第19話:エルフのハンナ婆ちゃん
リアース世界の通貨は大陸共通である。
白金貨1枚で100万円の価値。
金貨1枚は10万円。
銀貨1枚は1万円。
大銅貨1枚は1000円。
銅貨1枚は100円。
10進法である。
1食付きの安い宿は大銅貨3枚程度(3000円)。
パン1個は銅貨1枚(100円)。
冒険ギルドの依頼で多い薬草10束で銅貨3枚(300円)。
ちなみにポーション1個に薬草10束が必要であり、作成料が大銅貨1枚(1000円)。
ポーションは商業ギルドで大銅貨3枚(3000円)で売られる。
リアース世界の通貨とはこう云う感じである・・・
リアース歴3233年 6の月18日。
冒険者を始めて1カ月近くが経とうとしています。
なかなか順調です。
イナリが自慢の鼻で薬草や魔物を見つけてくれるので本当に助かっています。
チートな奴だよ本当に・・・
ルタの村のお手伝いは種まきや収穫の時だけで他に仕事はあまりありません。
なので、薬草の収集が主になっています。
狩りも少ししますが、これはついでです。
本当です・・・ついでですよ!
1日の稼ぎは平均で銀貨1枚(1万円)程度でしょうか。
薬草が200束で大銅貨6枚。
額に1本の角が生えた一角ウサギや出っ歯が特徴でネズミより一回り大きいビッグラッドを4匹狩って大銅貨4枚程度。
魔石や肉を抜いて、素材だけならそんなもんです。
見習いの分際で毎日銀貨1枚稼ぐのは凄いそうです。
冒険者ギルドのお姉さんズが驚いていましたよ。
「ルークや!ポーション用の空き瓶を持って来ておくれ」
ハンナ婆ちゃんが、ドスの効いた声で命令して来ました。
怖いです!
見た目は金髪青目で、綺麗で優しそうに見えるお姉さんです。
皆、最初は見た目で騙されます。
詐欺です。
本当に怖いんです。
逆らえません。
「あ!ハイ」
俺は急いで空き瓶の入った箱を取りに行く。
イナリは揺りかご椅子の上で丸くなって寝ています。
片目を開けてこっちを見た!
今、鼻で笑ったぞアイツ!
グヌヌヌヌ・・・悔しい!
俺は今、ハンナ婆ちゃんの所で薬学の勉強中です。
朝から夕方近くまで狩りを・・・嫌、薬草の収集をして、夕方からここで薬学の勉強です。
勉強と云う名でこき使われております。
げ・解せぬ!
「ハンナ婆ちゃん!空き瓶をここに・・・痛っ!」
すりこ木の棒で頭を叩かれた。
それは痛いって!
暴力反対です・・・
「師匠って言えと何回言ったら分かるんだい、この馬鹿弟子は!
ピチピチなエルフに向かって婆ちゃんなどと・・・次、又言ったら命はないぞ!」
「師匠、すりこ木は痛いって!暴力反対!」
俺は頭のてっぺんを自分の右手でナデナデする。
ピチピチって150歳過ぎた婆ちゃんが言うセリフかよ。
若く見えるけど・・・
「フン!一丁前の口を言いやがって・・・ルーク!お前の作ったポーションを見せてごらん」
もう次から次へと
「ハーイ!」
「何だいその返事は!」
「痛っ!」
又殴られました。
凄い速さで。
本当に150歳を過ぎた動き?
妖怪です。
「痛っ!」
「今、何か失礼な事考えていたなお前!」
心を読む妖怪がここにもいました。
何だか理不尽です・・・
俺は昨日作ったポーションを師匠に見せた。
大分良い出来になって来たと自分では思う。
「ふむふむ・・・ほほう!少しはマシになって来たかの~。
これなら一応売り物になるか」
お!なかなかの好評。
「本当ですかお師匠?」
「まぁ。ギリギリの合格ラインじゃな。これからももっと精進せよ」
「ハイ!」
「そうだ!エターナの町はいつ行くんじゃったかの?」
「明後日です師匠」
ロットのおじさんから依頼されている郵便届の件である。
明後日が初の郵便任務です。
楽しみだなぁ。
「だったら、エターナの町でこのポーションを売っておいで。
そして、エターナの町の市場価格を調べて来ておくれ」
「売って来て良いんですか?」
「あぁ、構わん!商売の何たるかを学んでおいで」
ラッキー!
高値で売れるといいなぁ。
「後、市場価格って薬品に関する物ですよね?勿論」
「当たり前じゃ。戦争が終わって、高騰していた価格が収まって来た様だしねぇ。
場合によっては、在庫が余って急下落する事も考えられるのじゃ。
見極めが肝心なのじゃよ、馬鹿弟子」
なるほどなるほど。
さすが金も亡者ですなぁ。
でも、これは確かに肝心な事だな。
こう云う事もしっかり学ばねば。
ルークのエターナ行きはもうすぐ。
運命の出会いまで、もうすぐ・・・




