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リアース戦記 ~鉄壁のルーク~  作者: ナナすけ
小さな英雄の章
37/187

第36話:スタンピード3

 リアース歴3235年 6の月22日 19時頃。


 日が暮れ始めていた。


「戻りました!南の方も取りあえずゴブリンは発見出来ませんでした」


 町中を探索したが、ゴブリンはいなかった。

 正門から侵入したゴブリンは 取りあえず討伐成功である。


「ご苦労様!次の指示まで少し休んでくれ」


 ステイさんの顔に少し疲れが見えて来ています。

 ずっと動きっぱなしだからねぇ。

 最初、冒険者ギルドで指揮を執っていたステイさんであったが、今は町の中央に位置する中央公園の広場に仮本部を設置し、そこで指揮を執っている。

 中央だと、東西南北平均して対処しやすいからねぇ。

 町の住人達も皆が中央広場に避難しに来ていた。


 あれからゴブリン達はハシゴと云うか切った木を使い、石垣を乗り越える作戦に出て来ていた。

 今まで数度行われたが、見張り塔にいる監視役の素早い察知のお陰で、これを皆で撃退しているそうだ。

 今、ゴブリン達と戦える者は冒険者や町の警備員を合わせて50人程度。

 怪我人が半分くらいになって来た。

 何処まで守れるんだろうか・・・


「怪我人がまた出た!こちらに運ぶのを頼みます」


 力のありそうな男性達が患者を運ぶ。

 怪我をした人達は、中央公園に集められ、シスターや女性の方々に介抱して貰っている。

 最初に正門を抜けたゴブリン達によって怪我をした人達も含めるとかなり増えて来たな。

 シスターやアイシャも含めて聖の精霊術の癒しを出来るのは4人くらいだ。

 これはとても足りないぞ。

 ここは俺が動くしかないか。

 でも魔力量が心配だ・・・


「シスター!怪我人を少し集めて頂けますか。

 僕が『エリアヒール』でまとめて癒しを掛けます」

「エリアヒールですって!

 あなたが聖の精霊術を使える事はマレ姉さんの手紙で知っていましたが、まさかエリアヒールまで使えるなんて・・・エリアヒールには莫大な魔力量が必要なのよ」


 シスターが信じられないと云う顔をしています。

 まぁゴーレムを2体同時に生成出来る俺ですからねぇ。

 かなり厳しいけど、1回は使えるよ。


「問題ありません。ただ、魔力量がギリギリなので1回キリです」

「ルーク!あなた聖の精霊術まで使えたの?」


 アイシャも驚いて顔をしているね。

 聖の加護持ちだって事は周りには内緒にしていたからねぇ。


「まぁね!」


 俺はアイシャにウインクをする。

 あれ!上手く片目が潰れない。

 変な顔になっているんじゃない俺?

 恥ずかしい~!


「詠唱を始めます!アイシャ達は少し下がってね。

 癒しをもたらす聖の精霊達よ!我の願いを聞き届け、聖なる力を与え給え!

 傷つけられし全ての者に癒す力を~!『エリアヒーーール!』」


 俺は空に向かって左手を伸ばす。

 空から癒しの力の輝きが降る。

 小さな星が降っているみたいで綺麗だ。


「「「わぁ、綺麗!」」」


 子供達が騒ぐ。

 周りの人達からどよめきが上がる。


「あ!傷が治って行く・・・」

「「「俺もだ!」」」


 成功したようで良かった。

 俺は急に力が抜け、地面に片膝を着く。

 魔力が根こそぎ持っていかれたな。

 う!ヤバい!

 意識が・・・



 気が付くと、俺は広場のベンチで寝かされていた。

 う~、身体がダルイ!


「あ!ルーク目が覚めたのね。良かった・・・」


 アイシャの目に涙が。

 俺を心配してくれたのか・・・

 嬉しいな!

 出来れば、その素晴らしい胸で癒しておくれ~。


「ルーク、これを飲んで」


 ん!なんですかこれは?

 お茶か何かかな?


「アイシャ、これは何?」

「魔力を少し回復できるお茶よ。マジックポーションよりは効果が薄いんだけどね」


 へぇ~、そんなお茶あったのね。

 初めて知ったよ。

 ハンナ師匠~、教えて貰ってないぞ~!

 ズズズと茶を飲む。


「うげ!苦い!」

「その苦いのが良いんじゃない。ルークはお子様なのね!」


 久し振りにキター!

 見事なボディブロー。

 アイシャはやっぱりこうでなくっちゃ。

 あれ!俺ってMっけがあったのね・・・


「あぁ、身体が少し楽になって来た・・・アイシャ!僕ってどれくらい寝ていた?」

「1時間くらいかしら」

「そっか!早く戻らなくちゃ」


 俺は起き上がる。

 ヤベっ、身体に力が入らない。

 足がもつれた。

 倒れそうになるところをアイシャが支えてくれる。


「まだ寝てなきゃダメよ!」

「で・でも、皆を守らないと・・・」


 その時だった。


「馬鹿を云うのはお止し!」


 雷が落ちたかと思った。

 そこにはミネバ婆ちゃんが仁王立ちしていたのだ。


「心配かけさせよって・・・その子の云う通りしばらくは大人しく寝てな!」

「でも、ミネバ婆ちゃん。人手が足りないんだよ。僕が頑張らなきゃ・・・」

「だから、馬鹿を云うのはお止し!お前はまだ未成年なんだよ。

 そんな事は大人達に任せておけばいいんじゃ。

 それに、お前はこの町のもんじゃないだろ。

 そこまでして命を張る義理がないじゃないか。

 お前まで・・逝っちまう気かい・・・

 また・・・ワシを一人にさせるのかい・・・」


 ミネバ婆ちゃんは泣いていた。

 ズルいよ!

 そんな事言われたら俺・・・


「この婆さんの言う通りだ!」

「露店のおっちゃん!」

「お・お前は・・・まだガキのくせして・・・無理し過ぎだ。

 ゴブリンに向かって行って・・・

 俺を助けて・・・

 襲われている女性を助けて・・・

 門を守って・・・

 町中走り回って・・・

 皆の怪我まで直して・・・

 お前がこんなに頑張っているのに・・・

 お・俺は情けねぇ大人だ・・・」


 おっちゃんの目にも涙が溜まっている。

 気が付くと、皆がこっちを見ていた。

 場がシーンとなる。


「ガキが命まで張って頑張ってくれているんだ・・・

 俺達はここで怯えたままで良いのか?ここは俺達の町だ!

 俺達自身が頑張らなきゃいけないんじゃないのか?」


 おっちゃんが涙を拭って皆に訴えかける。


「その通りだ!」

「「「そうだ!」」」


 1人・・また1人と立ち上がる。

 そこでステイさんが現れた。


「皆さん、聞いて下さい!

 今回、我々冒険者ギルドは大失態を起こしてしまいました。

 ギルド長を含めた屈強な冒険者達は、昨日の朝からゴブリン狩りに出かけました。

 そして、この襲撃です。

 ゴブリン達がワザとこの状況を作り上げたかどうかは分かりませんが、私達が判断を誤ったばかりに皆さんにご迷惑をかけてしまった・・・」


 ステイさんは、ここで土下座を始める。


「どうか・・・どうか皆さんの力を貸して頂きたい!

 何を勝手な事とお思いでしょう。

 今は・・・今は、人手が欲しいのです。

 幸いにこのルーク君のお陰で、正門・裏門は固く守られています。

 守っていれば・・・守りに徹していれば、鐘を聞いたギルド長達は急いで戻って来るはずです。

 明日か明後日の朝には・・・

 そして、狼煙も上げたので援軍も着てくれるはずです。

 狼煙の伝達が早ければ、ルーラの町の氷虎騎士団が、1週間はかかるかもしれませんが、必ず・・・必ず助けに来てくれるはずです。

 どうかお願いします!

 皆さんの・・・皆さんの力をお貸しください!」


 ステイさんが頭を深く下げてお願いをする。

 ギルドの職員達も順次土下座をして頭を下げる。


「頭を上げてくれよ、副ギルド長さん。別に冒険者ギルドの失態でも何でもないさ。

 ここは俺達皆の町さ。大変な時は手を取り合って助け合わないとな。

 俺達は手伝うぜ!なぁ、皆?」


 露店のおっちゃんがステイさんの肩に手をやりポンポンと軽く叩く。

 皆に振り向き声をかける。


「「「あぁ、勿論さ!」」」「

「やってやる!」」

「ここは俺達の町だ」


 一斉に歓声があがる。


「皆さん、ありがとう」


 ステイさんが頭をもう1度下げる。


「だから謝る事なんてないさ。むしろ謝るのは俺達の方だ。

 ビビッて、怖気づいて、文句ばかり言って・・・いい大人が情けないぜまったく」


 おっちゃん、カッコいいぜ!

 良いところをおっちゃんに持っていかれた。

 でもね、おっちゃん・・・

『ズボンのチャックが開いていますよ!』

 キャ~!恥ずかし過ぎ~。


「ルーク君、感謝します!」


 ステイさんが俺に頭を下げた。


「ぼ・僕は別に何も・・・」


 急にこっちに話を振るから焦っちゃったよ。


「君のお陰で、町が・・・町の皆が一つになった。本当に有難う」


 皆が僕を見ている。

 恥ずかしいや!

 でも・・・何か誇らしい気分です。

 父さん、俺の事を見ている?

 俺はどうやら皆の役に立てた様です。

 少しだけ誇っても良いよね・・・父さん。


名前すらないチョイ役の露店のおっちゃんが、良い見せ場を演じてくれました^^

次回『第37話:スタンピード4』をお楽しみにね~^^ノ

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