秀と見られるケースがある様です。
魔力量次第で、使える精霊術も変わって来る様で、器用貧乏よりも一芸に秀出た方が良い場合もある様です。
精霊術適正は、1歳の『精霊の儀』の時に教会で調べて貰えます。
精霊の儀とは、1歳を無事に健康で迎えられた喜びを、神様や精霊達に感謝する儀式であり、この時に精霊達からの祝福として頂いた属性を調べるのが風習の様です。
適性が一つもない子もいるのに可哀想とか思わないのかね。
なんか残酷な儀式な気もする・・・
この世界でも格差社会あるんだねぇ。
あぁ、嫌だ嫌だ!
あ!そうそう、実は俺もこの間、この精霊の儀を受けてきました。
え~っとねぇ・・・ムフフフ!
俺は土と聖の精霊から愛されていました。
(イヤッホー!)
精霊の加護は、親の遺伝に影響する様なんです。
俺の場合は、父ロでリックは土のシングル、母ラティーナは風と聖のダブルだった様です。
稀に隔世遺伝なんかもあるらしいですよ。
人気の精霊術は、 聖←火←風←水←土←闇だそうです。
聖は、癒し系の精霊術。聖持ちは少ない様です。
火は、攻撃特化の精霊術。派手さもあるので人気らしい。
風は、攻撃も防御も出来て万能。
水は、補助系の精霊術。ただし、高等精霊術の氷系は殺傷能力大。
土は、防御系。地味なので人気なし。農耕土木向き。
闇は、補助系の精霊術。特殊種族限定。
精霊術か~。
非常に楽しみだぁ。
この世界で生きて行く楽しみが出来たな・・・




