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リアース戦記 ~鉄壁のルーク~  作者: ナナすけ
聖龍継承の章
172/187

第167話:天下一精霊武術大会9 雑草魂

 リアース歴3238年 大母神テーラ感謝祭4日目 14時10分。

 ザーン闘技場 第2試合会場にて・・・


 一呼吸入れた事により、仕切り直しとなった。

 さぁ、第2ラウンドの開始だ。

 今度はお互いに少し距離を取る。

 距離を取った事により、左手に持っていた武器を脇差からミニボーガンに代える。

 中・長距離からだと、居合系の技よりもミニボーガンの方が使い勝手が良いからね。

 取りあえず、得意である守りを主にして戦うとするか。

 鉄人君には俺の傍に来て貰い、盾役をお願いする。

 しばらくはこれで様子を見ながら作戦を考える時間が欲しい。

 正直言ってデュックさんを相手に正面からぶつかり合うのはキツイ。

 相手の土俵の上で勝負する事はない。

 我慢強く俺らしく戦おう。



 10分ほど離れた場所からの戦いが続いた。

 デュックさんの中・長距離から仕掛けて来る攻撃は、火の精霊術では一般的にメジャーである火の玉の術。

 風の精霊術で一般的にメジャーなかまいたちの術。

 そして序盤で見せた牽制に近い突風の術。

 後は、独自で考えたであろう火と風の精霊術を組み合わせた高火力である火炎放射の様な術。

 今のところ、この4つの術で俺に仕掛けて来ている。

 直線的な術である火の玉、火炎放射、突風は鉄人君が居てくれているお陰で難なく防いでくれるんだけど、厄介なのはかまいたちの術である。

 かまいたちはブーメランの様に軌道を変えて攻撃して来るため、鉄人君をかわしてから俺に襲い掛かって来るのだ。

 こうなってしまったら、俺は軌道を読んで回避するか、もしくはウォールの術で防ぐしかない。

 お陰様でジックリと考える時間を与えて貰えないのだ。


 守りを主にした戦い方と言っても、ただ黙ってやられているだけの俺ではない。

 嫌がらせのためにビートやストーンエッジの術を行使して、石の弾丸によるミニボーガンの攻撃も仕掛けている。

 しかし、こちらの攻撃は今のところウィンドバリアーなどで防がれている。

 流石、攻撃も防御も隙が無い。

 ん~、このままではもしかしてジリ貧か?

 何か突破口がないもんかなぁ・・・


『主よ、このままでは埒が明かんぞい!』

(わ・分かっている!)

『ワシが見る限りじゃと、相手の男は主よりも術が多彩で魔力が多い。

 武器による攻撃はどっこいどっこいだとしても、どう見ても奴の方が1枚上手じゃな』

(うっ、そ・そんな事は言われなくて分かっている・・・)

『まともに戦っても勝ち目が薄いなら、主が1番得意とする戦い方で当たってみたらどうじゃ?』

(俺が1番得意な戦い方?今やっている事が俺らしい戦い方じゃないか?)

『全然違うぞい。ワシとの戦いを思い出せ。

 主の1番得意な戦い方はただ黙って守りに徹する事ではなく、罠を使ったりして回りくど~い嫌らし~い戦い方じゃ』

(うっ、何だか棘のある言い方だなぁ)

『それは気のせいだわい。

 今相手にしている奴は騎士なのであろう?

 騎士であるならば特にそう云うのを嫌っているんじゃないのか?

 主の得意な戦い方で引っ掻き回してやれば、そこから勝機を得る事も可能なはずじゃ』

(罠を使った回りくどい嫌らしい作戦・・・騎士ならば特に嫌いか・・・・)


 確かにデュックさんは生粋の騎士だ。

 騎士の家柄の貴族で、しかも英雄の子だ。

 エリート中のエリートである。

 1回戦2回戦、そして今の戦いでも堂々した騎士らしい戦い方をしている。

 騎士団で鍛えられているからこそ、イスカルの様に騎士道精神たるものに多少は拘りがある様に見受けられる。

 騎士道に反する姑息で卑怯極まりない手か・・・

 なるほど、言われてみればそうだな。

 それが1番俺らしい得意な戦い方だな。

 さてと、そうと決まればどうするか?

 デュックさんに麻痺や毒の罠系はダメだ。

 聖の術を持つデュックさんには効果がないと言って良い。

 他の罠で何か・・・


 あっ!


 俺はある事を思い出す。

 首都ザーンに来る途中に試行錯誤して完成させたあれを。

 あれを上手く使えば勝機があるかもしれないな。


(あれを使って、エリートのボンボンをギャフン言わせてやるか。

 フハハハハっ、平民の雑草魂の力を見せてやる!)

『主よ、あれとは何なのだ?』

(シーラの市で見つけたあれさ。ここに来る途中でいろいろ試しただろ)

『おぉ、あれの事か!しかし、あれは一角ウサギとかに使う罠であろう?

 大丈夫なのか?』

(使い方次第で、たぶん何とかなるかもしれない)

『ふむ、確かにあれを使った罠で攻撃を仕掛けられたら、騎士としては溜まったもんじゃないだろうのう。

 だが、これで観客席の女性陣は完全に敵に回るのう!』

(うっ!)


 言われてみればその通りだ。

 あれを使えば卑怯とか言われて非難させるだろうなぁ。

 しかし、この試合は何としても勝ちたい。

 勝って、イケメンやイケメンを応援する奴らをギャフンと言わせたい。

 これは決してモテない男の僻みではないのだ。

 決して!


 作戦は決まった。

 そうと決まれば第3ラウンドの開始じゃい。


「新しき従者よ出でよ!『ゴーレム!』」


 俺は鉄人君2号3号を生成する。

 突風にも飛ばされない様に重たさを意識した最重量級の関取鉄人君だ。

 ただ心配なのは身体が丸っこいと云う事。

 以前、転がされた過去があるのでそれだけが不安だ・・・


(鉄人君、風で飛ばされない様に3体でデュックさんを包囲してくれ!)

『了解した!』


 ドスコイドスコイと腰を落としてすり足でデュックさんに向かって行く3体。

 これなら突風でも飛ばされないで済むかな・・・たぶん。

 案の定、突風の術を行使て対抗して来たデュックさん。

 しかし、鉄人君達は何とか耐えて突進を再開。


(よし、良いぞ!)


 突風が吹き抜けた後、俺はミニボーガンの弾丸をデュックさん目掛けて撃ち込んだ。

 デュックさんは近付く鉄人君達には突風の術や波動拳もどきで対応し、俺からのミニボーガンによる攻撃にはウィンドバリアで対応したりと、対応に追われてスッカリと守勢に回ってしまった。


(このまま続けてデュックさんの余裕を無くしてやる)


 すり足でジワジワと近付いていた鉄人君達が、いよいよデュックさんに捕り付いた。


(よし、今があれを使う時だ!)


 俺はゾアスパイダーの糸を仕込んだ特殊弾を取り出す。

 この特殊弾は着弾した事により弾の中の糸が広がり、トリモチの様な効果を発生させる。

 これを使ってデュックさんを絡め捕ってやろうではないか。

 俺はありったけのトリモチ弾を放つ。

 デュックさんは、先ほどと同じ様にウィンドバリアを展開する。

 だが、トリモチ弾はデュックさんは疎かウィンドバリアにも着弾しない。

 デュックさんはあれ?っとした顔をする。

 俺が放った弾丸は、デュックさんにではなく、デュックさんを囲んでいた鉄人君達の大盾に着弾していたのだ。

 大盾は白いトリモチでベットリとしている。


(大盾を構えながら3体でデュックさんに突進!)

『了解した!』


 3つの大盾がデュックさんに迫る。


「はどう~けん!」


 デュックさんは迫り来る3つの大盾の1つに波動拳もどきを撃ち込み、突進の勢いが止まった所から逃れようとした。

 しかし、足が急に止まる。


「チっ、やられた!」


 デュックさんから舌打ちが聞こえた。

 デュックさんの足の裏にトリモチがくっ付いていた。

 俺は大盾だけでなくデュックさんの足回り部分にもトリモチ弾を撃ち込んでいたのだ。


「ならば!」


 足を封じられたデュックさんは迫り来る大盾にレイピアで対抗した。

 ミスリル製のレイピアは迫り来る大盾を破壊して行く。

 これも俺の中では想定済みだった。


「クっ!」


 デュックさんから悲鳴に近い声が上がる。

 破壊された大盾はバラバラになりながらもデュックさんの腕・脚・体に纏わり着いた。

 これでュックさんの動きは半減したはずだ。

 鉄人君3体は大盾を失っても引き続きデュックさんに攻撃を仕掛ける。

 土で出来た2号と3号はミスリル製のレイピアの前にアッサリと倒されてしまったが、俺にはチート級の1号君がいる。

 ミスリル製のレイピアと鉄人君のパンチがブツかる。


キン!


 少し甲高い音が響いた。


「なにっ!」


 鉄人君の右拳が一部欠けていた。

 そして、ミスリル製のレイピアの先も折れていた。


「これで勝負は見えたかな?」


 ふ~、何とか思い通りに上手く行って良かった良かった。

 俺は二刀流に持ち替えて、ゆっくりとデュックさんの所に歩いて行く。

 デュックさんはの前に1号君が仁王立ちしており、攻撃があればすぐさま反撃出来る体勢を取っている。


「卑怯な・・・」


 オ~ッホッホッホ!やはりそのセリフが出て来ましたか。

 最高の褒め言葉ですな。


「デュック様、そんな甘い事を言っているから負けるんですよ」

「何っ!?」

「これが試合でなく決闘であれば彼方は死んでいます。

 良かったですね、これが試合で!」


 ちょっと嫌味ったらしく言ってやった。


「クっ!」

「彼方はたぶん今までに死線をくぐり抜けて来た経験なんてないのでしょうね?

 だからそんな甘っちょろい事なんていっていられるんだ。

 本来であれば彼方の実力は私なんかよりずっと上だ。

 だけど、彼方からは怖さを感じない」

「怖さを感じない?」

「えぇ、死線をくぐり抜けて来た者には何処かしら凄みと云うか怖さを感じるものです。

 残念ながら、彼方からはまだそれを感じられません」

「・・・」

「私の戦い方を認めろとは言いませんよ。

 正々堂々だろうが姑息で卑怯だろうが、そんな事を言っている暇があったら、死を覚悟するような戦いを1つでも経験しなさい。

 この敗戦を糧にして下さい。

 その甘さと云う殻を破らないと、彼方は永遠に卵のままですよ。

 ただ、その殻を破る事が出来たら、真の英雄と成れる方だ。

 私では到底勝てなくなるでしょうね」


 俺はここで右手を差し出す。

 握手を求めたのだ。


「英雄殿!」


 デュックさんが右手を出し、強く握り返して来た。

 こうして、俺の3回戦は終わったのであった・・・


(あぁ~、もうこの人とはやりたくねぇ~)


次回『第168話:じゃじゃ馬娘』をお楽しみに~^^ノ

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