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リアース戦記 ~鉄壁のルーク~  作者: ナナすけ
小さな英雄の章
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第24話:帰り道

 出会いは人生を豊かにする。

 人生と云うは人と人の出会い。

 一生の間にどんな人物との出会ったかで価値が変わって来る。

 常に新しい出会いはそこにある。

 ルークも又同じである・・・




 リアース歴3233年 6の月21日。


 19時くらいかな?

 教会を出た俺の足取りは重く、エターナの町をプラプラ歩いていた。

 俺の事が心配なのか、イナリが俺の顔を舐めて慰めてくれる。


「有難う、イナリ!」


 俺は左肩に居るイナリの頭を優しく撫でてあげる。

 イナリは良い奴だな。

 あの昔の横柄な態度がウソのようだぜ。

 あ!また噛んだ!

 痛いです。

 いつもいつもゴメンさない。

 もう変な事考えません。

 許して下さい!

 お願いだから、心を読まないで下さいませんか。

 本当にお願いします。


 喧嘩しながら大きな公園を歩く。

 すると、ベンチに一人で座っている負のオーラ出しまくりのお婆さんが居た。

 悲しそうな目だな。

 前世のあの頃の俺と同じ目をしている。

 あの頃とは愛子が亡くった頃の事さ・・・


「お婆さん!どうかしたの?」


 俺は溜まらず声を掛けてしまった。

 放っておけないよ。


「何でもないよ・・・優しい子だねアンタは。

 子供はもう家に帰っていなきゃならない時間だよ。

 お父さんお母さんが心配するよ・・・」


 優しそうで悲しそうなお婆さん。

 目に力が感じられない。

 目に光がないのが分かる・・・


「僕にはお父さんもお母さんもいないよ。

 お母さんは僕を産んで死んだらしい。

 父さんはこの間の戦争で死んじゃった・・・」


「あ・あんたもかい・・・すまない事を言ってしまったね」


 お婆さんの目に涙が零れる。

 お婆さんを僕の両手を包み、包んだ手で優しく撫でてくれた。

 俺も少し涙ぐみそうになった。

 でも堪える!

 もう泣かないって決めたから。


「ワシの一人息子も戦争で逝ってしまったのさ。

 親を置いてサッサと死んじまった親不孝者の馬鹿息子さ・・・」

「そっか・・・お婆さんも僕と一緒だったんだね」

「その通りさ!」

「お婆さん!又会いに来ても良い?僕は今、冒険者見習いをしていてさ。

 これから毎月、郵便物を届けにルタの村からやって来るんだよ。

 毎月この町に来る目的の一つにお婆さんと会うって事も加えたいんだ。

 いいよね?」

「あぁ、いいともいいとも!お前が来るのをこの公園で待っているさ」


 お婆さんは涙でクシャクシャの顔になってしまった。

 でも少しだけ目に光が灯った様だ。

 又来るからね。


「僕の名前はルーク!お婆さんの名前は?」

「ワシは、ミネバじゃ!」

「今日はもう遅いから又ねミネバ婆ちゃん。おやすみなさい!」


 俺はワザと明るめに言った。

 軽く手を振って走る。


「気を付けるんじゃぞ、ルーク!」


 ミネバ婆ちゃんがベンチから立ち上がり、俺に手を振り返してくれた。

 その手はいつまでもいつまでも・・・



 公園から出て広い道路の表通りを走る。

 途中でお腹が鳴った。

 そう言えば、夕食少しだけ食べて帰って来ちゃったからなぁ。

 又、露店のおっちゃんのお肉の串刺しで良いかな。


「イナリ!又、露店のおっちゃんの串で良いよな?」

「キュ!」


 そのまま露店のおっちゃんの所まで走った。


「おっちゃん、又肉の串刺し三本おくれ」

「お!坊主!又来てくれたのかい。おじさん嬉しいなぁ。今日は一本おまけだ」

「本当に?ヤッター!ハイ、銅貨3枚」

「毎度あり!又来てくれよ坊主。肩に乗っているちっこいお前もな!」

「うん!必ず又来るね!」

「キュ!」

「お!ちっこいのが返事をしたぜ!利口だねぇ」


 俺はその場を後にする。

 俺は肉の串刺しを食べ歩きしながら、冒険者ギルドに向かう。

 イナリも一心不乱で肉にがっついている。


 ちょっと行儀が悪いけど、食べながら冒険者ギルドのドアを開けた。

 まだ賑わっているなぁ。

 何かフロアが酒臭い。

 飲んでいる人もいるんだ。

 俺は人混みを抜け階段を上って仮眠室へ行こうとする。


「お!そこの君!」


 50歳くらいの白い髪のおじさん?おじいさん?

 微妙な線だな。

 髭まで真っ白だけど、これは歳による白髪なのだろうか悩む。

 腕が太い。

 強そうだよこの人。

 この人の発言で皆の視線が俺に集まる。

 ヒェ~、目立っているよ俺~。


「あ・あの・・・ぼ・僕に何か御用でしょうか?」


 緊張して噛んじゃった。

 恥ずかしい!


「お前さん、もしかしてロディの息子か?」


 え!この人、父を知っている?


「父さんを知っているんですか?」


 俺は上りかけた階段を下りる。


「やはりロディの息子か。

 似ているな・・・俺はベルクーリ。

 このエターナの町の冒険者ギルド長だよ」


 え~!この人がベルクーリさん。

 確かロットのおじさんと父の会話に出て来た人だったよな。

 昔、お世話になったとかどうとか・・・

 周りで「あいつ、ロディさんの息子らしいぞ」という声が次々と聞こえてきます。

 父ってもしかして有名人だった?


「あ!ギルド長で御座いましたか。初めましてです。

 ロディの息子でルークと言います。

 今後ともよろしくご指導お願い致します」


 よし、噛まずに言えた。

 俺はあえてロデリックの名は出さず、愛称のロディの方を出した。

 だって、ロデリックの名は何か訳アリみたいだったしさ。

 俺ってグッジョブ!


「ふむ、フォッカーが言っていた様に礼儀正しく賢そうな子じゃな」


 あ!フォッカーさんってこの町にいたんだったっけ。

 すっかり忘れていたぜ!

 ソーリー、フォッカーさん。


「そう言えば、フォッカーさんはお元気でしょうか?

 探したけど、居所が分からなくて・・・」


 勿論、ウソです!

 ごめんなさい。


「フォッカーは今、遠出をしておる。1週間くらいは戻らないであろう」

「そうですか。では次回会うのを楽しみに取っておきます」


 ハイ、フォッカーさんの事はこれで終了ね。

 一応、義理は通したぜ!

 俺って悪い子~。


「ルークよ!ロディの事は、本当にすまなかった。俺が無理に頼まなければ・・・」


 ベルクーリさんが俺に頭を下げる。

 ちょ・ちょっと待って~。


「ギ・ギルド長!頭を上げて下さい。

 そんな顔しないで下さい。

 あれは、父さんが決めて受けた依頼です。

 父さんが命を落としたのは・・・父さんの・・父さん自身の責任です。

 ギルド長の責任ではないですよ」

「しかし・・・」


 ベルクーリさんの苦渋の顔は終わらない。


「本当に自分勝手な父親ですよね。

 子供の面倒を途中放棄して勝手に逝ってしまうんですから。

 でもね・・・父さんは・・・父さんは僕のヒーローですよ。

 自慢の父さんです!

 だって、若い命を何人も救ったんですよ。

 父さんの死はけして無駄ではないんです。

 だからギルド長・・・そんな顔しないで下さいよ。

 それ以上は、父の行為を侮辱したとみなしますよ!

 これでこの話は終わりです。良いですよね・・・ギルド長」

「俺はお前を孤児にしてしまった!その責任が・・・何か償いをさせて欲しい」


 責任感じちゃっているんだねぇ。

 そんなに気にしなくても良いのに・・・


「僕が孤児になった事は気にしなくて良いですよ。

 父さんは依頼事が多くていつも家にいなくて、ほとんど孤児園で預かって貰っていましたからね僕。

 今と大して変わらないんですよ。

 楽しくやっているから、ギルド長が責任を感じる事は全然ないんですよ。

 でも、それじゃギルド長の気が晴れないのか・・・そうだ!一つだけお願いしても良いですか?」

「ん?何だ?何でも言ってくれ!」

「誰か刀術を教えて頂ける方を知りませんかねぇ?

 ルタの村のロットさんが、剣の使い方ならたまに見て頂けるんですけど、剣と刀の使い方は少し違っていまして・・・

 僕は父さんの土の精霊術に刀術、このスタイルを継承して行きたいんですよ」

「確かにそうだな・・・分かった俺に任せておけ。一人心当たりがある!

 確か放浪の旅をしていると・・・探してみるから、しばらく時間をくれ」

「本当ですか!お願いいたします」

「分かった!話が決まったところで、これから一杯付き合わないか?

 ロディの事やお前の事もいろいろ聞きたい」

「僕、未成年ですよ!

 それに申し訳ないんですけど、明日の朝早くにルタの村に帰らないと行けないので・・・」

「そうか・・・仕方がないな。又来るんだろ?」

「ハイ!1カ月に1度の郵便依頼があるので毎月来ますよ」

「では、次回を楽しみしておこう。気をつけてな」

「ハイ!有難う御座います」


 ベルクーリさんと別れて俺はすぐに就寝した。

 明日の朝は日が昇る前にルタの村へ出発だ。

 エターナの町ではいろいろな人と出会ったなぁ。

 楽しかったなぁ。

 忘れたい黒歴史も出来たけど・・・


夕方にもう1話投稿予定で~す^^

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