第20話:エターナの町
エターナの町。
リの国の西方に位置し、西の最大の貿易都市ルーラに次いで賑やかな町である。
エターナ子爵が治めるこのエターナの町は、人口が3千人程度で、冒険者の町と云われている。
北に大きなエターナ森林があり、南には大きな川もある。
西に少し足を延ばせばラウラ大山脈もある。
冒険者と活動して行くには、近場に魔物がいるのは非常に都合の良い。
冒険者で賑わう町。
それがエターナの町である。
ちなみにルタの村もエターナ子爵が治める領内である。
リアース歴3233年 6の月20日。
俺は今エターナの町の門前にいる。
(父さん、俺もついにエターナの町までやって来たよ)
町は高さ4mくらいの立派な石垣で囲まれています。
町の西に正門・東に裏門があり、門の扉も大きく分厚い木製で出来ており、頑丈そうな両開きとなっています。
この扉開け閉めするのに4~5人の力は必要そうだな。
重たそう・・・
今日は朝日が昇る前からルタの村を出発し、馬型のゴーレムの鉄人君を休む暇なくかっ飛ばして来た。
日が暮れかかった19時にようやく到着して、もうヘトヘトである。
し・尻が痛ぇ~!
昨日まで雨だった空は、今日はカラッと晴れて快晴であった。
風は爽やかでイナリは終始うたた寝をしていた。
道中は魔物や賊に合う事もなく、商人の馬車と1回すれ違ったかな。
実に快適な旅であった。
「身分証を見せて!」
「ハイ!」
俺はギルドカードを門番のお兄さんに見せた。
ちょっと緊張しています。
鉄製で防御が固そうな防具を来ている。
重たそうだね。
「ルタの村の冒険者見習いか・・・坊主、一人で来たのか!?凄いなぁ」
「魔物も出なかったし快適でしたよ。でもお尻が痛いです。ゴーレム馬に乗りなれていなくて。
タハハハハ!」
苦笑いをする俺。
お尻が真っ赤っかだろうなぁ・・・
(ウッキッキー!)
「そうか!ワハハハハ!行って良いぞ坊主」
身分証を返してくれた門番のお兄さん。
「有難う御座います!あ・あの冒険者ギルドってどの辺りですかね?」
なんせ初めての町。
何処に何があるかサッパリ分かりましぇ~ん。
「この門を潜って、大きい通りを真っすぐと歩いて行きな。
5分ほど歩いたら左手に大きな建物が見える。
そこが冒険者ギルドだ。誰でも分かるから安心しな」
門番のお兄さんは親切に教えてくれた。
この人、良い人そう。
「ご丁寧に有難う御座いました!では失礼します」
俺は門番のお兄さんに頭を下げて、お礼をきちんと言った。
丁寧に教えてくれた人には、丁寧に返さないとね。
生前、父に何度も言われた。
門を潜り、石畳で出来た大きな道を進む俺。
大きい町~。
こんな時間なのに人が多いや。
食べ物の露店屋がいっぱい出ている。
街灯や露店の提灯で色鮮やかだな。
あの化粧の濃いお姉さんは客引き?
情婦なのかな?
夜なのに町の中が賑わっている。
ルタの村とは大違いだわこりゃ。
俺は露店で売られている肉の串刺しを3本買った。
「銅貨3枚だ。毎度あり~」
露店のおっちゃんが威勢よく言う。
「うん、美味い!」
左肩に乗っているイナリにも食わせてあげる。
「キュキュ」
イナリも気に入ったようだな。
冒険者ギルドで用を済ませたら又買ってやるか。
イナリと周りをキョロキョロしながら食べ歩く。
活気があるねぇ。
左手に大きな木造2階建ての建物が見えて来た。
デ・デカい!
こりゃ間違えようがないね。
うん、門番のお兄さんが言った通りです。
肉の串刺しを全部食べ終わって、手を服の端でフキフキする。
人間最初が肝心。
ヨ~シ!行くぞ。
「こんばんは~!」
俺は勢いよくドアを開けた。
人がいっぱいいる。
ルタの村のギルドとは大違いっす。
「あら、かわいい坊やね!こんな所にどうしたの?」
優しそうなお姉さんです。
でも、目がなんか男を漁る様な目で怖いっす。
こんな所にどうしたの?って皮の鎧を着ていますよ俺。
胸あての部分は未だにないけど・・・
恰好を見たら、一応冒険者って分かるじゃないですか。
もしかして遊ばれている俺?
「依頼で来たんです。では、綺麗なお姉さんまたね」
さり気ない返事を返す。
小心者ですから俺で遊ばないでね。
お願いだからスルーして下さい。
「あら、振られちゃったわ私」
クスクス笑っている。
やっぱり遊ばれていたのね。
カウンターには係のお姉さんが4人で対応しています。
どこもビッシリ並んでいます。
うわ~、時間がかかりそうだね。
仕方なく、一番早そうな所に並びます。
僕の前の人は背が190cmくらいの怖そうなオッサンです。
「ん!坊主は見習いか?」
オッサンが振り向いて話しかけて来ました。
モミアゲが顎ひげとくっ付いている。
うわ~、むさ苦しい!
「ハ・ハイ、そうれす!」
緊張して噛んじゃいました。
顔が怖いんだもん。
も・もしかして、あ・あの新人冒険者が最初に絡まれるテンプレってやつでは?
「見かけん顔だな?」
「あ!僕、ルタの村から郵便物を届けに来ました。
見習いになってまだ1カ月なんです」
喧嘩になりませんように喧嘩になりませんように・・・
「ほう、大したもん!。頑張って立派な冒険者になるんだぜ」
あ・あれ?
俺はズッコケそうでした。
テンプレと違うのね・・・
「「「坊主頑張れよ!」」」
周りの皆から応援されました。
あっちやこっちからも声を掛けられました。
皆、良い人や~。
そんなこんなで話をしていると、あっという間に自分の番になった。
「次の方どうぞ!」
「ハイ!この郵便物をルタの村のギルド長代理から預かって来ました」
俺は緊張していた。
手が震えています。
震えた手で郵便物をカウンターのお姉さんに渡した。
「それはご苦労様でした。封は切られていない様ですね。依頼完了ですよ」
お姉さんはニッコリと笑顔で答えたくれました。
「ギルドポイントと報酬の方はカードに加算しておきますね。
何かお聞きになりたい事は御座いますか?」
「有難う御座います。あ・あの~、この辺で安いお勧めの宿とかありますか?
僕、初めてこの町に来たもんで・・・」
ちょっと恥ずかしいけど聞いちゃいました。
だってさ、お金は大事しないとさ。
節約節約!
「よろしければこの冒険者ギルドにお泊まりになられますか?
冒険者ギルドは見習いや新人の方のために仮眠室みたいな場所を完備しております。
食事はご自分で露店なので買って頂く事になりますが、寝るだけなら問題ないですよ」
それは非常に有難い。
出費が減るから助かるわ~。
「た・助かります。是非、お願い致します」
俺は即返事をした。
「そこの階段を上がって頂いて奥が仮眠室です。ご自由にお使い下さい。
もし、お風呂がご希望でしたら近くに銭湯もありますよ。
銅貨2枚かかりますけど、旅の疲れが取れますよ」
「重ね重ね有難う御座います!」
俺は丁寧に頭を下げてその場を去ったのであった。
良い人ばかりだな~。
エターナの町の最初の夜は更けて行く・・・
次はいよいよヒロインの登場です。長かった・・・




