第158話:天下一精霊武術大会1 開会式
いよいよ天下一精霊武術大会編へ突入^^
リの国で開かれる4年に一度の天下一精霊武術大会。
この大会に参加すべく、リアース大陸の各地から強者が集まって来る。
ある者は名誉のために。
ある者は己の強さを試すために。
ある者は出世のために。
ある者は金のために。
この大会の歴史は古く、100年以上前から行われている。
大会当初は、リの国の貴族達による日頃の鍛錬の成果を披露し、家名の誇示を目的とするものであったが、何時の頃からか平民も参加出来る様になり、回が進むに連れて規模も大きく成って行き、純粋に誰が1番強いかを決める大会へと変わってしまった。
だが、昔の名残も残っており、貴族達は家名誇示のために家々の代表者を1名ずつ参加させていた。
貴族本人が参加する家もおれば、強者を金で雇って参加させる家もあるのだが・・・
最近の参加者は毎回1000名以上を越え、本選のトーナメントに参加出来る者は、予選ブロックを勝ち上がった者達と国からの推薦・招待された者達である。
推薦枠で予選なしに本選トーナメントに参加出来る者達は、王都騎士団から1名。聖龍騎士団から1名。氷虎騎士団から1名。朱雀騎士団から1名。玄武騎士団から1名。
招待枠からは、今大会ではルークとミの国の第2王子、クの国の傭兵団代表から1名の計3名である。
予選ブロックは、大母神テーラ感謝祭の1~3日目で行われ、4日目から本選トーナメントが始まり、最終日の5日目が準決勝と決勝となっている。
さぁ、いよいよ強者達の宴が始まる。
強者達よ、己の力を余す事無く思う存分発揮して、我々にその力を見せつけてくれ!
我々は強者を称え、その力に酔い痴れるであろう。
天下一精霊武術大会、いざ開幕!
リアース歴3238年 大母神テーラ感謝祭1日 10時
ザーン闘技場にて・・・
「これより、第62回天下一精霊武術大会を開催する!」
「「「「わぁ~~~!」」」」
ヘルベート・リ・ザーン国王が、ザーン闘技場の真ん中で高らかに大会宣言を発した。
ザーン闘技場は、古代ローマのコロッセオに似た建物で、東京ドームのくらいの大きさがあり、ザーン城から見て南西の市民街に建てられている。
国王の大きな声は観客席にまで轟き、大会宣言の後に観客席から歓声が一気に上がった。
「凄い歓声だな!」
「主様、私はこの大勢の人に酔いそうですぅ~」
「父様母様、僕、怖いよ~」
「キュキュキュ~!」
(僕は耳が痛い!)
「バーン、こっちへいらっしゃい!母様がギュっとしてあげるわ。
だったら怖くないでしょ?」
「うん!」
「キュキュ~!」
(僕も~!)
「お前はこっちだ!」
俺はアイシャの胸に跳びつこうとしたイナリの頭を右手で鷲掴みにする。
「キュ!?」
(へ!?)
俺はニヤリと笑い、俺の懐でイナリを思いきりギュ~~~と力一杯これでもかという程抱きしめる。
「相棒の俺が抱きしめてやるんだから嬉しいだろ?
まさか嫌な訳ないよな?イ・ナ・リ!」
「キュ~、キュキュキュ~~~!」
(ウギャ~!嫌だ、離せ~~~!)
「そうかそうか、嬉しいか!ウケケケケ~」
白目を向いてダウンするイナリ。
どさくさに紛れてアイシャの胸を堪能しようとした君が悪いのだよイナリ君。
説明が遅れましたが、俺達は今、観客席にいる。
ご老公様のお陰でエターナの貴族席から観覧させて頂いております。
貴族席も一般市民席もすでに空きは無く、一般市民席側では立ち見客でギュウギュウ積めのカオス状態となっています。
もし一般席で見ていたらと思うとゾっとしてしまいます。
娯楽なんて少ない世界だから、こう云ったイベントには特に人が集まるんでしょうねぇ。
「これからすぐに予選が始まる様ですね。
レミオン様やフォッカー殿は何処にいるのですかねぇ?」
双眼鏡を覗き込みながらズラビスが俺達に話しかけて来る。
ズラビス達が作った双眼鏡は貴族達の間に徐々に広まって来ています。
この貴族席でも数人が双眼鏡を持って観覧しています。
ロダン商会の商売は上々の様です。
ザーン闘技場の中には、直系40mの円の形をした闘技場が8カ所設置されており、これから3日間掛けて予選が行われる。
レミオンはエドナ家の代表として、フォッカーさんもエターナ子爵に雇われてエターナ家代表として予選に参加している。
ちなみに俺は招待枠参加なので、本選4日目からである。
「あっ、あの頭一つデカイのがフォッカー殿でござるよきっと。
あの背負っている大剣が目印になるでござる」
流石、師匠。
爺のくせに目が良いのですね。
相変わらず化け物じみていらっしゃる。
「レミオン様は見当たりませんっすね!」
「・・・・」
「何処かしらねぇ!」
レミオン主従とニコルちゃんはマイペースだね。
「あぁ、確かにあのデカい人がフォッカー殿で間違いない様ですね。
おや?フォッカー殿は何やら鼻の下が伸びてだらしない顔をしていますなぁ・・・」
「ハァー!どうせ、女の尻でも見てに妬けているんですよ。
女っ垂らしで困るぜ全く。その点、俺はリンさん一筋ですからね!」
呆れ顔でズラビスの問い答えるマシュー。
フォッカーさんをダシにしてリンにせまるなよ。
お前もフォッカーさんとあまり変わらないぞ。
似た者師弟じゃねぇか全く。
「そうですか!残念ながら私はクロード様一筋なので諦めて下さい」
「そ・そんなぁ~!」
ウケケケケ!
一刀両断とはこの事だね。
哀れマシュー、南無!
「リン殿、私もルタの村のミア殿一筋なので諦めて欲しいでござるよ・・・」
「えっ!それは本当で御座いますかクロード様!?」
え!?ミアさんにそこまで本気だったの師匠?
それは知らなかったわぁ~。
「一応、こっちのバカ弟子を一人前にし終えたら結婚してくれる約束なのでござるよ。
だから、ジークよ!拙者のためにも早く一人前になってくれでござる」
あぁ~、それはしばらく無理かも。
だってあのジークだよ。
ジークがそこまで修行熱心になる訳ないじゃないか・・・
「わ・わわわわ・私の乙女心を弄んだのですねクロード様!」
乙女心だと!?
ほう~、リンに乙女心があったとは驚きだ。
食欲大魔王のセリフとはとても思えませんな。
「ク・クククク・クロード様!やはり彼方は妹を・・・」
「いや、拙者はそんな事は・・・」
「フィン様、どうか落ち着いて!」
「リンさん、でしたら私が貴女の乙女心を癒してみせます」
「結構です!」
「そんなぁ~!」
「貴様はどさくさに紛れて妹を口説くなぁ~!」
「フィン様、ドウドウドウ!」
あぁ~、騒がして何が何だか分からなくなって来た~。
「あぁ~、もういい加減にして下さい。煩くて迷惑です!
折角、兄さんの後ろから兄さんの匂いを堪能していたのに・・・」
俺の背後に居たジークが怒って皆を睨む。
「「「「「黙れ変人!」」」」」
こんな事をやっている間にいつの間にかレミオンの第1戦目は終わっていた。
「クスン!誰も私の戦いを見ていなかったのね」
レミオンが一人いじけていたのは言うまでもない・・・
次回『第159話:天下一精霊武術大会2 組み合わせ』をお楽しみに~^^