第21話:出会い
出会い。
それは偶然ではない。
必然である。
と誰かが言う。
ルークが出会う少女。
彼女との出会い、これも必然なのであろうか?
それは誰も分からない。
分かるのは神のみである。
今、ルークに運命の出会いが訪れる・・・
リアース歴3233年 6の月21日。
冒険者ギルドで一夜を過ごした俺は、朝7時頃に目を覚ました。
目を擦りながら起き上がる。
イナリはまだ俺の使っていた枕の横で丸まって寝ている。
仮眠室には、他に2人の男性が寝ていた。
「う~~ん!寝た寝た」
俺の声でイナリも起きた様だ。
猫の様に舐めた手で顔を洗っている。
今日は、教会に手紙を届けて、ポーションを売りに行く。
市場の価格調査もしないとな。
時間があれば薬草の収集もしたい。
ゆっくりと観光をしている暇はないかな?
俺は今日の行動を考えながら、防具を身に着けて行く。
刀も持った。
外套も着た。
「さて、今日も頑張るか!イナリ行くぞ」
「キュキュ!」
イナリは返事をして俺の肩に飛び乗って来た。
俺はギルドの階段を下りて1階に向かう。
階段を下りると、昨日カウンターで受付をしてくれた女性が床の掃除をしていた。
「おはよう御座います!」
「あら、おはよう御座います。昨日はよく眠れた?」
お姉さんが微笑みながら挨拶してくれました。
「ハイ!ぐっすり眠れましたよ。本当に有難う御座いました」
「いえいえ。今日はこれから何かの依頼?」
「いえ。今日はこれから教会行って来ます。ちょっと頼まれ事がありまして・・・」
「そうですか。気を付けてね」
「有難う御座います!ではまた」
俺は軽くニッコリと受け答え、手を軽く振ってギルドを後にした。
ギルドを出るとお腹が鳴った。
「イナリ!昨日の肉の串刺しで良いか?」
「キュ!」
どうやらOKの様である。
俺達は昨日の露店のおっちゃんの所で串刺しを3本買って、食べながらエターナの町の教会に向かった。
昨夜のうちに場所は調べてある。
赤いレンガで出来た塔の様な物が見えて来た。
何だかポーランドのソポト教会に似ている。
ザ・教会って感じだね。
立派で建物が大きい。
ルタの村の教会とは全然違う。
何だろう?
凄い差別感が・・・
俺は教会のドアを恐る恐る開けた。
「し・失礼しま~す。どなたかいらっしゃいますか~?」
ギーと云うドアの音が鳴った。
中はまさに大聖堂ですな。
静かだ。
誰もいないな。
「誰かいませんか~?」
俺はもう一度、今度は大きい声で問いかけた。
俺の声が反響している。
あ!何か隣りの部屋の方から物音がして来た。
隣りに通じているドアが開いた。
「ハイ!どなたですか?こんな早い時間に何か御用でしょうか?
もしかして急ぎの治療がご希望の方で御座いますか?」
俺と同じくらいの歳の女の子かな?
肩越しまで綺麗に伸びた髪は俺と同じシルバー色。
目はブルーかな?
口がちょっとアヒル口っぽい。
唇はプクっとして何か色っぽいなぁ。
綺麗と云うよりは可愛い派だな。
うわ!胸も大きそう・・・
あ!何か機嫌が悪そう。
目が怒っているよ。
「あ!ち・違います。手紙を・・・こちらのシスターに届けに来た者でして・・・」
俺の声は尻すぼみになって行く。
メッチャ睨んでますよ。
怖いです。
「ハァー!手紙を届けに来たですって?
何時だと思っているんですか、こんな朝早くから。
普通は何処も朝食を食べている時間ですよ。非常識な・・・」
そ・そこまで言う!?
確かに、言われてみれば訪問するには非常識な時間かもしれないです。
でもさ。
俺だって今日のスケジュールは忙しいんです。
自分勝手なスケジュールだけどさ・・・
だってさ。
だけどさ。
ウェ~~ン!
言い返せねぇ。
「ゴ・ゴメンなさい!すいませんでした・・・」
素直に謝った。
白旗です。
俺が全部悪いんです。
ウェ~~ン!
その時だ。
奥の部屋からもう一人やって来た。
「アイシャ?どなたかいらっしゃったの?」
クリーム色の髪型をした60代くらいのポッチャリした優しそうな女性の人です。
シスター服を着ています。
マレさんと同じ様に優しそうな雰囲気の人です。
「あ、シスター!この人がシスター宛の手紙を持って来たんですって。
こんな時間に非常識な・・・」
うぅ、これ以上俺の心を折らないで下さい。
お願いします。
「駄目ですよアイシャ。せっかく届けに来て下さった方にその様な言いようは」
うぅ、温かい言葉が目に沁みます。
「だって・・・」
アイシャさんって言いましたっけ?
や~い、や~い!
怒られてブーたれてやんの。
(ざまーかんかん河童の屁ぇ~ってね byぴょん吉)
「あ・あの・・・僕はルークといいます。
これ、ルタの村のシスター・マレさんからの手紙です」
「あら!マレ姉さんからのお手紙だったの。嬉しいわ。
まぁ、あなたも入って入って。良かったら一緒に朝食でもどう?」
シスターはニコニコしながら手紙を受け取った。
姉さん?もしかして姉妹?
雰囲気は似ているけど、顔は似てないぞ。
「シ・シスター!」
アイシャさんが慌ててら~。
ざま~ざま~。
「あ!僕はその・・・朝食は遠慮しておきます。
出来ればお返事を頂きたいと思いますが、お返事は今晩まで書いて頂ければ充分ですので、夜改めて来ます」
「あら、そうなの!だったら夕食を一緒に取りましょう。
そうしましょうね。ハイ、決まり!」
強引だなこの人。
言い出したら止まらないタイプだねこりゃ。
断れないなこれは。
「わ・分かりました。では、他の用事をなるべく早く片付けて夕食時に改めて参ります」
俺は丁寧に頭を下げてこの場を去ったのだった。
あのアイシャって子、可愛い顔してキツイ子だったわ~。
夜にまた会わなきゃならんのか~。
嫌だなぁ~。
俺と彼女はこうして出会った。
お互いに第一印象が最悪な出会いでした・・・
第一印象が最悪な出会い・・・あるあるです^^;




