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リアース戦記 ~鉄壁のルーク~  作者: ナナすけ
小さな英雄の章
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第34話:スタンピード1

第2章の話は佳境へ・・・

 スタンピード現象。

 魔物が異常繁殖して、町や村を襲う事態である。

 スタンピードによって壊滅した町や村は多い。

 戦争に次いで厄介な出来事だ。

 今、ある町がこのスタンピードによって襲われようとしている。

 危機はすぐ傍まで・・・




 リアース歴3235年 6の月22日16時半。


 俺とアイシャはリーナ親子をいつまでも見送っていた。

 二人とも黙ったまま静かに・・・

 その時だった。

 アイシャの肩に載って来たイナリが俺の肩に飛び移り鼻をヒクヒクさせていた。


「どうしたイナリ!何かあったか?」


 イナリはまだ鼻をヒクヒクさせている。


「ん!何かあったの?」


 アイシャが俺の顔をマジマジと見ながら聞いて来た。

 あれ?アイシャから何か熱を帯びた視線を感じる。

 何だろう?風邪かな?

 まぁ、今はそんな事どうでも良いか。


「イナリがこうやって鼻をヒクヒクしている時は、魔物か何かが近くにいる時なんだ」


 俺は険しい表情をしながら答える。

 ん?正門の方が何だか騒がしい。

 嫌な予感がする。


「アイシャ!君を急いで教会に行け。嫌な予感がする!」


 俺は正門に向かって駆けだす。


「い・嫌な予感って何?」


 アイシャは俺に呼びかける。

 今は、詳しく説明する時間も惜しいんだ。

 俺は正門に走りながらも振り向いて話す。


「いいから早く教会に戻るんだ。いいね!」


 もう振り向かない。

 ひたすら正門目指して走る。

 その時だ。


「カンカンカンカンカンーーー!」


 正門の上に建つ見張り台の鐘が鳴った・

 これは、何かの異常事態を知らせる鐘だ。

 もしかして!

 俺は嫌な予感が的中していない事を祈り、正門に向かって走る。


 正門が見えて来た。

 正門の両開き大扉は、後少しで閉じようとしている。

 しかし、大扉の間から緑色の何かが通り抜けようとしている。

 ゴブリンだ!

 やはり奴らだった。

 嫌な予感が当たってしまった。


 スタンピード!


 俺の頭の嫌な文字が浮かび上がる。

 ゴブリンによるスタンピードだ。

 すでにゴブリンの何体かは入り込んだ様だ。

 あ!あれは副ギルド長のステイさんだ。

 大扉を閉める門番をゴブリンの攻撃から守っている。

 俺は鞘から脇差を抜く。

 すでに通り抜けたゴブリンの何体かは、町の人を襲おうとしている。


「お・俺が相手だぁ~!土なる力を我に与え給え!新しき従者!出でよ!『ゴーーレム!』」


 魔石を使って鉄人君を呼び出す。

 

「鉄人君は大扉を閉める手伝いを。イナリも侵入しようとするゴブリンを相手にしてくれ」

「キュキュ!」

(ルークは一人で大丈夫?)

「俺は大丈夫だ!それよりも扉が優先だ、頼むぞ!」

「キュ!」

(分かった!)


 俺の指示で走る鉄人君。

 イナリは俺の肩から鉄人君の頭へとジャンプする。

 俺は左前面にいる一番近いゴブリンに走り寄る。

 昔みたいにビビったりはしない。


「オラオラオラー!」


 ゴブリンの脇を右にすり抜けざまに銅を切る。

 振りざまに頭から切る。

 十文字の傷跡から血が出る。


「グギャー!」


 ゴブリンが倒れる。

 一丁あがり。

 次に右手前で露店のおっちゃんに襲い掛かろうとしているゴブリン。

 俺は走りながら新しい詠唱を唱える。


「土なる力を我に与え給え!守る土壁を!『ウォーーール』」


 襲い掛かろうとしたゴブリンとおっちゃんの間に土壁を立ち上げ、おっちゃんを守った。

 ギリギリセーフ!

 ゴブリンは頭から土壁にぶつかった様でフラフラしている。

 今がチャンスだ!

 俺はゴブリンに駆け寄りながら寸前でジャンプする。


「オリャー!」


 刀を頭から振り下ろす。

 ゴブリンの額は割れ、一刀両断である。

 その場に崩れ落ちるゴブリン。


「おっちゃん、無事かい?」

「お・おう、助かっぜルーク」


 おっちゃんはガクガク震えている。

 当たり前か。


「おっちゃん、ここは危ないから早く逃げて」


 俺は次のゴブリンを探す。

 屋台の2件隣りでお姉さんがゴブリンに捕まっている。


「キャー!助けてぇー」


 ゴブリンは両手で女性の腕を掴んでいる。

 武器らしき物はもっていない。

 よし!

 素早く駆け寄る。

 一体目のゴブリンと同じように右にすり抜けざまに銅を切る。

 そして振り返りながらゴブリンの両腕を縦に切る。

 ゴブリンの両手が飛ぶ。


「ギギギー!」

「キャー!」


 ゴブリンとお姉さんから悲鳴があがる。


「お姉さん離れて!」


 縦に振った刀を地面スレスレで手首を返し、左斜め上に切り上げる。

 手ごたえあり!

 ゴブリンが倒れる。


「おっちゃん、このお姉さんも連れて逃げて」


 まだ、あたふたして逃げていなかったおっちゃんに声をかける。


「わ・分かった!任しておけ」

「頼んだぜ、おっちゃん!」


 周りを見渡すと、冒険者らしき人が何人かが見えて、ゴブリンと戦っている。

 どれくらいのゴブリンに侵入されたんだ?

 ちまちま戦闘しているより、まずは大扉を閉めるのが先だな。

 俺は、正門に向かって走る。

 鉄人君が大扉を閉める手伝いをしている。

 少しずつは閉まって来ている様だ。

 流石、馬鹿力の鉄人君。

 イナリは、ステイさんと一緒に入り込もうとしているゴブリンの顔に狐火を射かけて防いでいる。

 もう少しだ。

 扉に着いた俺は、扉を閉める手伝いをする。

 もう少し、もう少しだ!

 隙間は後、十数cm。

 ゴブリンの手がやっと入る程度の隙間だ。

 ステイさんが伸びるゴブリンの手を全て切り落とした。


「今だ!」

「「「「「「どりゃー!」」」」」」


 一斉に声を上げて力をこめる。

 徐々に扉が閉まる。

 扉の向こう側のゴブリン達も必死に押し返す。

 しかし、鉄人君いる俺達の力には及ばない。


「ガタン!」


 やった!

 とうとう閉まったぞ。


「急いでかんぬきで固定しろ!」


 ステイさんが門番たちに素早く指示を出す

 かんぬきとは、両開き扉を開かない様にするための横木の事さ。

 かんぬきで固定されたのを確認すると、俺は門番達に向かって叫ぶ。


「少し下がって下さい。これから土壁で強化します。

 土なる力を我に与え給え!守る土壁を!『ウォーーール』」


 扉を覆う様に厚い土壁が立ち上がっていく。

 ガタン!と云う音で土壁が完全に扉を覆った。

 おぉ~!と周りから歓声が上がる。


「ふー!これで破られる心配はないと思います」

 

 取りあえず一安心。


「ルーク君、助かったよ!本当に有難う!」


 返り血をたくさん浴びたステイさんが来る。

 俺も似たようなもんか。


「いえいえ!」

「ギリギリ間に合って良かった!

 後少し遅れていたら敵の本体に取り付かれて破られるところだったよ」


 城門の裏側でゴブリンが騒ぐ声と門にぶつかっている音がする。

 先に侵入されたゴブリンはほぼ倒し終わった様だな。

 今、この周りにいる者は門番や冒険者を合わせても50人程度だ。


「ステイさん、この町の出入り口って正門と裏門の二か所だけでしたっけ?」

「そうだ!」

「僕はこれから裏門に向かいます」

「ふむ!裏門も完全に閉めないといけないな。半分はここで警戒を頼む!

 残り半分は私に着いて来い。他にゴブリンがいないか探索をしながら裏門へ行くぞ!」

「「「「「おぉ!」」」」」


 皆一斉に動き出す。

 スタンピードはまだ始まったばかりである・・・


次回『第35話:スタンピード2』をお楽しみください~^^ノ

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