第157話:懐かしき人達3
リアース歴3237年 12の月29日15時
首都ザーンのエターナのご老公の別宅邸の庭にて・・・
ズラビス、フィンさん、ノインさんが訪ねて来てくれて、庭でギャーギャーと騒いでいる所にご老公様のメイドさんが声を掛けて来た。
「あの~、お取込み中申し訳御座いませんが、英雄様に又お客様がいらっしゃったのですが?」
「又、お客様?」
「ハイ、そうなんですぅ~!」
「ん~、誰だろう?」
「エドナ子爵家のレミオン様とおっしゃっておられます!」
レミオンだって!
「アイシャ!」
「貴方!」
俺とアイシャは頷き合う。
「お客様の所へ行って来る!ズラビス、フィンさん、済まないが離してくれ」
俺はズラビスとフィンさんに未だ押さえられていたままだったのだ。
「「あ・あぁ!」」
「リンちゃん、申し訳ないけどこの子をお願いします!」
「ハ・ハイ、奥様!」
「母様?」
「父様と母様に特別なお客様がいらっしゃったの!すぐ戻るから良い子に待っていてね」
「うん、分かった!」
俺とアイシャは走る様に玄関まで急ぐ。
すると、そこには懐かしい顔ぶれが並んでいた。
「レミオン、ニコル、センバさん、ベレット!」
「レミオン君、ニコル、センバさん、ベレットさん!」
「ルーク、アイシャ!」
「ルーク様、お姉様!」
「ルーク殿、アイシャ殿!」
「この間振り、ルーク、アイシャ!」
皆が一斉に声を上げて駆け寄る。
俺は右手を出してレミオンの右手とガッシリ握手をする。
見ない間に随分男らしい顔つきに成ったじゃないか!
続いてセンバさんと握手を交わし、ベレットとは俺の右手の拳とベレットの左手の拳をぶつけ合う。
二人は全然変わらないや。
アイシャとニコルは抱き合ってすでに大泣き状態だ。
ニコルは綺麗な服を着ているせいか、大分大人びて見える。
胸は相変わらずちっぱいだけど・・・
「皆、元気そうだな!」
「そっちもね!」
「ベレットからいろいろと聞いたぞ!次期当主でニコルと婚約したんだってな。
おめでとう!」
「有難う!君も貴族になるそうじゃないか。おめでとう!」
「有難う!でも、俺はあまり嬉しくないけどな」
「アハハハハっ、君らしいな!
第6次ルザク戦役や竜退治の噂などいろいろと聞いたけど、相変わらずの大変そうだな。
でも、友として嬉しく思うよ!」
「本当に飛んでもなく大変だったんだぜぇ~。英雄何てもうゴメンだよ全く」
「「「「「アハハハハっ!」」」」」
あぁ~、この感じだ!
変に気を使う事なく遠慮もしなくて良いこの対等に付き合える感じが俺はとても好きなんだ。
作り笑顔や笑いじゃなく、心の底から笑い合える奴ら。
今は、英雄だの鉄壁だのって俺を持ち上げる奴ばかりだ。
こいつ等や家族、ジークやマシュー以外に俺と対等で接してくれる人はほぼいないんだよ。
ズラビスやフィンさんも友ではあるけど、それでも何処か英雄扱いがあって、全くの対等と云う訳ではないのだ。
そんな中でこいつ等だけは本当に俺と対等に接してくれる特別な奴らなんだ。
俺はそれがとても嬉しいんだ!
「父様、母様~!」
柱の影から顔だけチョコンと出して、こちらを羨ましそうに見つめるバーン。
「スイマセン主様、奥様。バーンちゃんがどうしても行くって・・・」
リンが柱の影から姿を現し、申し訳なさそうに謝罪をする。
「リンが謝る事じゃないさ!」
「そうよ!さぁ、こっちへいらっしゃいバーン!」
「父様~母様~!」
バーンが嬉しそうに駆け寄って来てアイシャに抱き着く。
「ルーク、あの子は?」
「俺とアイシャの大事な子供さ!」
「養い子?」
「あぁ、そうだ。竜退治の時に親を亡くして孤児になってさ。
境遇があまりにも俺と似ているもんだから放って置けなくてね」
「そっか・・・君もアイシャも相変わらず優しいんだな」
アイシャに抱き着くバーンを見て、皆がほっこりとなる。
「ついでに言うと、アイシャのお腹の中にも子がいる」
「へぇ~、それはお目出度いじゃないか!」
「お姉様おめでとう!」
「ルーク殿、アイシャ殿おめでとう!」
「ルーク、アイシャおめでとう!」
「「皆、有難う!」」
皆から祝福の声が上がる。
先ほどから、おめでとうや有難うばかりだな。
「クククククっ!」
「ん!どうしたレミオン?」
「君が2児の父親になったんだと思うと何か可笑しくてさ」
「キャハハハっ、確かにそうっすね!」
「オイオイ、レミオンもベレットもあんまりじゃないか~。センバさん何とか言ってやってよ~」
「・・・プっ、スマン!」
「えぇ~、センバさんまで笑うのかよ~。皆、酷いよ~」
「「「「「アハハハハハっ!」」」」」
その後、ご老公様達も交えて夕食となった。
アイシャの指示の下、皆でアイシャ自慢のカレーライスを大量に作り、それを食べながら和気あいあいと楽しい時間を過ごす。
カレーライスはお代わりが続出するほどの大好評となり、案の定、残りのカレーの争奪戦となったのは言うまでもない。
腹が満たされた後は、大宴会となった。
ご老公様が飲む様な高い酒ではなく、一般市民が飲む様な安酒を大量に買い込んで来て、酒屋風の感じで皆で飲む。
つまみはベレットが修行の成果を見せると言って張り切って作った。
味はまずまずだったと言っておこう。
ニコルちゃんがケビンの馬鹿なエピソードを披露したりして笑いを誘い、宴会はしんみりとしたものではなく、笑いの絶えない宴会となる。
「ルーク達はしばらく首都で暮らすんだって?」
隣りに座っていたレミオンが聞いて来た。
「アイシャの出産が控えているからね。それにその後も子育てがあるからさ」
「そっか。そうしたら、しばらくの間はこうやって顔を合わせられるね」
「レミオンも首都暮らしなのか?」
「次期当主となると、他の貴族達との顔合わせやら何やらとあってさ。
この間からは騎士学校にも通っているしね」
「貴族様はいろいろと大変だなぁ」
「君だって、その貴族の仲間入りするんじゃないか」
「俺はほとんど名前だけの貴族だよ。面倒臭い事は全てご老公任せだし」
「羨ましいなぁ!」
「ハハハハっ、!」
「ケビンも一緒だったら良かったのにね・・・」
「そうだな・・・」
俺はケビンの顔を思い出す。
ライバルであり親友であったケビン。
賑やかな事が大好きで酒好きの女好き。
「さぁ、今日はケビンの分も飲もうぜ!」
「そうだね、ケビンの分も一緒にね!」
泣き笑いの様な顔になる俺とレミオン。
俺達はケビンの事を思い出しながら夜中まで語り合った・・・
次回『第158話:天下一精霊武術大会1 開会式』をお楽しみに~^^ノ