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リアース戦記 ~鉄壁のルーク~  作者: ナナすけ
聖龍継承の章
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第177話:ファイナルアンサー

 リアース歴3238年 大母神テーラ感謝祭5日目 17時過ぎ。

 ザーン城、王の間の前にて・・・


 俺とアイシャ、ご老公のビルギット様の3人は王の間の入り口に立っていた。


「陛下!英雄殿夫妻とエターナのご老公様がご到着なされました」

「うむ!入室を許可する」


 部屋の中から国王陛下の声が聞こえた。

 王の間への入室が許可された様だ。

 ご老公様を先頭に、俺、アイシャが続いて王の間へ入る。

 そこには、ヘルベート国王陛下、エリオット王太子殿下、バート宰相、バニング伯爵、そして見知らぬ女性1人の計5人がソファに座って待っていた。


 今、どうしてこの様な状況になっているかと云うと、話は天下一精霊武術大会の閉会式終了直後に遡る。




 閉会式が終わり解散となった時、国王陛下から話しかけられた。


「先ほどは済まなかったな英雄殿よ!

 其方の事も考えずに勝手にバニング家継承の話をしてしまった事、どうか許して欲しい」


 それは謝罪の言葉であった。

 なんと国王陛下は俺に頭を下げて来たのだ。


「え!?え・え・え~~~、へ・陛下、どうか頭をお上げ下さいませ。お願いします!」


 国王陛下に頭を下げられパニックになる俺。


「勝手に決めて置いてなんなのだが、出来るならこの後少し時間をくれぬか?

 バニング伯爵を交えて話しをしたいのだ!」

「あっ、ハイ!分かりました・・・」


 そうだよな。

 いきなり孫だとかバニング家継承だとか言われたけど、考えてみれば、まだバニング伯爵と言葉すら交わした事がないんだもんな。

 まずは直接話してみないと事には。


「出来る事ならば其方の奥方も連れて来て貰えるか?

 後、エターナのご老公もだな。其方の後見人であるからな」

「畏まりました!」


 これは有り難い。

 俺1人より2人が居てくれた方が心強いからな。

 こうして、2人を伴って急いでザーン城に登城した訳である。




「遅れて申し訳御座いません、陛下!」

「「遅れて申し訳御座いません!」」


 ご老公様が最初に頭を下げ、俺とアイシャがそれに倣って頭を下げる。


「こちらが急に呼びたてたのだ。全く気にしておらん。

 さぁ、まずは3人共掛けたまえ」


 一人用の豪華なソファに国王陛下が座り、その左手のソファに宰相と王太子殿下が座っている。

 国王陛下の右手のソファにはバニング伯爵と謎のご婦人が座っている。

 俺達3人は、テーブルを挟んで国王陛下の真向かいのソファに座った。


「これで全員揃いましたな陛下!」

「うむ!では改めてバニング家の継承の件にて話をしようか」

「へ・陛下、お待ち下さいませ!

 当の伯爵夫妻と英雄殿夫妻は共にまだ面識がないはずで御座います。

 まずはお互いに自己紹介から致さねばなりません」


 伯爵夫妻だって?

 と云う事は謎の女性はバニング伯爵夫人。

 つまりは俺のお婆様と云う事か。

 言われてみれば、確かに母さんに似ている・・・


「おぉ、確かにそうであるな。先走ってしまって申し訳ないな。

 ワ~ッハッハッハッハ!」


 流石、豪快で知られる国王陛下だ。


「では、まず私から自己紹介致しましょう。

 私の名はロイ・バニング!

 東の聖龍バニング伯爵家当主になります。

 英雄殿、嫌、ルーク、其方の祖父で御座いますぞ」


 ニカっと満面の笑みを見せる伯爵様。

 その笑顔には偉大なる4伯爵家当主の威厳と云うものは感じられず、エターナのご老公様の様な好々爺のイメージと重なる。


「次は私ね!私はティーゼ・バニング。

 彼方の・・・彼方の祖母ですよ、ルーク。

 あぁ、やっと・・・やっと彼方に会えたわ!」


 最後の方は少し涙目になる伯爵夫人。

 そんなに俺と会いたかったのか・・・ちょっと戸惑いはあるけど正直嬉しいな。

 髪の色や目の色などは母さんと違うけど、確かに母さんに似ている。

 お婆様と言うにはまだ若々しさがあってちょっと抵抗感がありますね。


「では次に私ですね。ロデリックとラティーナの子ルークです。

 お初にお目に掛かります、伯爵様、伯爵夫人・・・嫌、お爺様、お婆様と言った方が宜しいのでしょうか?」

「あぁ、それで構わない!」

「えぇ、私もそれでお願いするわ!

 貴方、お婆様って呼んでくれたわ・・・ウゥゥ・・・」


 お爺様お婆様と呼んだだけでここまで喜ばれるとはな。


「最後は私ですね。ルークの妻でアイシャと申します。

 エターナの町の・・・孤児です。

 この様な私で申し訳御座いません、伯爵様、伯爵夫人!」


 アイシャは深々と頭を下げる。


「何を言っているんだアイシャ!

 どうして急に自分を蔑む様な事を言うんだ?」

「だって、貴方は貴族の血を引いているけど、私は父親が誰かも分からない孤児なのよ。

 そんな私を伯爵様と伯爵夫人がお許しになるはずが・・・」

「それを言うなら俺だって孤児だ!誰の血なんて関係ない。

 もし、アイシャを受けいられないなら、この話は無かった事にすれば良いだけだよ」

「貴方・・・」

「アイシャ・・・」

「オッホン!」

「「あっ!」」


 エターナのご老公様の咳払いでハっと我に返る俺とアイシャ。


「仲が良いのは良いが、時と場合を考えなさい、まったく!」


 ご老公様に怒られちゃったよ。

 ウゲ~、やらかした~。

 恥ずかしい!


「英雄殿夫妻は仲が宜しくて羨ましい限りだな」

「誠に!」

「うむ・・・」


 王太子殿下が俺達夫婦を茶化す。

 宰相と陛下がそれに同意したのだが、陛下の目が少し怖いです。

 もしかし俺を睨んでいる?


「聖女殿・・・嫌、アイシャ殿、我々は貴女の事を心の底から歓迎しております。

 貴女はルークと共にすでにリの国では有名人だ。

 その様な貴女を我が家族としてお迎え出来る事を我々は大変喜んでおるのですよ」

「そうですよ!孫の嫁として私達は貴女を歓迎しています」

「伯爵様、伯爵夫人・・・」

「貴女にもお婆様と呼ばれたいわ、ダメかしら?」

「いえ、有難う御座います・・・お婆様!」

「まぁ、嬉しいわ!」

「では、私にもお爺様と!」

「ハイ、お爺様!」

「おぉ、誠に嬉しいのう!」


 何だよ、これは?

 2人共すでにアイシャにデレデレじゃないか。

 全くの取り越し苦労じゃないか。


「羨ましい限りだのうバニング伯爵!」

「これは済みませぬ陛下!」

「アイシャは私の・・・」


 陛下が何故かムスっとした顔でお爺様に言う。

 陛下は先ほどからどうも様子が変だなぁ。

 実は陛下もアイシャにデレなのか?

 アイシャは年寄り殺しなのかもしれないな。


「オッホン!では挨拶も済んだようですし、バニング家継承の件に移って宜しいですか?」

「うむ!」

「宜しくお願い致します宰相閣下!」


 宰相が空気を読んで陛下とお爺様の間に割り込む。

 流石、宰相となれば空気を読める人なんですね。

 尊敬致します。


「英雄殿!この度は陛下の独断でバニング家継承の話を決められてしまって災難で御座いましたの」

「何が災難だ馬鹿者!」

「そうですぞ宰相閣下!バニング家としてはこの上ないお話」

「2人共だまらっしゃい!

 本来であるならば、きちんと手続きを行ってから発表するものを、その場で勝手にお決めになさって、しかも本人の意思を確認する事もなくお決めになさるとは何たる事ですか。

 陛下やバニング伯爵にとってはこの上ない話かもしれませんが、英雄殿にとってはいきなり湧いて振って来た様な話で御座います。

 勝手にお決めになられては災難としか言うしかないで御座いましょう」


 キャー、宰相様素敵~!

 もっと言ってやって下さい。


「じゃがしかし・・・」

「宰相閣下の言う通りで御座いますよ父上!

 それにバニング伯爵もだ。

 ようやく血の繋がった孫が見つかり、それが英雄殿であった事は誠喜ばしき事ではあるが、話を急ぎすぎだ。

 英雄殿の身にもなってみて下さい」

「た・確かに王太子殿下の言う通りで・・・」


 うわぁ~、王太子殿下もカッコいい。

 陛下より王様らしいじゃないですか。


「では、ここで改めて問うと致しましょう。

 英雄殿、其方はバニング伯爵の血を受け継ぐ孫だと云う事が先ほど判明した。

 バニング伯爵は、其方を次期バニング伯爵と望んでいられる。

 勿論、陛下もである。

 本来、陛下の命は絶対ではあるは、それは一旦横に置いておいて、其方の本当の気持ちを聞きたい」


 陛下の命って横に置いておいて良いものなのか?

 陛下の扱いって・・・


「英雄ルークよ、其方はバニング家継承を受ける意思はあるか?」


 ファイナルアンサー!

 宰相閣下の目はそう俺に告げていた・・・


次回『第178話:質問』をお楽しみに~^^ノ

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