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リアース戦記 ~鉄壁のルーク~  作者: ナナすけ
聖龍継承の章
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第165話:天下一精霊武術大会7 胸を張って

 リアース歴3238年 大母神テーラ感謝祭4日目 11時45分。

 ザーン闘技場 第2試合会場にて・・・


 ミニボーガンの弾丸が発射する。


「氷の障壁にて我らを守り給え!『アイスバリアー!』」


 弾丸が氷の盾に阻まれる。

 続いて槍の連続突きが迫って来た。


「出でよ壁!『ウォール!』」


 槍の先が土の壁に阻まれる。


「大地を砂に!『ピート!』」

「大地を氷に!『スリップ!』」

「地面から刃を!『ストーンエッジ!』」

「地面から氷を!『アイスエッジ!』」


 俺とレミオンは攻守をチェンジしながら、自分達の技・術を繰り出しあう。

 俺の戦い方を真似たと言っていただけあって俺とソックリな戦い方だ。

 戦い方が同じだけあってお互いに突破口が無く、試合が長引きそうな感じだ。

 チラっと横目で見ると、鉄人君3体対氷のゴーレム2体のど付き合いもまだ続いている。

 あっちの勝負もまだまだ時間が掛かりそうな感じだ。


(ん~、何か突破口がないかなぁ?)

『今のところ互角の勝負でございますからのう』

(俺って攻撃的センスが乏しいからなぁ、何か良い策はないか鉄人君?)

『主とレミオン殿の違いと言えば、武器での攻撃の間合いで御座いますかのう。

 そこから何か攻め方を変えると云うのはどうで御座いますかのう?』


 武器の間合いか。

 俺はミニボーガンと刀があるから、近中遠と取りあえず何でも行ける。

 レミオンは槍による中距離の間合い・・・そうか、槍か!

 槍はリーチが長い分、近距離は苦手かもな。

 懐に飛び込んでしまえば何とかなるかもしれないな。

 嫌々、あの頭の良いレミオンの事だ。

 近距離攻撃に対する策をすでに何かしてあると考えた方が良いかも。

 あぁ~どうしたら良いんだ俺は!


『何もせずに受け身でいると云うのも一つの手かもしれないのう。

 主は聖の術も使えるから体力回復も出来て、持久戦は得意であろう?』

(確かにそうだけどさぁ・・・)

『受け身が嫌であるならば、先ほど考えていた通りに懐に飛び込んでみるしかないのではないか?』

(そうだな!何時までもグダグダと考えて居ても仕方がないな。

 まずは懐に飛び込んでみて、それからだな)

『うむ!』


 そうと決まれば、どうやって懐に飛び込むか・・・


 俺はミニボーガンの弾丸が発射する。


「氷の障壁にて我らを守り給え!『アイスバリアー!』」


 弾丸が氷の盾に阻まれる。

 続いて槍の連続突きが迫って来た。


「出でよ壁!『ウォール!』」


 槍の先が土の壁に阻まれる。

 ここまでは先ほどまでと同じで何回も繰り返した通りだ。

 だが、今回のウォールは今までのウォールとは違っていた。

 土壁に階段が付いていた。

 レミオンの方からはただの土壁にしか見えないが。

 俺はミニボーガンを腰のホルダーにしまいつつ、階段を駆け上がりながら術を詠唱する。


「大地を砂に!『ピート!』」


 レミオンの意識は一瞬地面の方に向く。

 レミオンはバックステップしながら術を詠唱する。


「大地を氷に!『スリップ!』」


 レミオンは先ほどまで俺が居た場所にスリップの術をやり返したつもりであろう。

 だが俺はすでに2mの土壁を飛び越えジャンプしていた。

 太刀を両手で持ち、大きく上へ振り上げながら。


「なっ!」


 バックステップした事により視界が広がったのか、もしくは俺のジャンプした影に気付いたのかは分からないが、レミオンは一瞬の間をおいて俺がジャンプしているの気付く。


「遅い!」

「まだだ!」


 レミオンは慌てて長柄で防御する様に槍を横にして上空に突き出す。

 俺の体勢はすでに落下状態であり、身体の重みまで太刀に上乗せするかの様にして、太刀を思いきり振り下ろす。

 剣術で云う唐竹さ。


スパっ!


 特に手に衝撃を受ける事なく、鉄で出来ている長束を一刀両断する。

 流石、ミスリル製の太刀は切れ味抜群である。

 振り下ろされた太刀はそのままの勢いでレミオンに襲い掛かろうとするが、あまりにも手ごたえがない状態で長束を両断してしまったために、勢いが良すぎて返って自分の体勢を崩してしまう。

 俺は体勢を崩したまま着地した。

 振り下ろした太刀の剣先はレミオンにかわされて地面に突き刺さっっている。

 懐には潜り込めたが、初手の攻撃はかわされたてしまった。


「チっ!」


 俺はつい舌打ちをしてしまう。

 レミオンは両断された槍の左手で持っていた後ろ部分を投げ捨てて、右手に持っていた槍の刃の付いた前部分で俺に突き攻撃をして来た。

 一瞬で攻守が切り替わる。


「なんの!」


 俺は地面に突き刺さった太刀の柄から即座に左手を離して脇差の柄に手を添える。


カキン!カキン!カキン!


 レミオンが三度突いて来た槍先を、しゃがんだ体勢で抜き放った脇差で払う様に受ける。


「チっ!」


 今度はレミオンが舌打ちをする番だ。

 俺はその三度の攻撃を受ける間に地面に刺さった太刀を右手一本で抜き取っていた。

 三度の攻撃をかわされたレミオンは、距離を取ろうとバックステップをする。


「逃がさんよ!」


 俺は距離を取られぬ様にすり足でレミオンに飛び込む。

 レミオンが後ろに下がりながらの槍の突き。


カキン!カキン!


 俺は前に出ながら槍の突きを脇差で二度かわす。

 そして、二度かわした後は右手に持った太刀で攻撃に転ずる。

 右腕を大きく開いて、レミオンの首目がけて右から左へ素早い横一閃。

 剣術で云う右薙ぎね。


カキーーーン!


 甲高い音が会場に響き渡る。

 俺の脇差の剣先がレミオンの喉元で止まっていた。

 怒涛の攻め合いが止まり、試合場も観客席も静まり返る。

 ふ~、やっと終わったぜよ。


 勝負の決め手となったのは、俺の太刀による力一杯の右薙ぎの攻撃を、レミオンが片手で持った槍で受けようとした事だ。

 俺はその槍を大きく弾き飛ばした。

 そして、大きく弾いた槍の隙を付いて連続で左の脇差で刺突をして決着をつけた訳だ。

 本来の槍の長さで両手でシッカリと防御していれば、槍は大きく弾かれる事は無く俺の連続攻撃も防がれていたであろう。

 槍が半分に折られた時点で勝負は決まっていたのかもしれないな・・・


「勝負ありだな!」


 俺はニヤリとする。


「あぁ、僕の負けだ!」


 レミオンもニヤリとする。


「どうやら向こうも決着が着いた様だな」


 横目でゴーレム達の方を見ると、鉄人君1号の右手と氷のゴーレムの左手が激突して止まっていた。

 氷のゴーレムの左が崩れ始め、崩れが左腕、全身へと回って行く。

 鉄人君の右手の拳部分もカモフラージュしてあった土の部分が剥がれ落ちてミスリル鉱石が一部むき出しになる。


「ルーク、あのゴーレムは?」

「あのゴーレムだけはミスリル製で出来た特別ゴーレムさ。皆には言うなよ!」


 俺はあレミオンの問いに声を小さくして答える。


「武器の勝負でも術の勝負でも負けたか!僕はまだまだだな・・・」


 レミオンが小さなため息をする。


「嫌、そんな事はないと思うぞ!

 俺の太刀やゴーレムがミスリル製じゃなかったら、立場が逆転していたかもしれないさ。

 技能や術の差なんて同じ様なもんだろ?」

「そう思うかい!」

「あぁ、勿論さ!だから胸を張って、俺の友、俺のライバルと言って良いと思うぜ」


 俺は右手を差し出す。


「そうか、有難う!」


 レミオンも右手を差し出し、俺とガッチリ握手をする。

 俺達の握手をする姿を見て会場から歓声が一気に上がり出し、俺達に惜しみない拍手が送られる。

 友と一緒に受ける拍手の渦は、心地よくて、誇らしくて、そして少し照れ臭い。

 レミオンもどうやら同じ様で照れた顔をしている。


「レミオン様、胸を張りなさい!彼方様はあの英雄ルーク様の友でライバルなのですよ」

「貴方もそうよ!英雄なら堂々と胸を張っていなさい」


 共に愛しい女性から叱咤される俺達。


「ニコルちゃんって、前からあんな恐妻風だったっけ?」

「そっちも随分と尻に敷かれているみたいじゃないか」

「「・・・プっ!」」


 二人してつい吹き出してしまった。

 俺とレミオンは歓声と拍手を浴びながらしばらく笑い合っていた・・・


次回『第166話:天下一精霊武術大会8 英雄対英雄の卵』をお楽しみに~^^ノ

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