第22話:聖女候補
リアースは精霊術が存在する世界。
精霊術は親の遺伝などが関係しており、現在は聖の精霊術士が他の精霊術士より少ない状況となっている。
聖は癒しを施す力。
医術などが特に発達していない世界などで聖の担い手は重要なのだ。
聖女候補。
聖の精霊術を使える女の子の事である。
聖女候補の子達は、聖女の称号を受けると教会に入る。
各地の都市や町、村に派遣されるのだ。
聖女にならず、貴族の側室や妾になる者もいる。
次代の聖の担い手を産むために。
聖女候補、彼女らの未来に自由はないのかもしれない・・・
リアース歴3233年 6の月21日。
教会を出た俺は、その足ですぐ商業者ギルドにやって来た。
ポーションを売るためだ。
冒険者ギルドも商人ギルドも1日中開いている。
だから安心して来れる。
先ほどみたいに「非常識」と言われる心配はない。
くすん!
ギルドの受付カウンターの女性が暇そうに座っていた。
朝早いから誰もいないのかなぁ?
「すいませ~ん!このポーションって幾らくらいで買い取って貰えますかねぇ?」
ポーションが20瓶入ったケースをカウンターの上に置いた。
割れない様にここまで持って来るのは大変だったわ~。
この世界ってアイテムボックスなんて便利な物ないしさ。
ケースは瓶が割れない様に工夫はされているんだけど、馬タイプの鉄人君でかっ飛ばして来たからさぁ。
振動で割れないか心配で心配で。
「すぐ確認しますが、しばらく時間を頂きます。少し時間を潰していて下さい」
「ここに子供用のおもちゃ置いていますか?あったらそれを見ながら時間潰しています」
「あちらに御座いますよ」
右手が1階奥の棚を刺した。
俺はおもちゃの棚に向かった。
いっぱいあるねぇ。
お!これはオセロか?将棋もある!
ん~、俺の様に前世の記憶がある人が作ったのかな?
先を越されたなぁ~。
内政テンプレでウハウハって無理そうですわ。
俺はルタの村の仲間のためにオセロとトランプを1セットずつ買った。
皆でワイワイ遊べそうだな。
7歳の女の子ミーナのために可愛いウサギのお人形も買った。
ミーナ、喜んでくれるかなぁ?
ポーション1個は大銅貨1枚で買い取って貰える事になった。
20本だから、合わせて銀貨2枚を得た。
ポーション1本で大銅貨1枚の仕入れ額は、戦争前とほぼ同じらしい。
何処も高騰化が終わり、今までの適正価格に収まりつつあるらしい。
在庫の余分は問題なさそうなので、急な値下がりはないだろうと商人ギルドの人は言っていた。
他の薬品もほぼ同じ状態らしいが、マジックポーションだけはまだ少し値段が高いらしい。
もうしばらく値段が高いままだろうと予想していた。
これで師匠に頼まれた依頼も終わった。
今は正午くらいか。
夕方まで少し時間があるな。
エターナ森林付近で薬草の収集と狩りでもするか。
おっと!狩りはいかんぞ狩りは。
四時間ほどの収集&狩りだったが、成果は上々であった。
薬草150束と一角ウサギが何と4羽も。
結局、狩りしちゃいました。
稼ぎは大銅貨8枚と銅貨5枚。
良い小遣い稼ぎとなった。
魔石4個はそのままゴーレム生成用のために保持しておき、肉は教会の手見上げ用にした。
タダでご馳走になるのは気が引けるしね。
5時頃、俺は肉を持って教会に行った。
朝と同じように恐る恐るドアをあける。
「こ・こんばんは~」
ドアを開けて中をキョロキョロ見回す。
あ!あの子がいる。
俺に気付いてやって来た。
「あら、朝の非常識な人。いらっしゃったのね」
いきなりのボディブローです。
泣いちゃうぞ~。
「アイシャ姉ちゃん。この人が朝話してした人?」
「そうよ!」
一緒にやって来た年下の男の子がチラチラ見ながらアイシャと話している。
「あ・あの~、この肉をどうぞ!獲って来たばかりで新鮮です」
俺は、恐る恐る肉を差し出した。
あ!右手に一角ウサギを捌いた時の血がまだ残っていた。
「ヒッ!や・野蛮人!」
アイシャの顔が青くなっています。
腰が引けているよ。
「わ~い!肉だぜ肉!兄ちゃん冒険者なの?これって自分で獲ったの?」
こっちの男の子は元気だな。
肉を見て大喜びだ。
良かった。
「うん、そうだよ!エターナ森林で狩って来た」
ちょっと自慢気に言いました。
エヘっ!
「凄ぇ~!狩った時の話を聞かせてくれよ。俺も冒険者になりたいんだ!」
お!目がキラキラしている。
俺の腕を引っ張って奥に連れて行こうとする。
この子は冒険者希望なのか~。
よしよし!お兄さんが教えて進ぜよう。
「冒険者なんて野蛮人だっていつも言っているでしょ。そんなのになるのはお止しなさい」
野蛮人野蛮人って何度も~。
俺って目の敵にされている?
凹んじゃうよ俺~。
「アイシャ姉ちゃんは黙っていてよ~。兄ちゃん、あっち行こうぜ」
「あぁ!その前にこの肉をシスターに渡してからね」
シスターに肉を渡すと何度も何度も頭を下げられて感謝された。
これはこれで照れ臭いと云うかこそばゆいです。
夕食の準備が出来るまで、子供達からいろいろと質問攻めにあいました。
冒険者ってどんな事をするの?
魔物ってどんなの?
怖い思いした事ある?
とか興味津々である。
イナリも子供達に大人気である。
最初は順番にモフモフさせて上げていたイナリだったが、イナリの取り合いが始まったため、今は本棚の高い所に避難している。
子供達は俺を中心に輪になって話を聞いている。
アイシャさんだけが、少し離れた所にいる。
俺って本当に目の敵にされているわ・・・
「兄ちゃん、俺も12歳なったら冒険者見習いになりたいだ!
冒険者になったら一緒に冒険しようぜ!」
先ほどから話に一番食いついて来ている男の子が言った。
彼は俺より二歳年下でマシューと言うそうだ。
赤髪の坊主で目が茶色、わんぱく坊主って感じの子だ。
慕ってくれるのは嬉しいな。
「何度も言っているでしょマシュー!冒険者なんて止めておきなさい、野蛮なんだから」
また始まったよ。
「アイシャ姉ちゃんは黙っていてよ。聖女候補様は気楽でいいよな。
俺達と違って成人しても教会に居られるんだしさ」
ん?今、何て言った?
聖女候補?
何それ?
美味しいの?
「聖女候補?」
つい疑問を声に出してしまった。
「あなたそんな事も知らないの?田舎者ねぇ、きちんと勉強しているの?」
くっ!そこまで言われなきゃならんのか。
段々、腹が立って来たよ俺。
(ホント!イヤな感じ~! byロケット団)
「聖女候補って、聖の精霊術が使える女の子の事を言うんだよ。
病気やケガを直してくれる素晴らしい人になるんだってさ」
マシューが教えてくれた。
「そうよ!聖女候補はいずれ聖女となって、人々の命を救う尊い存在となるのよ。
あなた達冒険者の様に、無駄に人や魔物の命を奪う野蛮な人達とは違うのです。
武器は人や魔物を傷つけて争う原因となるわ。武器を捨てて争いを無くすのよ。
そうすればこの世界だって平和に・・・」
アイシャが演説は始めちゃったよ。
尊い存在だってさ。
何か何処かの宗教信者みたいで危なくね。
それに日本建国9条みたいな事言い出すし・・・
この子大丈夫かいなぁ?
あぁ~お腹がすいた!
夕食はまだかなぁ・・・
話がかなり長くなってしまったので2話に分けました^^;
夕方に後半部分の23話投稿します。




