第152話:貴族街
リアース歴3237年 12の月28日17時過ぎ。
首都ザーンの平民街にて・・・
「主様、ここも満室だそうです・・・」
「ここもか~」
「貴方どうする?」
俺達は2時間近く宿を探している。
天下一精霊武術大会の影響もあってか、何処の宿屋も満室なのだ。
失敗したなぁ・・・まさか何処も空いていないとは。
外はスッカリ暗くなっちゃっているし、お腹も減って来たしなぁ。
「よし決めた!ご老公様の所へ行こう」
「ご老公様の所?」
「あぁ、そうだよ!バーンが疲れていそうだし、早く休ませてやりたい。
どうせ、家の件で後日伺うつもりだったからさ」
「急にお邪魔したら失礼じゃないかしら?」
「天下一精霊武術大会や受勲式に出席しなきゃならなくなったのはご老公様のせいなんだから、これくらい面倒掛けても良いんじゃない?」
受勲しろとか大会に出ろとか、ご老公様が全部勝手に言って来た事だ。
これくらいの迷惑なんて屁ぇみたいなもんさ。
「本当に良いのかしら・・・」
「構わないって!さぁ、貴族街に向かおうぜ」
俺達一行は貴族街へと向かう。
第2の石垣の門で、門番から身分の証明と貴族街に行く理由を聞かれるが、以前にご老公から貰ったエターナ家の紋章が入った銀のメダルを見せたらあら不思議。
門番の態度が急にコロっと変わって、ご老公の家までの道のりを丁寧に教えてくれました。
このメダルの効果って凄いなぁ。
まさに水戸黄門の印籠並じゃないか。
門番に言われた通りの道を行く俺達。
市民街は住宅や店などが隙間なしに建っていたけど、貴族街は各貴族達の敷地が塀で囲まれているおり、大きな屋敷に広い庭があり、敷地内にはまだまだ余裕がある。
第2の石垣の中と外では完全に別世界となっているのだ。
磨きかけられた綺麗な石がビッシリ敷き詰められた道は、段差が少なくとても歩き易いなぁ。
豪華な屋敷や敷地を数々眺めながらひたすら歩いて30分。
そろそろ19時くらいになる頃であろうか。
「西の一際大きなお屋敷を目印にすれば、その隣りがエターナ子爵家だからすぐ分かると言っていたけど・・・あぁ、あれがそうだな!」
目印になる大きな家とはルーラ伯爵家の事である。
エターナ子爵家は西の氷虎ルーラ伯爵家の派閥に組しており、貴族街の家々もだいだいは派閥同士で集まっている。
ご老公様の家はエターナ子爵敷地内の別宅になるそうなので、取りあえずエターナ子爵家を目指せば良いと教えられていた。
「大きな屋敷を通り過ぎたそのお隣と言っていたからもうすぐね。
バーン、疲れているでしょうけど、もう少しだから我慢してね!」
「うん、大丈夫だよ母様!」
バーンは文句も言わずに本当に良い子だよ。
アイシャの乳神様を取り合いさえしなければ更に良い子なんだけど・・・
ルーラ伯爵の馬鹿広い敷地前を通り越して、ようやくエターナ子爵の敷地前に入った。
「ここも随分広いな!」
「そ・そうね!」
「ぬ・主様!私までご厄介になって本当によろしいのでしょうか?」
「構わんさ!リンは従者で大事な家族だ。
もしダメだなんて言ったらエターナ家との縁を切ってやるまでさ」
「主様・・・」
「貴方、カッコいいわよ♡」
「お・おう、当然さ!」
2人の美女から熱い眼差しで見られると照れちゃうぜ。
フフフフフっ、さては俺に惚れたなリンよ!
済まないが、君の気持には答えられないんだ。
許しておくれ。
「俺に惚れるなよリン!」
「それは絶対にないのでご安心下さい、主様!」
「へっ!?」
「何、間抜けな声出しているのよ貴方!さぁ、行くわよ」
「へ~い!」
何だよ、俺の一人相撲っすか・・・
俺ってカッコ悪い~!
それにしても、即答ってそれはあんまりじゃないですかリンよ。
主様いじけちゃうんだからねぇ。
エターナ子爵家の塀門に着いた。
そこには屈強な身体をした1人の男が立っている。
ここにも門番がいるのか!
まぁ、当たり前と言えば当たり前・・・なのかな?
「エターナ子爵家に何か用か?」
「ハ・ハイ!」
本日3度目の門番チェックです。
ハァ~、面倒くせぇ。
俺は先ほどに引き続き銀のメダルを見せる。
「こ・この家紋はエターナ家の紋章。貴様何者だ?これをどこで拾った?」
へっ!拾った?何でそうなるのかな?
「別に拾った訳ではないですよ。
俺の名はルーク!こう言えばお分かりになりますかね?」
「ル・ルーク・・・ハっ!まさか彼方は?」
フハハハハっ、そのまさかですよ。
俺はエターナの小さな・・・
「兄さん?」
「そう、俺はそのまさかの『エターナの小さな兄さん』です!って、ハァ?」
ど・ どうしてそうなるんですか?
俺が門番さんのお兄さんな訳ないでしょうが・・・ってあれ?
今、何処か違う所から声がしなかった?
あれ~?・・・・
次回『第153話:懐かし人達1』をお楽しみに~^^ノ