第151話:水の都
お待たせいたしました!連載を再開いたしま~す^^
これからは2~3日に1話更新とさせて頂きますm(_ _)m
リの国は建国から300年以上経つ、古くからある国だ。
最初は北国の小さな国であったが、隣国の国々を次々と併呑して次第に大国へとのし上がり、100年前くらいから現在の大きさの領土となった。
80年前に領土のほぼ中心となる今の場所に遷都が行われ、以後、人口は増え続ける一方である。
リの国の首都ザーンは『水の都』と呼ばれている。
南にそびえるザラ山脈とウララ大山脈から流れて来る豊富な水を活かして、首都の中に水路を張り巡らし、何処に行くでも綺麗に整えられている水路が目に入る事から、何時しかそう呼ばれる様になったのだ。
地方や他所の国から訪れた者は、街の清潔さ、治安の良さ、住人の活気などに誰もが驚く。
ルーク達は間もなくこの水の都へたどり着く・・・
リアース歴3237年12の月28日。
首都ザーンから北へ10kmほどの街道沿いにて・・・
「父様、母様、大きな畑がいっぱいだねぇ」
「そうだな!畑ばかりだな」
「圧倒されちゃうわねぇ」
馬型鉄人君の上でキョロキョロと周りを見渡すバーン。
この辺は見渡す限り畑である。
他には水車や納屋、住居らしい家なんかもチラホラ見える。
遠くにお城らしき建物が小さく見えるが、この辺まで人が住んでいるとなると、人口はかなり多そうだと予想される。
畑にはまだ雪が降った形跡が見えず、収穫時期が過ぎて掘り起こされた土の塊がそのまま無造作に放って置かれている。
「しかし、今年は冬の到来が遅い様だな」
「そうね!何時もならとっくに初雪を拝んでいても良い頃だものね」
「父様母様、雪が積もったら皆で雪合戦しようね!」
「ハハハハっ、そうだな!」
「そうね!」
馬型鉄人君の背中の上にはアイシャとバーンが乗っており、鉄人君の頭には丸くなって寝ているイナリがいる。
リンは鉄人君の轡を取って先頭を歩き、俺は鉄人君の右側を歩く。
城が見えるまでは鉄人君を2頭出しであったが、人の往来が多くなって来たため、竜の記憶があるミスリル製の1号君だけを残し、2号は土に戻って貰った。
ゴーレム馬が2頭だとどうしても目立ってしまうからね。
英雄や聖女と分かってしまうと面倒だから嫌なんだよ。
「これだけ大きな畑がいっぱいあったら、食べる物に困らなさそうだな」
「ここにも焼き芋いっぱいあるかなぁ?僕、シーラで食べた焼き芋大好き!」
「キュキュキュ~!」
(僕も焼き芋大好き~!)
「フフフフフっ、あると良いわね!リンちゃんもそう思うでしょ?
シーラであれだけいっぱい食べていたんだし」
「な・何を言うのですか奥様!」
「言葉の通りじゃないのか?」
「もう、酷いですよ。主様も奥様も~!」
「「「『アハハハハっ!』」」」
「キュキュキュ~!」
皆から笑い声が上がる。
俺達家族の旅には笑いが絶えない。
例え辛い事があっても、皆で乗り越えるだけの絆が俺達にはあるのだ。
10の月1日に海洋都市シーラを出てから、ほぼ丸3カ月掛かってここまでやって来た。
道中、強そうな魔物や盗賊を数回ほど見かけたが、イナリや鉄人君、リンのお陰で向こうが気付く前に素早く距離を取り、接触しない様に迂回して歩みを進めて来た。
アイシャとお腹の子に負担が掛らない様に、戦闘などは極力避けて、休みを多く取りながらゆっくりと旅をして来たのだ。
ある程度覚悟はしていたが、本当に年内ギリギリの到着となってしまった。
まぁ、今日中に首都の門を潜る事が出来るであろう。
もうすぐ旅が終わるんだなぁ、とちょっとセンチな気分になる俺であった・・・
首都に近付く度にザーン城はドンドンと大きく見えて来る。
先ほど休憩していた時に小耳に挟んだ情報だと、首都の中心には高くて大きいザーン城が威風堂々と建っており、その城を護る高さ3mほどの第1の石垣、貴族街、貴族街を護る高さ2mほどの第2に石垣、平民街、首都を護る高さ4mほどの第3の石垣と続き、波紋状の様に輪が何重にも広がった様な作りとなっているそうだ。
俺達が今いる第3の石垣の外にも平民街が広がっているので、他の都市や町とは桁違いに人口が多いんだなぁと驚かされています。
第3の石垣には正門と云う物が存在せず、東西南北にそれぞれ門がある。
東の聖龍門、西の氷虎門、南の朱雀門、北の玄武門、リの国を護る4伯爵にちなんだ名がそれぞれの門の名となっているのだ。
俺達は今、北の玄武門に並んでおり、本当の意味で首都の中に入ろうとしています。
「ハイ、次の人どうぞ!」
「俺達の番だな!」
俺が先頭になり、門番に俺の冒険者カードを見せる。
「へぇ~、Cランクの冒険者か!若そうなのに凄いなぁ君」
「恐縮です!」
俺は竜を倒した功績からCランクに上がっていた。
「後ろにいるのはご家族かな?」
「ハイ、その通りです!妻と子と従者です」
「ハハハハっ、親子お揃いの冒険服か!僕、似合っているぞ~」
「有難う、おじさん!」
バーンは嬉しそうに答える。
バーンの着る防具は、素材は違うのだが俺達夫婦とお揃いのデザインの物を海洋都市シーラで特別に作って貰った物だ。
「親子お揃いの物が着たいの!」と、珍しくアイシャからおねだりされて作ったんだよ。
バーンの耳はアイシャが手作りした毛糸の帽子のお陰で隠れているので、パッと見では普通の人族の子に見える。
俺達は普通に仲の良い親子だと見える訳だ。
「よし、通っていいぞ!」
俺達はすんなりと首都に入る事が出来た。
これは後日知る事なのだが、この時、俺達の事を遠くで見ている者がいた。
バニング家の者である。
バニング家の者は各門に派遣されていて、俺達が到着するのを隠れながら待っていたのだ。
今回、幸いな事に俺達はバニング家の者にはバレなかった。
世間では銀髪の夫婦で名が通っている俺達であったが、俺もアイシャも黒髪に染めたままであったし、しかも子連れだったからだ。
もし、この場にマルタさんが居たならば、俺達の事はバレていただろう。
俺達の顔を知っているからね。
こうして、俺達は運良くバニング家に見つかる事なく、首都へ入る事が出来たのでった・・・
次回『第152話:貴族街』をお楽しみに~^^ノ