第38話:スタンピード5
リアース歴3235年 6の月23日 7時。
「ルーク起きろ!もうすぐ交代の時間だぞ」
「ふぁ~い!」
眠たい目をこすりながら起きる。
こんな状況でもグッスリ眠れるもんなんだな。
軽く伸びをする。
これから正門の警備か~。
「ルーク兄ちゃんおはよう!」
マシューが声を掛けて来る。
マシューも眠たそうな顔だ。
「昨夜はお手柄だったマシュー!ステイさんも喜んでいたぞ」
「有難う!」
お!照れてやがる。
「俺、秋に12歳になるんだ。そうしたら、冒険者ギルド見習いになる。
俺もルークの兄ちゃんみたいになるんだ」
「討たれる覚悟は本当に出来たんだな?」
「うん!」
良い返事だね。
真剣な眼差しだ。
本当に覚悟を決めたんだね。
アニメネタから言ったセリフで非常に申し訳ないんだけど、君の本当の覚悟が分かったよ。
「だったら、貸してあるナイフをお前にやる!」
「本当かい?」
「あぁ、大事に使ってくれ」
「分かった!有難う」
何か可愛い弟分が増えた感じだな。
師匠とジークは心配しているかな?
この危機を乗り越えてルタの村に帰らなきゃ・・・
俺はルタの村の方の空を見上げる。
空は見事な青空だ。
9時くらいからゴブリン達の動きが活発になって来た。
丸太で大扉を破ろうとしたり、何カ所か同時に石垣に木を掛けて昇って来たりと、あらゆる攻撃を仕掛けて来る。
まるで波状攻撃だな。
頭の良い奴がいるんだなぁ。
奴らは、2千体くらいはいそうだな。
こっちが戦えるのは、町の住人を合わせても600人くらいだ。
同時に来られるとキツイなぁ。
大扉が破られる心配は、今はなさそうだ。
問題はハシゴもどきで登って来る奴らか。
こっちも石垣の上から矢や石、槍や長い棒で攻撃して、何とか昇らせない様にしているけど、数がなぁ。
ギルド長達、早く帰って来て下さいよ~。
14時が過ぎた。
敵の攻撃は止まらない。
怪我人が増えて来ている。
癒し班が大変そうだなぁ。
癒しが追いつかなくなって来ている。
俺の魔力もほぼ回復して来たようだし、ここでもう1回エリアヒールをかけておくべきかなぁ。
「ステイさん。シスター達の手が追い付かなくなって来ています。
僕の魔力はお陰様でほぼ回復しましたし、僕がここで1回エリアヒールを使っておきましょうか?
大扉は今の所破られる心配はなさそうだし、他に魔力を使う場がなさそうですし・・・」
俺はステイさんに相談してみる。
勝手に行動して、後で何かの作戦に影響したら困るしね。
「そうしてくれると助かるが、君の方の魔力や体力は本当に大丈夫か?
私から回してやれるマジックポーションは、後1本くらいだ。
何かのために温存しておきたい気もするがなぁ・・・」
確かに温存はしておきたいけどさぁ。
でも、余裕かましている場合じゃないしねぇ・・・
「やはり1回術をかけておきますね。2~3時間は動けなくなると思いますがお願いします」
「分かった!」
俺は怪我人の所へ行く。
うわ!結構重症な人もいるぞ。
「アイシャ!エリアヒールを掛けるから怪我人を集めて」
「大丈夫なの、ルーク?」
疲れた顔のアイシャが言う。
そんな顔じゃ、可愛い顔が台無しだよ。
「その言葉は僕が言うセリフだよ。
アイシャ達皆、魔力が尽きかけてフラフラじゃないか。
ここで僕がまとめて癒しを掛けるよ。
そうすれば、癒しの人達も少しは休めるでしょ」
癒しの人達が皆さんホッとした顔をした。
やはり、相当疲れているんだね。
「では詠唱しますね!アイシャ達は少し下がってね。
癒しをもたらす聖の精霊達よ!我の願いを聞き届け、聖なる力を与え給え!
傷つけられし全ての者に癒す力を~!『エリアヒーーール!』」
案の定、俺の記憶はここで途切れました・・・
「う・う~~~ん・・・」
モミモミ!掌に伝わるこの感触。
軟らかい枕だぁ~。
「キャッ!このドスケベ!」
い・痛い!
頭を殴られた。
くすん!
「い・痛いじゃないか~!」
って、あれ?・・・
俺どうしていたんだっけ?
ありゃ?
これ、太もも?
俺の顔に太ももがある!
モミモミ!
「だ~か~ら~!」
「痛い!」
また食らった!
ここでハッキリと目が覚める。
ガバっと起き上がる。
アイシャが真っ赤な顔で照れている・・・嫌、怒っています・・・かなり!
こ・この感触はアイシャの太ももだったのか~。
膝枕って・・・何か照れる~!
アイシャがまだ睨んでいる。
「あ・あの、アイシャさん!
よく分かっていないんだけど、太もも・・・嫌、膝枕ありがとう御座いました」
土下座をする。
ここは誤りに徹する時だ。
俺の感がそう言っている。
「まぁ、今回だけは許してあげるわ!」
顔をプイと横に向ける。
でも、顔はまだ真っ赤っか~。
もしかしてツンデレさんですか~?
名残惜しいが、アイシャをからかうのは一先ず置いておいて。
「アイシャ!僕どれくらい寝てた?」
「3時間くらいかしら」
あれま!
結構寝てたんだなぁ。
と云う事はもう17時くらいか。
「状況はどうなっているか分かる?」
「あまり変わってないみたいよ。
でもあなたのお陰で、私達癒しの方は、少し休むことが出来たわ。
有難う!」
そうか!
アイシャ達、少しは休む事が出来たか。
良かった良かった。
その時、誰かが走って広場に駆け込んで来た。
「ギルド長が帰って来たぞ!」
朗報が届いた。
ついに討伐隊が戻って来たのだ・・・
本日は夕方にもう1話更新予定です^^
次回『第39話:2つ奇跡』をお楽しみに~^^ノ
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