第155話:懐かしき人達2
リアース歴3237年 12の月29日 14時過ぎ。
首都ザーンのエターナのご老公の別宅邸にて・・・
「鉄壁殿、聖女殿、お元気そうで!」
「ズラビスも元気そうだな!」
「ズラビスさん、お久し振りですね!」
ご老公様の所のメイドさんが、俺に客が来たと云うので玄関までやって来ると、元気そうなズラビスが立っていた。
「ズラビス殿!荷物運び手伝って下さいよ!」
「そうですよズラビスさん!」
俺達夫婦とズラビスが挨拶を交わしていると、一遅れでフィンさんとノインさんが大きな荷物を抱えながら玄関に入って来た。
「「フィンさん、ノインさん!」」
「おぉ、鉄壁殿!久し振りだ」
「聖女様もお久振りで御座いますね!」
「2人も元気そうだね!」
「「ハイ!」」
フィンさんもノインさんもすっかり人族の暮らしに慣れた様だね。
ルザクではオドオドした感じがあったけど、今では全くそんな感じがしないもんね。
「ズラビスさん、私の様なか弱い女性に持たせて自分は手ぶらだなんて酷いですよ!」
「ありゃ、これは申し訳ない!でも私は非力でして・・・」
ノインさん、自分で何をおっしゃいますやら。
引き締まった身体に、筋肉が付いたその二の腕・・・か弱いだなんて冗談を言っちゃいけないよ。
それにしてもズラビスは相変わらず非力なのね。
首の下からは無用とはよく言ったもんだ・・・
「鉄壁殿、頼まれていたゴーハンを沢山持って来ましたぞ!」
「おぉ、それはとても助かるぜ。
2カ月ほど前に全部食べちゃったから、ゴーハンに飢えていたんだよ」
「貴方、今晩にでも厨房を借りてカレーライスでも作る?」
「おぉ、それ良いねぇ!」
やったー!
久しぶりに米が食えるぜ。
今晩はリンとバーンと俺でカレーの争奪戦が始まりそうだな。
「聖女殿のカレーライスで御座いますか!私もご相伴に預かって宜しいですかね?」
「えぇ、勿論よズラビスさん!」
「それは嬉しいですなぁ」
「聖女殿、私やノインも宜しいか?」
「勿論じゃないですか!お2人とも何を遠慮しているのんですか」
「良かったなノイン!」
「えぇ、アイシャ様のカレーライスは特別美味しいですからね」
アイシャのカレーライスは皆に愛されているねぇ。
何だか俺まで嬉しくなって来るよ。
愛子のお母さん!
貴女のカレーライスは異世界でも大好評ですよ。
愛子は貴女の味をしっかりと受け継いでいます。
「鉄壁殿、今回のゴーハンの分はミスリル鉱石の儲けからしっかりと引かせて頂きましたからね」
「えぇ、そりゃないぜズラビス!守銭奴なんだからもう~」
「あ・彼方がそれを言いますか!
ルーラからの取り寄せ、首都への運搬と経費が飛んでもないんですよ。
いくら友でも、こればかりはしっかりとお代を頂きますよ」
「マジかよ~!友情割引は?」
「ないです!」
「ケチ!」
「商人にとっては最高の褒め言葉ですな!」
流石はズラビスだな。
素晴らしい商人魂っす。
「鉄壁殿!そう言えば、妹は何処です?折角、兄が顔を見せに来たのに」
「リンは今、庭に居まして・・・」
「庭?何かの鍛錬ですか?」
「ん~~~、ちょっと違うかな~。まぁ、直に見て下さい・・・」
俺達は一先ず玄関から応接間に向かい、応接間でこの館の主人であるエターナのご老公様とズラビス達を引き合わせる。
軽い挨拶が終わると、応接間から広い庭へと場所を移す。
そこではバーンとイナリと追いかけっこをしており、師匠とジーク、フォッカーさんとマシューがそれぞれ稽古をしているはず・・・だったんだけど・・・
「クロード様!私の愛のタオルで汗をお拭き致します」
「あ・あの・・・自分で拭けるから大丈夫でござるよ!」
「いけませんわ!愛の奴隷たる私にお任せ下さいませ!」
あ・愛の奴隷って・・・
リンは師匠に一目惚れをしてしまい、昨晩から師匠の傍で愛の押し売り中なのであります。
師匠、南無です!
「リ・リンさん、その愛のタオルを俺に下さい!
俺なら、貴女の愛をしっかりと受け止めて上げますよ」
「ダメです!これはクロード様への愛のタオルなのです」
「そ・そんなぁ~!」
リンの横で何とかリンの気持ちを振り向かせようと必死なのがマシュー。
マシューもリンに一目惚れしたようで、昨晩から猛アタック中です。
残念ながら、相手にされていない様ですが・・・
マシューよ、南無!
「こ・これはどう云う事ですかな鉄壁殿?」
「フィ・フィンさん落ち着いて!く・苦しいから」
フィンさんが、鬼の形相で俺の襟首を掴んで説明を求めて来る。
徐々に首が閉まる~、助けて~。
「あらあら、リン様もいよいよ恋ですか!」
「そうなんです。一目惚れみたいですよ!」
「へぇ~、確かに良い男ですわねぇ。これではノエルには勝ち目がないかしらねぇ」
「あら!ノエルさんってリンちゃんの事を?」
「本人は隠しているつもりでも私には丸わかりです」
「へぇ~、リンちゃんもやるわねぇ。私の義弟にも惚れられているみたいですし」
「あらあら、リン様モテモテですわねぇ!オホホホホホ~」
「本当にねぇ!オホホホホホ~」
何がオホホホホホ~ですか!
アイシャにノインさん、呑気に2人で恋バナをしてないで助けて下さい。
俺、本当に死んじゃうよ~。
「俺は誰も認めないぞ~、リンはお嫁に行かさん!」
これ以上、力をいれるなぁ~。
いい加減にしろよシスコン!
「ぐ・ぐるじぃ~~~、助けて~~~!」
一瞬、父さんの顔が見えました。
俺の魂は、口から飛び出しかけていたのであった・・・
次回『第156話:騒がしき人達