第15話:戦争の影
冒険者ギルドは、国の首都に本店があり、大きな町などに支店がある。
各々の村にも出張所と云う形でほとんどある。
冒険者ギルドとは、地域に住む人間達の出した依頼を冒険者達に斡旋する事を主な業務としている。
斡旋している依頼の内容は様々あり、危険が伴う魔物素材や魔石、薬草などの収集。
未成年でもできる商売のお手伝いや町や村の業務の長期・短期の雇用の紹介。
郵便配達や商隊の護衛、人探しなどもあり、傭兵募集など云う国からの依頼などもある。
冒険者ギルドは、地域と密着した、なくてはならい存在である・・・
リアース歴3231年。5の月 23日。
狩りをした翌日。
俺と父はルタの村の冒険者ギルドにやって来た。
ルタの村の冒険者ギルドは、近くにある大きなエターナの町にある冒険者ギルドの出張所となっている。
50坪くらいの木造平屋建てである。
建物の半分はクエストの受付や報酬の受け渡し場所でカウンターには2人の女性職員が座っている。
2人とも美人なお姉さんだ。
人があまりいないな~。
建物のもう半分は、魔物の倉庫兼解体場所となっている。
ガタイの良いおじさん達が2人います。
血の臭いがプンプンする。
(ウゲーっ!吐きそうだ)
まず、昨日狩った獲物をこの解体場所に持って来た。
ワイルドボア1匹に一角ウサギが5羽、ヘルコンドル1羽。
解体屋のおじさん2人と俺と父で魔物の素材や肉を解体していく。
俺は解体が初めてある。
父さんから借りたナイフを使い、恐る恐る解体して行く。
どひゃー!血が!血が!血が~!
(お前の血は何色だ? by 北斗の拳レイ)
て、おバカな事言っている場合じゃないよ~。
血は嫌いだよ~。
全部解体するのに2時間ちょい掛ったかな。
「ロディさん、これが今回の一覧表ね。
素材は全部ギルド行きで良いっすよね?
肉は今回も全部お持ち帰り?」
解体屋のおじさんが書類を父に渡し、持って帰る物を聞いて来る。
「あぁ、いつもの通りでお願いします」
肉は教会にも持って行く。
かなりの量になりそうだ。
教会の皆、喜んでくれそうだ。
「了解です。肉は袋に詰めて用意しておきますから、先に受付に行って報酬の手続きをして来て下さい」
「分かった。ルーク行くぞ!」
手慣れたやり取りだ。
書類を持って事務所の方へ向かう。
「これお願いします!」
父は受付のお姉さんに種類を出して話しかける。
「あらロディさん。今日はルークちゃんも一緒なのね。
換算するからちょっと待っていてね」
う~~、『ちゃん』づけですか。
子供じゃないやい・・・子供か。
カウンターの奥に消えて行くお姉さん。
入れ替わりに奥に居た男性がやって来た。
ギルド長代理のロットさんだ。
父の昔からの知り合いの人だ。
幼馴染らしい。
「ロディ、ちょっと良いか?」
バリカン狩りの様な感じで金髪、青い瞳で目つきが鋭い。
無精髭が目立ち、ちょっと曲者の様な雰囲気がある。
「どうしたロット?勿論、構わんぞ」
「お!ルークも来ていたのか。悪いがルークはちょっとだけここで待っていてくれ」
どうやら俺には聞かれたくないらしい。
「うん、分かった。掲示板の依頼書でも見ているよ」
「すまないな。すぐ終わるから」
ロットさんは父と建物の隅の方へ行って、コソコソ話を始めた。
俺は掲示板を見ているふりをして、聞き耳を立てる。
「昨日、お前が狩りを行っている間にお前を探しに来た者がいた」
うん、聞こえる聞こえる。
隠そうとしても無駄なのだよ。
「何っ!詳しく教えてくれ」
「最初はラティーナと云う銀髪の女性の名を探していた様だが、後から赤髪のロデリックの名も探し始めた。
冒険ギルドでは『ロディ』で再登録してあるし、皆もお前をロディって呼んでいるから、この辺の者はお前の名がロディだと思っているよ。
本名の『ロデリック』を知っているのは俺かシスター、アンちゃんとハンナ婆さんくらいだろうさ。
お前だと分かる事はないだろうさ。安心しな」
あぁ~、本当に何か不味い事を話し合っている。
何をした父よ?
ゲロってしまうんだ全て。
「そうか・・・すまなかったな!」
「これくらいは別に構わないさ。
だけどお前、本当にヤバイ事やって戻って来た訳じゃないんだろうな?」
そうだそうだ。
本当に大丈夫なの?
「当たり前だ!前にも説明しただろ!
騎士団でちょっともめて、止めて戻って来ただけだ。
もめた相手が貴族だからな。しつこい性格なんだろうさ」
声が大きくなっていますよ旦那!
ん?
今、騎士団って言った?
父さん、騎士だったのかよ・・・
「それなら良いんだがな・・・
あ!そう言えば、ナの国との国境が又きな臭くなって来たようだ」
ハ!それって戦争って事?
次から次へと何ですかこの展開!
「いよいよ来たか!」
「あぁ、冒険者ギルドの中で傭兵の募集が張り出された。
ロディ、エターナのギルド長のベルクーリさんからも直々にお前の参加を頼みたいと言って来たよ」
あ!本当だ。
この掲示板に「傭兵募集」が出ている。
報酬は一律でまず金貨1枚!
戦果次第で報酬増。大将首の報酬はさらに増。
ん~~~、これって安いんじゃね?
「クッ!しかし俺にはルークが・・・一人にして行けない」
「でも、ベルクーリさん直々のお願いだ。
昔、ベルクーリさんにはいろいろお世話になっただろ俺達・・・」
「あぁ・・・」
黙り込んでしまった父。
「まぁ、傭兵の事は、後で直にベルクーリさんに聞いてくれ。
尋ね人の件は安心してくれ」
「分かった!迷惑をかけてすまなかったな」
「気にするな!俺お前の仲だろ・・・」
ん~~、突っ込み所満載なお話でしたな。
「ロディさん、報酬です。あれ?どこですか?」
ここで報酬の換算をしていたお姉さんが戻って来た。
お姉さんがキョロキョロしている。
隅の方で話していた父が振り向く。
「ありがとう。今そっちに行く。ロット、又な!」
「あぁ、又なロディ!」
俺達は報酬を貰って、冒険者ギルドを後にした。
戦争か~、何か嫌な雲行きになって来たなぁ。
2人の足取りはちょっと重い・・・