第163話:天下一精霊武術大会5 友としてライバルとして
各会場とも1回戦が無事に終わった。
1回戦は特に波乱もなく、下馬評通りの結果となった。
勝ち上がった来た者は次の者達だ。
【本選トーナメント表】
神様の悪戯かこれが運命だったのかは分からないが、2回戦のルークの相手はレミオンに決まった。
友としてライバルとして、2人の戦いは今始まろうとしていた・・・
リアース歴3238年 大母神テーラ感謝祭4日目 11時半。
ザーン闘技場 第2試合会場にて・・・
まさかこんな大舞台でこいつと戦う事になるとはなぁ。
俺とレミオンは試合場の真ん中でお互いにニヤリと笑い合う。
お互いに同じ事でも考えていたかな?
「まさかレミオンと戦う事になるとはなぁ・・・」
「そうだね!私も君と戦えるだなんて思ってもいなかったよ・・・」
ん!?
今の微妙な言い方は俺と戦いたかったと受け取って良いのかな?
「その言い方だと、俺と戦える機会が訪れて嬉しいと言う事か?」
「そうだね!私は一度でも良いから真剣に君と戦いと思っていたんだよ」
「俺はお前とだけはやりたくないと思っていたんだがなぁ」
「それは友としてかい?」
「あぁ、勿論だ!お前は違うのか?」
「私は友だからこそ、ライバルだからこそ、君と戦いたいと思っていたよ」
ライバルだからこそか。
なるほどね。
「君と出会った時はお互いに新人冒険者の駆け出しだったけど、君はすでに英雄として名が知れ渡っていた。
その英雄とライバルと言われた時、僕は、嫌、私はとても誇らしかった。
そして、だからこそ君には負けたくないとも思っていたよ」
「俺もお前やケビンには負けたくないと思っていたぜ!」
「だけど、当時の君の実力は僕やケビンの力より遥かに上回っていた・・・」
「そ・そんな事はないと思うが?」
「嫌、そうだったんだよ!」
「レミオン・・・」
お前はそんな風に思っていたのか。
「あっ、これはひがみや妬みではないんだ。勘違いしないでくれ!」
「じゃあ、どう云う事だ?」
「男の意地・・・みたいなものかな。
友であるからこそ、ライバルであるからこそ、君と肩を並べて居たいじゃないか。
同等で居たいと思うじゃないか。そう云うもんだろ?」
そう云う事か!
やはりお前は俺にとって最高の友だ。
嬉しくて泣けて来るぜ。
「たぶん、当時のケビンも私と同じ気持ちだったと思う。
君の友であり続けるため、ライバルであり続けるために、私は君に追い着き追い越そうと日々必死になって鍛錬をして来たつもりだ。
だから、今日はそれを証明したいんだよ、君に勝ってね!」
言ってくれるぜ!
こうなったら意地でも負けられないな。
「分かった、手加減はしないから覚悟しろよ!」
「望む所さ!手加減なんかしたら絶交してやる」
「2人で最高の試合をしようぜ!ケビンがあの世で悔しがるくらいにさ」
「そうだね!悔しがらせてやろう。先に逝ってしまった事を後悔させるくらいにね・・・」
俺とレミオンはもう1度ニヤリと笑い合う。
さて、ケビンが化けて出て来るくらい素晴らしい試合をしてやるか。
俺とレミオンは試合を開始すべく、お互いに距離を取った。
「貴方~、頑張って~!」
「父上~、頑張れ~~~!」
「キュキュキュ~!」
愛しい妻と息子よ、そして我が相棒よ、任せておけ。
「ルーク、悔いの内容にしっかりとでござるよ!」
師匠、有難う御座います。
任せて置いてください。
「主様~、適当に頑張れ~。モグモグモグっ、おぉ、これは美味いですね!」
「良かったぁ~!貴女のために買って来たんですよ」
俺の試合より食い物や色恋の方が大事ってか。
リンにマシューよ、後でお仕置きしてやるからな。
「兄さ~~~ん、愛してる~~~!」
投げキッスまでしやがって。
他人の振り他人の振り。
「レミオン様~、愛してるわ~、頑張って~!」
おっ、ニコルちゃんの声だ。
愛してるだなんて大胆になったねぇ。
ヒュ~ヒュ~だよ~!
「レミオン様もルーク殿も力の限り頑張れ~!」
センバさん、何時もは口数が少ないのにこんなにいっぱい喋ってくれて有難う。
「レミオン様~、ルークの奴をぶちのめせ~!キャハハハ~~~」
死刑決定!ベレットの奴め、後でぶちのめす。
「「「鉄壁殿~、レミオン殿~、どっちも頑張れ~!」」」
ズラビス、フィンさん、ノインさん、有難うね。
そう言えば、ダリアの声が聞こえないぞ?
どうせアイツは酒場か・・・
皆、応援有難うな。
応援をしてくれる人のために頑張らなくちゃ。
ヨ~シ!気合を入れて・・・
「レミオン様~、イスカル様の代わりにそいつをやっつけて~!」
へ!?
それは何の応援です?
「「「そうよそうよ!そんな腐れ英雄やっつけて~」」」
も・もしかして、イスカルの応援をしていた奴らか?
腐れ英雄って、俺ってそこまで目の仇にされているのか・・・
ブルブルブルっ!
俺は背中に冷たいものを感じた。
『どうやら、この闘技場の女性を敵に回してしまったの様でございますな主よ』
(はうぅ~!)
『南無っ!』
(煩いやい!)
俺は心に新たな傷を負って戦おうとしていたのであった・・・
次回『第164話:天下一精霊武術大会6 氷のゴーレム』をお楽しみに~^^ノ